古いScandalliの修理2016/04/16

古いイタリア製アコーディオンの修理を承りました。


Scandalli の中型アコーディオンです。
鍵盤が細いので同じ音域の楽器より小さくできています。
製造から50年程度は経過しているでしょうか。


最初に気になるのはベルトです。
楽器とは無関係ですが、ここが傷んでいると切れて楽器を落とします。
金具と接するところが一番傷みますので、この部分にひび割れが出ていたり
細くなっている時は交換時期です。
楽器を落とすと高額な出費になります。
場合によっては修理不能になる事もあります。


外観で気になるのはグリルカバーです。
何故か穴が空いていて裏から塞いで修理してあります。


グリルカバーを外すと裏からセルロイドを切った物で塞いであり、
ガムテープで貼ってあります。
セルロイドは一般には入手できませんので、これで補修されているという事は
アコーディオンの販売や修理に関わる人が行なった可能性が高いです。
ですが、ガムテープで貼るというのはプロの仕事ではありません。
アコーディオンの修理で、粘着テープ類(両面テープ含む)を使う箇所はありません。
そのような補修を行なう人は信用してはいけません。
また、穴の無い板で塞ぐと音にも影響が出ます。


楽器を開けました。
蛇腹と本体の合わせ目にあるパッキンですが、革製の古い物が入っています。
交換時期ですが、よく見ると角部分の内側に別の革が貼って補修してあります。
やはり、誰かの手によって補修された楽器という事でしょう。
でも、この補修は全く役にたっていません。


リードです。
リードを留めているロウが劣化して脆くなっています。
上の画像の右下のリード周りのロウは剥がれて取れています。
40年以上経過したアコーディオンでは起こり得る事です。
この状態ではまともな音は出ません。
また、修理費用もかなり高額になります。
古いアコーディオンは音が全部鳴るからと言って、
必ずしも楽器として使える物という訳ではありません。
中古を購入する場合、この事をよく理解している必要があります。


ベースリードです。
こちらもリードを留めているロウが悪くなっています。
最高音のリード列は本体に直付けされています。
直付けのリードがある楽器はメンテナンスが大変です。
手前に見える機構は古い楽器で偶に見られる、音の切り替え方法です。
スイッチが1個で、押すと交互に音が変わるという物ですが、
確実に切り替わらない時があったり、
2種の状態のどちらになっているかが分からないなどの欠点があるので
現在は採用している楽器は無いと思います。


古い楽器にありがちなもう一つの大きな問題も出ています。
リードの錆です。
錆が出ると調律が大きく変わります。
錆が付いたままで調律してもすぐに変化するので調律が無駄になります。
調律が安定しない楽器は楽器として使えません。
修理にはリードを全て外して磨く必要があり、高額な費用が掛かります。

リードは錆びていても音は鳴ります。
音が全部鳴るというだけで楽器として使える訳ではありません。
リードの錆は必ずしも古い楽器だけで起きる訳ではないという点も注意が必要です。
この楽器は修復可能ですが、かなりの期間と費用が掛かるのは確実です。


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