ベースレジスターの改造2020/06/15

調律でお預かりしているアコーディオンのベースレジスターの改造を行いました。
レジスターというのは音の切り替えをするスイッチの事です。
右手側にもありますが、ベース側には無い機種もあります。


これはアコーディオンのベース側の中です。
1オクターブ、12音のリードが付いた木枠が3列並んでいます。
ちなみに、楽器はEXCELSIOR911です。


ベースリードを真横から見た状態です。
3列ある木枠ですが右から2列は両面にリードが付いていますので
実際には5列のリード列があります。
楽器によっては4列の物もあります。
画像に白い数字を1~5まで入れました。
1→5の順番で音域が高くなっています。
音程が低いリードは長いので木枠の高さも高くなっています。


木枠を2列取り外したところです。
木枠の下には穴が空いていて穴の下にはバルブがあります。
ベースボタンを押すとバルブが開いてその部分から空気が出入りし、
その真上にあるリードの音が鳴るというしくみです。
コードボタンでは3箇所の穴が開いて3重和音が出ます。
ちなみに、コードの音は高い方から3番目までのリード列だけが鳴るようになっています。


この楽器にはベースレジスターが4つ付いています。
一番左端のレジスターを押すとこのようになります。
5列ある穴の2箇所だけ開いて3箇所は閉じています。
黒く見えている所が開いていて、シルバーの所はアルミニウムの板で
ふさがれていて、下にあるバルブが開いても空気は通りません。
なので穴の空いている列のリードだけが鳴ります。
この場合、左端の数字から1と3のリード列だけが鳴ります。
1は一番低音の列で、3は真ん中の音域です。


次は左端から2番目のレジスターを押したところです。
このスイッチには触って分かるように丸い凸の印が付いていて、
マスタースイッチと呼ばれる物です。
マスタースイッチは全てのリード列が鳴るレジスターです。
なので1~5までの全ての穴が開いています。
ベースボタンを1つ押すと5つのオクターブ違いの同音が鳴るということです。
実際には3の列は上下のオクターブにまたがっていますので
4オクターブ分の同音が重なります。


左から3番目のレジスターを押した場合です。
2と4のリード列が鳴るようになっています。


最後の4つ目のレジスターを押した場合です。
4と5のリード列が鳴る組み合わせです。
5は一番高い列なので4、5では右手の音域と同じ位の音程の
ベース音が鳴るということです。


ベースレジスターと鳴るリード列を図にしました。
黒い●は鳴るリード列です。
音域は4オクターブで、真ん中に上下にまたがっているリード列があります。
この図を見るとよく分かりますが、この楽器ではマスター以外のスイッチでは
2列のリードだけが鳴るようになっています。

実際、アコーディオンの演奏でベース側を伴奏として使う場合、
右手の音域と重なると伴奏がうるさくなってしまいます。
右の音を邪魔しないで伴奏としての迫力を出す場合、
低音から3つ目までのリード列を鳴らしたい場合が多いです。
また、マスターは5列鳴ってうるさいので一般的には使えません。
一番高音の列をカットした4列の音が欲しいところです。


という訳で、この図は改造案です。
実際、ベースの低音から3列や4列の組み合わせは使う頻度が高く、
一般的にはこの組み合わせを持っている楽器は多いです。
何故かEXCELSIORはマスター以外は2列構成という機種が多いです。

ベースレジスターが8個もあってリード列が6本もある
EXCELSIORの高級機、コンチネンタルでもマスター以外は2列のみです。
以前にもこの事はブログで書いた事があります。


ベースレジスターの改造作業を開始しました。
レジスターの機構部品は繊細ですが大きな力も加わる場所なので
改造は簡単ではありません。


部品を外すと変形している物が見つかりました。
これはレジスターを2つ以上同時に強く押した場合に起きることがあります。
意図して2つを同時に押す人はいないと思いますが、
ベースレジスターは側面に飛び出ているので、
ソフトケースに入れた状態で何かにぶつかったり、
置いた楽器が倒れた時などに同時押しの状態になって不具合が出る事例があります。
今回は改造でバラす事で不具合がみつかりました。
変形を修正する事でレジスターの動きが以前よりスムースになると思います。


改造後の確認です。
一番左端のレジスターを押すと低音から3列が選択されました。


マスタースイッチは一番高い音が鳴らない組み合わせになりました。
マスターが無いのは何となく大丈夫か?という気になりますが
通常、5列全部鳴らすことはありませんので、4列に改造する方が実用的です。

ベースレジスターは(右のレジスターも)、組み合わせの変更が可能です。
機種によってはできない場合もありますが組み替えることで
より使いやすい楽器になる場合もあります。
ご興味ございます方は是非、お問い合わせください。
ベースレジスターがどういう状態になっているか分からないというご相談も承ります。


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