中国製アコーディオン2016/01/22

ネットで新品のアコーディオンを購入したという方から修理を承りました。
音がおかしい箇所があるという事でしたので、
新品なら購入したところで修理か交換してもらったらどうですか?と、
お伝えしましたが、販売した店では対応不能という事で修理する事にしました。



届いた楽器は小さな22鍵盤の楽器です。
音符柄のかわいらしいグリルデザインですが中国製の楽器です。



症状を確認した後に中を開けてみました。
右手側のリードですが、リードバルブが反っている箇所が多数です。
30年以上使った楽器のような感じですが新品です。



中国製の低価格なアコーディオンでは常ですが、使っている材料が悪い為に
不具合が出ています。
天然革の部品は厚さや硬さが不安定で様々な不具合が出ています。
バルブを押さえている細い金属のバネも柔らかい銅なのでバネ性が乏しく
すぐに変形してしまいます。
リードの調整もかなり適当です。



本来、全て交換が望ましいのですが、費用をかけたくないという事で
最小限の修理を行う事にしました。
色が薄い皮は当店で交換した部分です。
最小限といっても半数近くの交換になります。
見えていない木枠の内側にも貼ってあるのでかなりの数です。
22鍵盤の場合、右手側のリードの数は、22×2×2=88 にもなります。



ベースリードの方はリードが大きいので皮の悪い影響が出やすく、
かなりの部分の交換をする事になりました。
この楽器の左手リードの数は、12×3×2=72 です。
アコーディオンとしてはかなり小さな物で音色も固定ですが
リードの総数は160です。
アコーディオンは小さくても高価な楽器になるのは仕方が無いところです。

本来であればこの後、全体の調律を行う必要がありますが、
やはり費用をかけられないため、大きくずれている箇所のみ調律を行いました。
実際には殆ど全ての箇所が大きくずれていますが..



補修した結果、取り敢えず演奏可能な状態になりましたが、
細かい不具合は多数残っています。
鍵盤も曲がりがあるので隣合う部分の隙間に粗密があります。
鍵盤がぶつかってしまう為、操作するたびにノイズが出てしまいます。
最小の補修では快適に楽器を楽しむ事は難しいと思います。

中国製の安い楽器はかなりの修復をしないと楽器として使う事ができません。
当店でも、気軽にアコーディオンを始められるように低価格な楽器として
中国製の物を置いていますが、修復にかける時間は1週間以上です。
利益を考えると全く採算が取れませんが、
最初の一歩を踏み出せるように、嫌にならずに続けていただけるように、
その為には必要な事と思っています。



中国製アコーディオン22016/01/29

先日、新品の中国製のアコーディオンの修理について書きましたが..

再び、新品の中国製アコーディオンです。



ミニ17鍵盤、8ベースの超小型アコーディオンです。
箱にある写真の通り、子供向けの玩具的な物です。
買ったのは私です..
ネットで5000円でした。
プレゼント用にと、気遣いのない価格という事で購入しました。

他にも類似の物でセルロイド外装の物もありましたが
子供が使う物なので安全性を重視して樹脂ケースの物にしました。
安いおもちゃで、ちょっとしたプレゼント用という目的ですが、
やはりこのまま渡すには気が引ける製品です。
安いので粗悪品という訳ではなくて仕様でしょう。



早速、試奏してみると、鍵盤が戻らず音が出たままに..
この時点で玩具としても不良品ですね。
鍵盤の操作は普通ですがベースボタンは子供が使うには
重すぎるバネ設定です。

その他、異様に空気漏れをする事、音にノイズが混ざる、
発音が悪いなど幾つかの問題があり、楽器として使うには無理な物です。
やはりこの金額では限界でしょう。



中を開けてみました。
右手側のリードです。
木枠ではなくて樹脂枠にロウ留めされたリードは真鍮です。
ノイズの原因はリードバルブの変形によるものでした。
かなり酷い箇所もあります。



ベースのリードです。
蛇腹の左手側は接着されていて分離不能です。
なので蛇腹を付けたまま上から撮影しています。

リードは平面状に12個並べてあります。
楽器が小さい為、一般のアコーディオンのように
両手側共にリードを立てて配置すると蛇腹を閉じた時に
ぶつかってしまうのでこのような配置なのでしょう。



ネジ留めされているベース側の樹脂枠を外してみました。
やはりこちらもリードバルブが波打ってます。



ベースリードの枠を外した状態のベース側の本体です。
空気の出入りする穴と間に入っているスポンジのパッキンの穴が
ずれていて有効面積が減っています。
また、スポンジ状のパッキンは硬いので
きちんと空気を止めていないと思います。



ベースリードの拡大です。
リードバルブが短すぎて先端の穴が出ている箇所があります。
リード自体が短くて(穴が長い?)無駄な空気の消費と
発音レスポンスの悪さを招いています。



右手のリードも同じようにリードバルブが短くて穴を覆いきれていない箇所や
リードの先端に隙間がある箇所があります。



蛇腹と本体の合わせ目に入っているパッキンですが、
ゴムというより柔軟性のある樹脂という感じで
硬くてシール性が非常に乏しい感じです。
空気漏れが多いことの一因になっていると思われます。



右手の鍵盤が戻らない箇所のバルブです。
開いたままになっていて音が出ています。
バルブ材は発泡ゴムのような物です。
鍵盤が戻らない原因はシーソーのようになっている軸部分の
加工精度が悪い為のようです。



グリルカバーのネットは医療用のガーゼみたいな感じです。



右手のバルブが隣のバルブと干渉している箇所もありました。
鍵盤の操作をするとバルブ同士がぶつかっています。
他にも、バルブがずれていて僅かに空気漏れしている箇所もありました。



ベース側を分解しました。
シンプルな4ベース、4和音構成です。
和音は1,5度の2音なのでメジャーにもマイナーにも対応しています。



ベースのカバーにあるネットはかなり適当に貼ってあります。
大きな皺があったり、接着剤の付いていない箇所があったり..



空気ボタンのバルブの台座を留めているネジは完全に入っていません。



拡大するとネジの頭と台座に隙間があるのが分かります。



ネジの反対側は本体の内側に貫通していました。
暫く眺めてネジが完全に入っていない理由が分かりました。
ネジが長過ぎて樹脂のリード枠の下部に当ってそれ以上進まないからです。
写真はリード枠を外したところですが、リード枠の留めネジの受けの高さしか
空間はありませんのでネジがリード枠の底に当ってしまいます。
それ以上進まないのでネジが不完全なところで止まっているという訳です。



ベースリードの下にあるパッキンですが、
一旦剥がして位置を合わせてみましたが、
元々ピッチがずれていて完全には一致しませんでした。



硬くてシール性が悪そうなのでこれは剥がして別の方法でシールする事に。
なので剥がしてしまいました。
接着箇所が部分的で適当ですね..

と、色々な問題がある楽器ですが価格を考えると仕方ないところです。
この中国製おもちゃアコーディオンをなんとか使える楽器に直す、
というか改造してプレゼントとして贈りたいと考えています。