オークション購入品の修理2020/07/22

オークションで購入したというアコーディオンの修理を承りました。

40年程度前の物と思いますが外観はかなり綺麗です。
依頼された方は遠方なので電話でやり取りをしましたが、
ある程度ご高齢の方と思います。
今や高齢の方でもインターネットを使いオークションで購入する時代です。
買われた時は電話で音を確認するような事も行い大丈夫と思ったそうですが、
届いた物は鍵盤の操作に問題がありました。

確かに全ての音は出ますが楽器はそれだけで良いとは限りません。
当然、ノークレーム、ノーリターンですので返品はできません。
何故、返品できない状態で売られているか?まで考えて購入すべきでしょう。
売りたい人は都合のよいことだけを述べます。
ビジネスとして販売業をする場合、信用が最重要なのでテキトウな事はできません。
この違いを理解していない人は少ないと思いますが、
楽器をオークションで買う人は多いのは目先の安さが重要と思う人が多いのでしょうか?


時々ありますが鍵盤バルブの張り付き現象が起きていました。
バルブの表面に粘着物が出てきて張り付いてしまい、
鍵盤を押す時にとても重く、ある程度押し込むと突然、鍵盤が動いて軽くなる現象です。
この状態ではうまく演奏ができないので修理するしかありません。
鍵盤のバルブが点検できるようにグリルカバーを外しました。


バルブを見ると黒鍵側の奥のバルブのロウ接着部分の色が変です。


拡大してみるとバルブのロウ留めを修理した痕がありますが
とてもプロの仕事とは思えませんので前の持ち主が自分で行ったのかも知れません。
バルブの張り付きを直そうとしたと思いますがこの部分の修理は
とても難しく、経験の無い人が行うのは不可能です。


鍵盤を抜き取りました。
良く見ると新しい革が貼ってあります。


バルブの下にはフェルトがあり、その下に革が貼ってありますが、
新しい革が古い革の上に貼り付けてあります。
しかも剥がれかけています。
通常、この修理を行う場合はフェルトも革も新しくします。
そのまま新しい革を貼るというのはあり得ません。
その分だけ厚くなるので鍵盤の高さが下がりますし、バルブの角度も変わるので
空気漏れを起こします。


バルブと鍵盤からのアームのロウ留めを行ったようですが、
古いロウをそのまま加熱したのできちんと溶けておらず、
加熱のし過ぎで色も濃くなっています。
最悪なのはフェルトにロウが垂れてしまっている事です。
フェルト部分にロウが入ると柔軟性が無くなりますので
空気をきちんと止める事ができませんし、鍵盤を閉じた時の音も大きくなります。


全てのバルブのフェルトと革を交換し、バルブをロウ留めしました。
書いたら一行ですがとても時間の掛かる作業です。


鍵盤の上から見た状態ですが、鍵盤の高さがきちんと揃っています。
バルブの張替えを行う場合、単に張替えただけではこうなりません。
バルブの位置、角度、鍵盤の高さと深さの全てを揃えるように調整する必要があります。
フェルトや革は微妙に厚さが違うので同じ物を貼っても鍵盤の高さに差が出ます。
元の物とも入れ替わるのでやはり高さ、深さが変わります。
鍵盤やバルブは並行移動で上下せずに軸を基点に回転していますので、
高さが変わればバルブの角度も変わります。
角度が変わればバルブの面が楽器と並行ではなくなるので空気が漏れます。
これらの全てを均一に揃えて張替えをするので簡単ではありません。
修理費用も相当になります。
この後、全体の調律を行い作業は完了しました。

オークションで安く買っても不具合があれば修理費が掛かります。
直ってもまた別の問題が出るかも知れませんし、
修理不能な場合や修理費が楽器の価値を超えてしまう事もあります。
専門店で保障付きで購入すれば何も心配いりません。

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