やっぱり?2008/05/09

昨日までに手がけてきた楽器の調律と最終チェックを終え、Cooperfisaへ来てから始めた最初のアコーディオンのレストアが終了しました。蛇腹修復から始まり、合わせ目シール交換、右側のバルブ交換、鍵盤の組み付けと調整、グリルのネット交換、左側のバルブ交換、ボタンの組み付けと調整、ストラップ交換、ボディー研磨、サブタ交換、リード交換、リードブロックの調整、左右スイッチの調整、調律..修復に必要な技術の殆どを一通り教えてもらいながら実践しました。

そして昨日、自分が注文した楽器のできたてのケースを見せてもらいましたが、今日の実習は、この楽器へのボタン(ボタンの付いていないバルブとレバーの部分)の組み付けです。という事で..やっぱり自分で作る訳ね..その分、値引きして..とか考えながらも、自分で作るのもいいかも?イタリアで自分で作った楽器で自分で演奏する..素晴らしい!という事で、非常に気合を入れて作業にかかりました。取り付けと言っても、ただ付けていくだけで済まないのが難しいところ。きちんと空気漏れしないように調整しながら付けていくのでとても根気のいる作業です。何しろ、ボタン87個分、チャンバー付ですからバルブは46×2個で構造も複雑で調整箇所も多いです。結局、今日一日かかっても全てのレバーを収める事はできませんでした。最初の楽器修復の経験も含めて思うのは、最終的には調整が命という事です。どんなに高級な材料や部品でも、組むだけでは駄目で、時間と労力の半分以上は調整に費やすのだという事。調整で楽器としての価値が生まれるという事です。言い換えるなら、どんな高価な楽器でも調整不良なら楽器としての価値が落ちるという事です。所有する事、鑑賞する事、歴史的な価値とかであれば別ですが。

古い楽器の再生は、元々ある部分を利用しつつ修復するので一旦分解する必要がありますが、元の部品を再利用するところは、そのまま組んでいけます。新品は、ただ部品を組むだけと考えたら大間違いで、新品と言えども部品は調整済みでは無いし、色々な楽器に対応するようにしてある為、ボディーやその他の部品に合わせて加工や修正が必要なので意外と大変です。中古の修復でも部品を改めた時は、やはり同様の手間がかかります。

エリーザの誕生日2008/05/09

自分の楽器を黙々と作成していると、自分の作業台の向かいの作業台で女性が集まって何かし始めました。気にせずに作業に集中していましたが、甘い匂いがするのでもう一度前を見ると、リラがシャンパンボトルの様な物を持っています。不思議そうな顔をしている私に、エリーザの誕生日と教えてくれました。エリーザに聞き返したら、本当は昨日との事。という訳で、職場内でのちょっとしたお祝いが突然始まりました。前に置いてある修理中のアコで見えませんでしたが、その向こうにはケーキが二種類ありました。一つはエリーザの祖母が作った物で、もう一つは誰かが買ってきてものです。リラが持っていたのは、シャンパンではなくスパークリングワインでした。他の人も集まってきてワインの栓を抜いて、ケーキとワインを頂きました。仕事中に仕事場でこんな風にお祝いするなんて、イタリアだからなのか、会社が小さいからなのか分かりませんが、いいと思いました。もちろん社長も一緒になって飲んでいます。と言っても、正味15分程度で終わります。何かと祝いや節目で仕事の後に飲みに行く日本のスタイルより、余程いいと思いました。余計な時間を使わないし、余計なお金も使わないし、余計な気も遣いません。短時間の職場での祝いには、形式的では無い為か心が感じられます。

写真は、まさにワインの栓を抜くところですが、あまりに急に始まったので、とっさに携帯で撮ったものです。なので、正面に修理の楽器が入っていたり、作業台ごしのアングルになっています。主役のエリーザは左側に半分写っている人です。女性に年齢を聞くのは失礼かと思いましたが、見た目20代前半で若いから大丈夫かなと、思って聞いたら27歳との事でした。予想に反して微妙な年齢でちょっと失敗だったかも..