国産の古いアコーディオン 22015/12/08

昭和初期の物と思われる古いダイアトニックアコーディオンの修理を承りました。


修理の為の分解を開始しました。
リードは真鍮製でバンドネオンのように一枚の板に一列分の
リードが全て取り付けてあります。



リード部分の拡大です。
貼ってある皮製のリードバルブは反っていて硬化していますので
全数交換です。
リードはバンドネオンのようなL字の金具で留めていますが
周囲は何か白い物で封着しているようです。



さらに拡大した写真です。
古いアコーディオンではリードプレートはシェラックかロウか
ニカワで接着してありますが、この白い物は何か分かりません。
元々、こういう色の物ではなくて経年で白くなった可能性もあります。
いずれにしてもひび割れて劣化していますので除去するしかありません。

陥没しているリードがあります。
音が出ない箇所の一つと思いますが、リードが折れているかも知れません。



左手側のリードです。
こちらは2つの和音と2つのベースだけなのでシンプルです。
和音は3声で、ベースはオクターブ違いの2音構成です。
右側と同様に白い何かで固定されています。



右手側のリードを本体から外したところです。
古い割りには内部は綺麗です。
バンドネオンの様に木枠は固定されていませんでした。



リードを固定している接着剤ですが、白いのは表面だけでした。
表面を除去すると褐色の何かが出てきました。
劣化しているので気密は悪いでしょう。



L字の釘を外すとリードと木枠が分離できました。
リードの内側のリードバルブも反って硬化しています。



リードを綺麗に掃除して新しいバルブを貼りました。
複音なので同じリード列がもう一枚あります。



左手側のベースリードです。
皮は激しく反っています。
周囲の接着剤は真っ白でやや透明感があり、まるで霜が降りているようです。



リードを取るとこんな感じです。
リードの下には共通の穴が一つだけです。
右にある囲いの無い穴は空気バルブ用の穴です。



左手のバルブは空気ボタンの物も含め、リード直下の隔壁にはありません。
これは最近の楽器と大きく違います。
本体の操作部、要するにボタンの真下がバルブです。
バルブに直接ボタンが付けてあります。
これはベースのボタンですがボタンの下に穴が二つあり、
直下には長方形のバルブがあり、二つの穴を同時に塞いでいます。



ボタンを押した時はバルブが開いて穴の周囲に隙間ができます。
バルブの一辺を軸として固定しているので開くと傾斜がつきます。
この楽器では3つあるボタンに3つのバルブがあり、
操作部分直下のバルブから空気が出入りします。
本体の内部は3分割されていて、それぞれ、ベースリード、
和音のリード、空気穴の部屋になっています。
リードが少ない楽器でしか実現しない方法です。



楽器内部に検査印がありました。
年月は書いてありません。
「ACCORDEONS 林」と書いてあります。
何故か英語のACCORDION 綴りではありません。



蛇腹の内側に虫の抜け殻があります。
この楽器にはあまりフェルトが使われていませんが
恐らく、左手のベルトの内側に貼ってあるフェルトを食べた虫でしょう。