35年前の楽器 22015/09/28

35年前に購入したアコーディオンの修理を行なっています。


空気漏れの主要因であるベースのバルブ材交換を行なった後、
発音関係の調整と全体の調律を行いました。
これはベースのリードで、5列入っています。
一番左に見える最高音の列は水平置きの直付けです。
直付けはメンテナンスが大変なので最近の楽器では見ません。
この楽器はベースの音の切り替えが2つで、
どちらに切り替えても、最高音のリードが鳴って右手とのバランスが悪いので
ご依頼主さまと相談の上、音を止める処置を行ないました。



ベルト類は、ベースストラップ、蛇腹留め、背負いベルトと、
全て交換しました。
元々、綺麗な外観を保っていた楽器ですが、見違えるようになりました。



これが元々付いていた背負いベルトです。
金具の取り付け部分ですが、今にも切れそうです。
こうなる前に交換しておかないと、突然切れて演奏不能になったり、
楽器を落として楽器を壊す恐れがあります。



蛇腹留めは切れているのをテープで補修されている状態でした。



修理が完了しました。
35年前の楽器とは思えない程の外観です。
中身もリフレッシュして長く使って行けるようになりました。



この楽器のグリルカバーはちょっと特殊です。
アルミニウムの板に細い穴が多数ある構造ですが、
これは音の高周波成分を減衰させてチャンバーの様な効果を得る構造です。
チャンバーよりも簡単な構造で同じような効果が得られますが、
常に有効なので、チャンバーの楽器のように切り替えてチャンバーの無い
リードを選ぶ事ができません。
その場合は、カバーを外せば良いのですが、見た目も悪くなり、
調律のズレが起きたり、埃を吸い込む事もありますのでお勧めしません。

最近、グリルカバーを外して演奏する奏者を時々見ますが、
一般的な構造のカバーであれば外した効果は殆どありませんし、
前述のようなデメリットもあるのでお勧めしません。
R.ガリアーノがやっているのを真似ている方が多いと思います。
ガリアーノが使っている楽器はグリルカバーにチューブチャンバーという、
構造が付いていて、やはりチャンバー的な音が得られる物です。
この楽器と同様、常に効果があるので、不用な場合や、
音量が欲しい時には外して演奏します。
チューブチャンバーや開口面積の小さいカバーでなければ
取り外しの意味は殆どありません。
まあ、見た目のパフォーマンスというところでしょうか。



修理が完了し、後は発送のみです。
この楽器には綺麗な形のケースが付いてたようです。
イタリア FARFISAのロゴが入っています。
この頃のSettimio Soprani はFARFISAが作っていたのでしょうか?



ケースの中は赤いフェルトが張ってありました。
ここにも繊維を食べる虫の抜け殻があります。
ベースのバルブのフェルトに穴を空けた虫ですね。
ケースの中も綺麗にして発送させていただきました。