小道具の修理2015/05/04

NHK名古屋放送局製作のドラマにエキストラ出演する事になり、
収録日に雨が降って中止となって、monte accordionに戻ってきてからの続きです。



空気漏れが非常に酷い状態で、勝手に音が出ていますので、
撮影で演奏するのは不可能な状態です。
雨天で撮影中止になり、一日猶予ができたのでお借りしてきました。

楽器はトンボ楽器の物で、25鍵盤、MM、14ベースの物です。
ドラマの場面は戦後の闇市という事なので、丁度70年前という事になります。
この楽器の年代は分かりませんが見た目から判断して、
時代としては適合している様に思います。



「BLUME」という名前でしょうか?
調べてみるとドイツ語で花という意味のようです。
14個あるベースボタンは上の7列がベース単音で、
下の7列は和音になっています。
音域はB♭、F、C、G、D、A、E となっていて、
面白いのは、AだけAmになっており、他はメジャーの和音になっています。
平行調で短調が弾けるようになっている訳です。
ですが、この音域では移調しても渡された曲は右手しか弾けない事が分かったので
音を後で取る為に別のアコーディオンをNHKに持参しました。
それでも撮影中に音がある方が雰囲気は出るので可能なら
現場で音が欲しいところです。
という訳で、何とか演奏ができる状態まで直す事にしました。



右手の鍵盤は高さがバラバラです。
全ての鍵盤は押しても元に戻りますが音が出たままの箇所があります。



真鍮にメッキを施された重いグリルカバーを開けると、
張ってある網は剥がれていてこの通りです。



金属製のバルブが並んでいました。
バルブ材はフェルトは無くて皮のみです。
皮は古くなってペッタンコですが取り敢えずの役目は果たしていそうです。
アームが華奢な為、バルブの位置がずれていて空気漏れしている事が分かりました。
本当は皮も交換時期ですが、応急処置なのでバルブの位置と、
鍵盤高さの修正を行いました。
これで問題なければ多少音が悪くても応急処置は完了し
このまま明日の撮影に使うところですが、
音が出せるようになると別の悪いところが見えてきます。



出ない音が幾つかある事、調律が激しくずれている箇所がある事、
雑音でまともな音が出ないところ多数、という症状があり、リードを点検しました。
古いので予想はしていましたが、リードバルブは激しく反っています。



リードは真鍮製で、リードプレートはアルミニウムではなくて
バンドネオンと同じ亜鉛です。
きちんと直したら良い音が出そうな仕様ですね。
リードバルブの反りは大体無視できますが、大変厄介なことに、
リードを固定しているロウがどうしようもなくダメになっていました。
釘があるのでかろうじて留まっていますが、
暫く鳴らしたらリードが落ちてしまいそうです。
まともな音が出ないのはリードの固定が甘く、プレート自身が振動しているからです。
ロウが全くダメなので空気も無駄に消耗します。



ベース側のケース内にリードを留めているロウが剥がれた物が集まって落ちています。
この状態で使用すればリードに剥がれたロウが挟まり音が出なくなるでしょうし、
バルブに詰まれば音が出たままになります。
やはり持ち帰ってきて正解でした。



ベース側のロウも同じ状態です。
よく見ると、元々あったロウの上に別のロウで補修してある感じです。
ですが、補修したロウは品質が悪く、剥がれて簡単に取れる状態です。
以前にロウの問題は認識されていたという事ですね。
さすがに半世紀以上経つ楽器なのでそれなりに傷んでいます。



劣化したロウと劣化した皮のリードバルブがケース内に落ちています。



手前は補修したロウが残っているリードで、
奥はオリジナルのロウ留めリードです。
このままでは調律以前に音自体が濁っていて使い物になりません。



蛇腹のパッキンの皮も交換時期ですが、これは現状維持ですね..



ベースの底板に型番がありました。



ベースメカニックの部屋は意外と綺麗です。
埃も大して入っていませんし、ボタンの動作も問題ありません。
四角いバルブがベース音で、三角のバルブは和音用です。



一見、問題無さそうなベース側ですが、よく見るとバルブが少し
開いていて、空気漏れが起きています。



ベースメカニックのケースに名前の印がありました。
「長南」とありますが、恐らく検査印でしょう。



リードの蝋はオリジナルのロウの上から新しい物で補修しました。
リードバルブは交換せずに形を整え、どうしようもない物は交換しました。
調律は激しいズレのみ調整し、多少のズレは修正しませんでした。
実際、その方がリアリティがあると思いますので。



鍵盤高さは調整して弾きやすくしました。



応急的とは言え、補修を行うと空気漏れは何とか演奏可能レベルまで戻りました。
ですが、悪いところが直ると別の悪いところが見えてきます。
蛇腹の数箇所から、激しく空気が漏れているのが気になります。
蛇腹の折り目の薄い部分ですが、5ミリ以上の穴があるので、さすがに無視できません。
空気漏れが本当に激しい箇所だけ補修しました。
これで、なんとか演奏できそうです。
頼まれた訳ではないので無償修理ですが、まあ、ちょっとギャラが出るらしいし、
貴重な体験もできるので、良しという事で..



最後にもうひとつ、
アコーディオンが入っていたオリジナルのハードケースの修理。
二つある蝶番の軸が片方無くなっていて危険な状態です。
不意にケースが開いて落としてダメになると悲しいので、これは修理しました。



交換の為、外したリードバルブです。
結局、ここまでの修理で夕方になってしまいました。
使えるようになった楽器で撮影で使用する曲の練習をしました。
馴れない古い小さな楽器なので。



21:27 金山駅の居酒屋にて食事。
明日も6時にNHKなので今日も店に泊まります。
今日は一日が長い....


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