フルレストア2010/05/01

以前に、とても古い楽器の修理見積もりが来て、バルブは酷い虫食い、
リードは錆が出ているという状況の記事を書きました。
楽器に貼ってある表示が入手年月日だとすれば、昭和42年、
私が生まれた年と同じ楽器です。

その時の記事はこちらです。
http://accordion.asablo.jp/blog/2010/01/29/4880548


この楽器、楽器店経由で回ってきた物ですが、修理費が高額なので、
修理はしないと思っていましたが、暫くして修理をするというお返事を頂きました。
恐らく、大変に思い入れのある楽器なのだろうと思います。
修理期間が沢山必要でしたので、他の修理の合間を見て少しづつ
修理して行きました。
今回は、その経過を簡単に書いてみます。


これが、楽器の側面に貼ってある日付です。
写真では分かりにくいですが、「S.42.5.」という風に打ってあります。
これ、「ダイモ」という名前の樹脂テープに任意の文字を表示できる物ですが、
パソコンやテプラの登場ですっかり見なくなりました。
サラリーマン時代に、会社の古い装置に貼ってあるのを良く見ました。
ちょっと気になってネットで検索したら、まだあるみたいで驚きました。

http://dymo.jp/


これが虫食いの、鍵盤のバルブです。
バルブの周囲には、虫の抜け殻?と、虫の糞(多分)が散乱しています。


鍵盤を取り外し、バルブ部分を撮影した物です。
フェルト部分は殆ど食い尽くされ、文字通り、皮一枚で繋がっているという感じです。
これは、衣類などに穴を空ける「カツオブシムシ」という昆虫の幼虫の仕業です。
ここに詳しく書いてあります。
http://www.ylw.mmtr.or.jp/~noryuasa/katuo.html

衣類に付く虫ですが、楽器に防虫剤などを使用するのは止めた方が良いでしょう。
どのような影響が出るか未知の部分がありますので。


バルブのフェルトと皮を交換しました。バルブ本体はオリジナルです。
簡単に交換してしまったみたいですが、ここまで来るにはとても地道な作業が
あります。バルブからフェルト、皮、接着剤、ロウを綺麗に除去し、準備したフェルトと
皮を貼り付け、鍵盤を元通りに組み付け、鍵盤の高さを揃え、最後にロウで固定
します。これで、鍵盤操作時のパタパタ音も小さくなります。


右が終われば、左です。
ベース部分のフタを取ったところですが、バルブから剥がれてしまった皮が
ベースメカニックの上に落ちています。色々な場所に皮が散らばっていて、
やはり、虫の抜け殻と糞が散乱していました。


ベースメカニックを全て取り外し、一番底にあるバルブを取り出しました。
こちらは鍵盤側よりもっと酷く、フェルトは殆ど残っていませんでした。
写真は、自分でフェルトと皮を取ったのではありません。
バルブを外したら既にこういう状態でした。バルブ面には、接着剤だけが残って
います。まあ、フェルトや皮を剥がす手間は省けたか..


という訳で、ベースのバルブも交換終了。
こちらも簡単に終わらせた訳ではありません。
バルブのフェルトと皮を交換した後に、バルブを組み付け、その後は、
ベースボタンをひとつ、ひとつ、調整しながら組み上げるという根気のいる作業です。
左手のバンドがかなり傷んでいたので、新品に交換しました。
写真では、ベースのフタの丸い穴の所にある白いネットに穴が空いています。
もちろんこれも修理しました。
これで全てのバルブが修理できましたので、楽器がリードに空気を送れる様に
なりました。後はリードです。


リードを全て取り出しました。
古いサブタ皮なので反っているところも多数あります。
今回はリードに錆があるので、木枠からリードを外します。


これがリードを外したところです。
ちょっと分かりにくいですが、リードが錆びているのが分かるでしょうか?


リードを一つずつ、磨いて錆を落とします。
作業をすると、赤茶色の粉が机に落ちます。


錆を落として、元通り木枠にロウで取り付けました。
新品の様にとても綺麗ですね。
この後、サブタ皮を取り付けます。


リードも、右が終われば左です。
今度はベースリードの修復。
木枠からリードを取りました。

ベースリードの方も錆が盛大です..


ベースリードも綺麗にした後、元通りにしました。
かなり簡単に短く書いていますが、ここまでのリード修復作業は
とても時間がかかっています。
この作業、イタリアで教えてもらって以来、初めてやりました。
作業中にもイタリアでの事を沢山、思い出しました。
その時も大変でしたが、こうして実際に必要になる事があると、
イタリアで苦労した甲斐があります。
http://accordion.asablo.jp/blog/2008/05/26/3576507
http://accordion.asablo.jp/blog/2008/06/09/3628530
http://accordion.asablo.jp/blog/2008/06/16/3668387


これで、バルブもリードも修復できたので、後は調律だけです。

調律も終わり、一通りの修復作業が終わりました。
43年前の楽器もこれで新品の様に生まれ変わり、また長く使って行けます。
残念ながら楽器店経由の物で、依頼主様とはお話ができませんが、
きちんと作業させて頂きましたので、きっと喜ばれているのではないかと思います。

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