鍵盤ペタペタ現象2013/02/02

古いEXCELSIORの修理を承りました。

ロゴの文字体から見て40年以上は経っていると思われます。
グリルの網ですが、白い不織布が使われています。
これは当然、オリジナルではありませんが、この布が張られた楽器を時々見かけます。
業者はこのような物を使いませんので、個人で中古を再生して
販売している人がいるのでしょう。

今回の不具合は、特定の音が鳴らないという物ですが、その原因は、
鍵盤の操作により開閉するバルブの「当たり面」に使われている皮が
通気の穴に張り付いてバルブ本体と離れてしまい、鍵盤操作をしても
空気が通れない為でした。

写真の左から二つはバルブからフェルトと皮が離れてしまい、
通気孔を塞いでいる状態です。
一番右の状態が正常なものです。
木製のバルブ本体と共にフェルトとその下に貼られた皮が持ち上がり、
通気孔が開いて空気が通り、リードが発音するという事です。


他にも不具合がありました。
黒鍵が必要以上に沈んでしまい指が白鍵に触れてしまう不具合です。
写真の左が不具合を起こしている状態で、右が正常です。
これは鍵盤の下に原因がありそうですが、鍵盤を外さないと分かりません。


鍵盤を全て外しました。
不具合のある部分が4箇所ありました。
フェルトごと取れている箇所と皮だけが張り付いている箇所があります。


黒鍵の沈み過ぎの原因も分かりました。
赤い丸く切ったフェルトが剥がれて所定の位置にありません。
本来、鍵盤の下にフェルトがあるので必要以上に沈みません。
これが無くなると沈みが多くなるだけではなく、固い部分同士が当たるので
カツ、カツ、と、鍵盤操作のノイズが出る様になります。


バルブの剥がれは4箇所ですが、全ての皮に問題がありますので
バルブを外して新しく張り替えます。
本来、ロウで取り付けてあるバルブですが、この楽器は上から
接着剤で補強してあります。
応急処置的な補修で、正しい修理ではありません。
補修したという事は何か不具合が出ていたのでしょう。


全てのフェルトと皮を外しました。
この後、新品の物に交換します。
文章で書くと簡単ですが、空気漏れを起こさない様に全て交換する作業は
大変な労力が必要です。

今回の様な不具合は時々あります。
その前兆として、鍵盤が張り付く様な感じが出ます。
暫く操作していない鍵盤を押すと最初に重く感じ、更に強く押すと
剥がれた感じがして鍵盤が押されます。
一旦、剥がれると二回目からは普通に操作できますが、暫く放置すると
最初の一回は鍵盤が重くなります。
私はこれを鍵盤ペタペタ現象と勝手に呼んでいますが、この症状がある楽器は
弾きにくいだけではなく、いずれ大きな不具合を起こし、
修理費用が多くかかる事を暗示しています。
この様な状態の楽器を購入する場合は後の修理を覚悟する必要があります。
また、既にこの現象が起きている場合は早めに直す事をお勧めします。
バルブから皮が剥がれると音が出なくなりますので。

サンヨー鰯2013/02/05

久々に新しい物を発見。
SUNYOブランドの物です。



缶の裏面です。
オイルは大豆油、食塩以外に調味料と、この製品の特徴でもある、
月桂樹の葉が入っています。



中身はご覧の通り、小振りの鰯が綺麗に並べられています。
美しい黄金色!
これって、やっぱり手で詰めているのでしょうか?
不揃いの形状、大きさの物をこんなに綺麗に機械で詰められると思えません。
数百円の缶詰に手詰めというのは贅沢かも?



いつもの様に軽くソテーして頂きました。
月桂樹の葉の香りが利いていて、爽やかな印象でした。


木目楽器2013/02/12

イタリアから荷物が届きました。

プチプチ&ガムテープでグルグル巻きのダンボールです。



中身はなんとも美しい木目のアコーディオン。
イタリアの老舗メーカー、Giutozzi の物です。
想像以上の出来栄えに感動しました。
安物の「表面だけ木目」や、プリント木目ではなくて、無垢の素材を使った「本物」です。
それでいて他社の同様製品より大幅にお値打ちです。
仕様は、41鍵盤、HMML、MLチャンバー、120ベースの標準的な
フル装備アコーディオンです。
リードはハンドメイド。
これで有名メーカーの黒い標準モデルと同等かそれ以下の価格です。
音は見た目のイメージにマッチした物でした。

Giustozzi は、良い楽器をお値打ちに作成してくれるメーカーです。
小さな会社ですので、数多く楽器を作る事はできませんし、納期も遅いです。
当店は、Giustozziの正規代理店です。
メーカーHPにある製品はいつでも発注可能です。
通常のアコーディオン以外にダイアトニックアコーディオンの種類も豊富で、
Giustozzi社の得意分野です。
http://www.giustozzi.it/ws/index.php

ご興味ある方は当店までお問合せください。


蛇腹交換2013/02/16


いきなりのモノクロ写真ですが..
これは何をしているかと言うと..



蛇腹の交換です。
古い楽器で蛇腹パッキンやバルブ材の交換など行っても
空気漏れが残る場合、最後は蛇腹を新品に交換します。
蛇腹の主要な部分は紙と皮でできています。
演奏で酷使する部分ですが、案外丈夫で長持ちです。
古くなった場合は修理しても全体が劣化していて改善しないので新調します。
それなりに高価な物ですが効果もバツグン。(笑うところです..)
木枠は楽器に固有の物ですので、取り外して付け替えます。
なので結構大変な作業になります。



これは蛇腹の木枠にある結合の為のピンが通る穴です。
何度も抜き差ししているというのもありますが、やり方が悪いからでしょう、
丸い穴がヒョウタン型になってしまっています。
こうなると、ここから空気漏れを起こします。

ネット上で時々、アコーディオンを自分で開けてみた..というものを見かけますが、
できればやらない方が良いです。
演奏本番直前のトラブルでどうしても、という時は別ですが、
慣れない人が適当な工具で行うとこのような結果を招きます。
リードの木枠を外したりなども、できればやらない方が良いです。
元通りに戻したつもりでも、微妙な変化が出て調律が変わります。
音が全て出ているから良かったと思うのは早合点。
調律を確かめてみてください。
ズレが出ているかも知れません。

ネット上でアコーディオンの修理方法など紹介する方にも責任があると思います。
安易に真似しない様に注意書きが必要でしょう。
簡単に修理できる、などと書くのはもってのほかで、
簡単に修理できると書く人は、きっと色々な注意をしていないから
簡単だと思い込んでいるのではないでしょうか?
簡単かどうかは別として、楽器の開閉だけでも色々な注意事項がありますので
安易に大切な楽器を弄らない様にしましょう。


古い楽器のお決まりコース2013/02/18

製造後25年程度のアコーディオンの修理を承りました。


トンボ楽器の24ベースです。
外観はとても綺麗です。
大切に使われてきたのでしょう。



外観は綺麗ですが中身は経年なりの状態でした。
リードについているバルブ(サブタ皮)の殆どが反っています。
こうなると蛇腹の開閉に伴う異音、弱く弾いた時の雑音、調律の狂いが出ます。



さぶた皮は全て取り外して交換します。
表から見えてない内側にもありますので、かなりの数になります。



リードの錆も出ています。
リードの錆があると調律がすぐに変化してしまいます。



鍵盤の高さが不揃いになっています。
機械的な力の影響により高さが変わっている部分もありますが、
経年でバルブに貼ってあるフェルトと皮が縮む事により、
鍵盤の高さが上がり、その結果不揃いになったり深さが増したりします。



これが鍵盤のバルブです。
バルブ本体は樹脂製の物でした。
同じ機種でもこれはちょっと珍しいバージョンかも?
バルブ本体の下にフェルトと皮が貼ってあります。
この部分を新しくする時期に来ていますが、今回は見送りました。

古い楽器は、サブタ皮の交換、調律、蛇腹パッキンの交換、
鍵盤及びベースのバルブ材の交換、鍵盤及びベースの調整が
定番のフルコースです。
状況により、リードの錆取り、リード固定のロウのやり直し、蛇腹の交換などの
作業が必要になりますが、何れも高額な修理となります。
古い楽器を購入する場合は、その後の修理費と楽器の価値を考えて
購入する必要があります。
整備済みと言って売られている楽器も基準がありませんので、
古い楽器の場合は要注意です。