超、古楽器。2012/01/13

アコーディオンの修理のご依頼を頂きました。
遠方の方ですので、楽器を送って頂き、点検、お見積もりを行う事になりましたが、
ダンボールを開けて楽器を見てビックリ!

HOHNERのアコーディオンですが、かなりのビンテージ物という事はすぐに分かります。
41鍵盤、120ベースのフルサイズですが、現代の楽器と比べ、鍵盤が長く、
黒鍵は大変細い作りです。
グリルのメッキは大変良い状態を保っています。
音は出ますが、サブタ皮が酷く反っている様で、特有のノイズが激しく出ています。
また、かなりの空気漏れがあり蛇腹はスカスカに動いてしまいます。

黒いセルロイド貼りボディーですが、ペイントとラインストーンによる装飾が入っています。
蛇腹は裏側に補修した跡がありますが、まだ使えそうな状態です。
ベースボタンは変色がありますが、欠損はありません。

グリルカバーを開けると..
鍵盤根元が埃でツートンカラーになっています。
バルブの皮とフェルトは要交換ですね。
バルブの前に何か文字が書いてあります。
人の名前が複数書いてある様です。

年代らしき数字も書いてあります。
アルファベットで何か書いてあり、それに続いて1945と読めます。
これがこの楽器が納品された時の年代だとすると、67年前という事になります。
1945年と言えば、原爆が日本に投下された年であり、終戦の年です。
HOHNERのあるドイツでも日本と同様、敗戦した年という事で、この楽器が作られたのは
大変な状況下だったのかも知れません。
ただ、楽器が製造されたのはもう少し以前だったのかも知れません。
年号の手前の単語の意味が分かるといいのですが..
いずれにしても大変古い楽器という事ですね。

鍵盤の高さはバラバラになっています。
バルブのフェルトや皮が縮んだ為でしょう。
同様の理由で深さも深くなっています。

本体を分割しました。
蛇腹のパッキンは天然皮革の物で、ボロボロです。
空気漏れの原因のひとつですね。

なんとリードはMMMLの4セット。
当時は大変高価な物だったと思います。

やはりサブタ皮(リードバルブ)は殆ど全てが酷く反っています。
年代から考えて全数交換が必要です。
リードの木枠に印が押してあります。
HOHNERの下請けなのか、リード部分だけを作っているのか、HOHNERではない
会社名が書かれています。
ドイツ製である事は間違いなさそうです。
驚いた事に、リードの状態は大変良いです。
錆びは部分的にありますが、年代から考えると奇跡的な状態です。
固定しているロウも信じられない程、良い状態を保っています。
30年程度でも、ロウにひび割れが出る楽器もありますので、本当に奇跡です。

ベースリードも激しくサブタが反っています。
反ったまま蛇腹に挟まれているものまであります。
ベースリードも5セットと、フル装備の楽器ですね。

ベースボタンは古いバンドネオンのボタンの様に変色が激しいです。
もしかして象牙?と思いましたが、鍵盤もベースボタンも樹脂製でした。

ベースメカニックを点検しました。
こちらも蓋を開けてビックリ、大変汚れが少なく、動作も問題ありません。
構造は現代の楽器と何も変わらず、既に完成されたシステムという事ですね。
この楽器で使われている金属は殆どが真鍮ですが、ベースボタンはアルミニウムが
使われています。当時は高価だったのかも知れません。
メカニックは健全ですが、最下部のバルブの皮は要交換です。

という事で、年代から考えると大変良い状態の楽器と分かりました。
それでも、かなりの部分を改修する必要があり、時間と費用は相当なものになってしまいます。
依頼主様に結果をお伝えすると、修理をさせて頂ける事になりました。
戦後から現在までの時間と、ドイツから日本への距離を渡って来たこの楽器を
きちんと復活させ、その音を私も聴いてみたいです。
このような機会に巡り合えた事に感謝です。
あ、でもまだ作業はこれからですね..
頑張ります!

コメント

_ カブトガニ ― 2012/03/24 15:13

写真と同じモデルでは有りませんが同時代のホーナー41K 120Bassを名古屋中央放送局管弦楽団のアコーディオニスト「岩田益蔵さん」が局備品として[エキセルシャー」が来るまでお使いでした、確かピッチは440Hzだった様です。
(ヨーロッパは今も440Hz)
私も始めはホーナー「タンゴ」41K 120Bassを使っていましたが、プロになってピッチが違うので442Hzのビクトリアを購入しました。

_ Cookie(店主) ― 2012/03/24 23:56

カブトガニ様、こんにちは。
コメントの書き込み、ありがとうございます。

この古い楽器のピッチはまだ調べていませんが、恐らく440Hzと思います。
この楽器は製造後、日本に輸入された物ではなくて、恐らくヨーロッパで使われていた物で、後に中古として日本に持ち込まれた物と思います。
ですので、ピッチはヨーロッパ仕様の440Hzと思われます。

基準ピッチの問題は厄介ですね。
日本ではピアノのピッチが442Hzとなっているので、私がイタリアから輸入する場合は全て442Hz仕様で作ってもらっています。
恐らく、他の業者もそうしていると思います。

最近はインターネットの普及で個人が海外オークションでアコーディオンを手に入れたり、ヨーロッパへ行った時に買って来るケースもあると思いますが、調律が440Hzになっていて、日本では442Hzであるという事を知っている人は少ないと思います。
ソロで演奏している時は問題ありませんが、ピアノや他のアコーディオンと合わせる場合は問題になります。
日本向けに輸入されたアコーディオンも意外と基準ピッチは適当になっている事もあります。
最近、調律を行った知人のCavagnoloは441Hzでしたし、知人の所有する古いEXCELSIOR940は444Hzでした。

現在も国際基準は440Hzですし、電子ピアノやキーボードは新品の設定は440Hzになっています。
ピアノやオーケストラは442Hzで、ギターなどやる方はチューナーで440Hzにしている人が多いと思います。
このような混在した状況は、簡単にピッチを変えられないアコーディオンにとっては厄介な問題と思います。

440Hzから442Hzへ変える調律は大変な作業となるので、中古楽器などは元のピッチのまま調律されている事もありますし、海外からのオークション購入だとまず、440Hzですので、後に調律代が必要になる事は覚悟しておく必要がありますね。

_ IKAI Yosikazu ― 2012/04/09 08:03

不明の書き込みはドイツ語のriparieren 修復する、の過去分詞ではないかと思います。つまり修復された年号が1945年ということでしょう。とすれば、製造はそれをさかのぼることになります。

_ Cookie(店主) ― 2012/04/10 00:28

IKAI Yosikazu様、こんにちは。
コメントありがとうございます。
素晴らしい推理です!
確かにそう言われて改めて見るとRepariert と読めます。
私は、Repr..のepがyに見えていたので解明できませんでした。
実は、修理しながらこの楽器は製造後に一旦、大規模な修復を受けているのではないか..と思っているところでした。
これで1945年に修復されたのは確実となりました。

画像検索してみると、ほぼ同じデザインのアコーディオンが1930年と書いてあります。
http://acordeon-anipas.blogspot.jp/2009/10/akkordeon-hohner-standard-modell-1055.html

という事で、この楽器は80年ほど前の物の可能性があります。
これで、楽器の中に押されている印の意味もわかりました。
リペアを行った会社のものでしょう。

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