35年前の楽器2015/09/24

35年前に浅草で購入したというアコーディオンの修理を承りました。



35年間持っていた楽器ですが、途中、弾かない期間があり
再開して不具合が出たという事です。
楽器はイタリア Settimio Soprani の41鍵盤、MMLの物です。
ちなみに、外観はピカピカです。



空気漏れがあり、ベースボタンを押していなくても音が出てしまうという事で、
ベースの分解を行ないました。
この楽器はベースメカニックが簡単に取り出せるタイプなので、
あっという間にベースのバルブまでアクセスできます。



ベースボタンの操作により開閉するバルブです。
バルブは穴を塞ぐ面にバックスキンがあり、
その上に羊毛フェルトが貼り合せてあります。
上の写真で白い部分がフェルトですが、よく見ると穴が空いています。
これは衣類に穴を空ける虫と同じ虫による食害です。
奥に見えている空気バルブのフェルトにも穴があります。
フェルトを食われた為にバルブから空気が漏れている事が分かりました。



不思議とあまり食われていないバルブもあります。
フェルト交換の為、食害が酷いバルブのみを取り外しました。



このバルブは食われた穴が貫通しています。
これでは完全に空気をストップする事はできません。
下にある茶色の部分は薄いバックスキンです。



あまり弾いていなかったのでしょう。
左手を通すベースのベルトですが、殆ど傷んでいません。
上の写真のベージュの革の物がオリジナルですが、
見た目は綺麗でも硬くなっていて演奏すると手の甲が痛くなりますので
新しい物と交換します。
下に写っている黒い物が新しいベルトです。
表は天然皮革で手の当たる部分は柔らかい素材でできています。



念のため、右手のバルブもチェックしてみました。
わずかに食われている穴がありますが何故か
右手側のフェルトは問題ありませんでした。

バルブの並んでいる手前にあるネジ留めされた金属部品は
鍵盤を外す為のスペシャルツールです。



この楽器は鍵盤一つずつが独立して固定されていて、
コイルバネで引っ張っています。
このバネを外すと鍵盤も取れますが、先ほどの
本体に内蔵されているツールでバネを引っ掛けて外します。
一般的なアコーディオンは一本の軸によって鍵盤が串刺しになって
固定されているので、一箇所を外す場合も軸を抜いたところまでは
鍵盤を取り外さなくてはいけません。
鍵盤の取り付けや取り外しは大変になりますが、
軸を使う方式の方が鍵盤操作のフィーリングは良くなります。



右手のスイッチですが、形状や取り付け方法が中国製の
アコーディオンとそっくりです。
その他の部分もこの楽器と作りが良く似ているので、
中国製の一部の楽器はこの楽器を手本に設計されたものと思われます。
この楽器はイタリア製でも特殊な作りをしていますので、
どうせコピーするなら一般的なデザインの物にしたら良かったのに..
と、個人的には思います。



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