古くて小さな楽器の修理2014/08/09

以前に点検と修理の見積もりをさせていただいた、
古くて小さな楽器の修理を開始しました。

http://accordion.asablo.jp/blog/2014/06/25/7516048




小さい楽器ですが、超細鍵盤ですので、
34鍵盤あり、内部にはその4倍の136枚のリードが入っています。
右手側だけで136枚です。


そのリードは木枠にロウで付けられていますが、
経年でロウが劣化して脆くなっているため、各所にひび割れがあります。
リードの固定が悪くなると音に雑音が出たり、調律が安定しなくなり、
楽器として使用する事が厳しくなります。


こちらもリードの接着に問題が出ています。
40年以上経過した楽器は早ければこのような劣化が出ます。
修理するには全てのリードを木枠から取り外し、
付いている古いロウを綺麗に落とした後に新しいロウで再び取り付けます。
この作業は大変時間が掛かりますので、費用もそれなりに必要となります。
ですが、殆どの古い中古楽器はこのような修復はなされていません。

今、大丈夫でも新品より経過年数分だけ早く問題が生じ、
その時には多額の出費が必要となります。
安いという理由で中古を購入しても、後に費用が掛かることを
理解した上で中古を購入しないと後で後悔する事になります。
ロウだけではなく、皮、フェルトなど、その他にも劣化する箇所があります。
問題が出た場合はそれらの劣化部分を交換する必要があるので、
古くて安い中古は、本当は高くて古い中古という事になります。
また、本当の意味で完全に修復されたアコーディオンは安くなりません。


こちらはベースのリードです。
ベースボタンの数は少なくても、和音を出す為に1オクターブ分必要です。
48ベースでも120ベースでも必要なリードの数は変わりません。
通常のアコーディオンでは3~4オクターブの音を重ねていますので
ベース側にも多数のリードが内蔵されています。
この楽器では96枚あります。

この楽器は一部のリード列が本体に直付けされています。
上の画像がその部分ですが、こういう楽器は修理や調律が大変になります。


この楽器は酷く空気漏れしていますが、その原因のひとつは、
開閉して空気を止めたり、流したりするバルブにあります。
バルブの当たり面に付いている皮とフェルトでできたバルブ材が
接着剤の劣化により剥がれてずれています。


剥がれたバルブ材を取り外しました。
赤い部分は羊毛のフェルトで白い部分は天然の皮(革)です。
フェルトの上に付いている接着剤が劣化してボロボロになっています。
一つがこの状態という事は他の剥がれていない全ても同じことになっています。
つまり、いつ剥がれて音が出たままになってもおかしくないという事です。


これは剥がれたバルブ材の裏面(皮の方)です。
空気が通る穴の形が段になって残っています。
バルブ材である皮やフェルトも劣化して交換が必要になる箇所です。
劣化して硬くなったバルブ材は空気を止める能力が落ちたり、
鍵盤を離した際の閉じる音が大きくなります。
これらを交換する作業はとても時間が掛かる難しい作業となります。
やはり、殆どの古い中古楽器では交換されずに流通しています。


バルブ同士が接触している箇所もあります。
これではバルブの動きに問題が出ます。
この楽器はベースボタンが落ちてしまっていますので、
何らかの強い衝撃を受けたと思われますが、
そういう影響が内部にも出ています。


バルブがずれて空気が通る穴が見えている箇所もあります。
この状態も空気漏れの原因のひとつです。


ベースボタンが全て落ちてしまっていますので
ベースメカニックを取り出しました。
この楽器は少しの分解で全てのメカニックが取り外せるタイプでした。


メカニックは簡単に取り出せましたが、ボタンが落ちた影響で
内部のメカニックやボタンに歪が出ていますので、
結局、全てバラバラに分解して調整しながら組み付ける作業が必要となります。


ベースメカニックの一部に使われている木の部品に破壊箇所がありました。
古い楽器は劣化部分があり、修復が大変になりますが、
加えて衝撃を受けている物は更に多くの修復作業が必要となります。
この楽器は小さい物ですが、かなりの時間が必要になりそうです。


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