50’EX 揃う2012/05/29

古いEXCELSIORの調律を承りました。
ご依頼頂いた方は私と同じ市内に住む方です。

楽器を見て驚きの、突き抜け「E」のロゴです。
これは現在、修復中のEXCELSIORと同じ年代を示します。
http://accordion.asablo.jp/blog/2012/03/31/6474806


調律のご依頼ですが、空気漏れがかなり酷いので点検すると、
鍵盤のバルブのフェルトに虫食いがあり、そこからかなりの
漏れがある事が分かりました。
無視できない程の(虫食い故..)症状なので修理する事にしました。


鍵盤を外してバルブを見ると、この通り。


皮の部分を剥がすと、フェルト部分がかなり無くなっているのが分かります。
良質の羊毛でできている古い楽器のフェルトは、さぞ美味しかったのでしょう。


新しいフェルトと皮に張替えました。
この色だとティラミスみたいで美味しそう。


他にも虫食いがあり、空気漏れも改善されましたがまだ残っています。
年代から考えてもバルブは総替え時期ですが、高齢で
もうそんなに頑張って弾かないので..という事で1箇所のみとしました。
何が凄いというと、ワンオーナーの楽器という事ですね。


リードを確認する為に中を開けると、年代なりに、やはりサブタ皮が反っています。
これは中を見るまでもなく、鳴らすと特有のノイズが激しく出ていましたので
想定内の状況です。
さすがに、これは再使用もできない状態ですし、このままでは
ノイズもありますし、調律が安定しないので総交換する事になりました。


リードを留めているロウの部分に白い綿の様な物が付着しています。
カビでしょうか?
あまり使わないでいるアコーディオンはカビが内部に着く事がありますが、
通常は蛇腹の内側に付きます。


リードに錆びが出ている箇所もありました。
幸い、錆びがあるのは全体の2割以内でした。


ベースリードの周囲にはかなりの埃が堆積しています。
元々付いているシリカゲルは無意味ですので撤去しました。


ベースリードのサブタ皮も激しく反りが出ています。


ベースリードの一部にも錆が出ていました。


古い年代のアコーディオンは、ベースボタンの印がCにしか
付いていない事がよくあります。
この楽器もそうですが、Eの表面に自前で何か付けて分かる様になっています。
見た目もありますし、触った感じも分かりにくいので、EとA♭に印加工をしました。


ベース側の底板の開口部のネットが破れています。
このままだと、大きな埃が入ったり、虫が入ったりしますので、
新しく張替えしました。


ベースの底板を外すと、この楽器はブルーのアルマイト仕上げで
EXCELSIORのロゴが入っていました。
この見えない部分のオシャレが好きです。
ボタンの方のアルミ部分は通常のアルミ色でした。
全部ブルーアルマイトだったらかなりカッコイイ。
911はオールゴールドアルマイトでした。


開口部のネットが破れていると虫が入ると書きましたが..
本当に居ました。
小さな蜘蛛です。
死骸か抜け殻か分かりませんが、生きてはいません。


空気ボタンの根元にも蜘蛛の巣が。



ベースボタンのDim列の1箇所が傾いています。
このままでは入ると戻らなくなる場合があるので修理しました。
ここはダメージを受けやすいので楽器の取り扱いに注意です。


無事に調律まで終えて、外観を整えました。
1950年代EXCELSIORが2台揃う、貴重な瞬間です。