コンサーティーナの調律2020/08/23

コンサーティーナの調律を承りました。


押し引き同音のクロマチック式で、音域はかなりあります。
そこそこ古い物のようですがあまり問題は無さそうです。


コンサーティーナは六角形で各辺にネジがあり、
蛇腹部分とボタンのある蓋部分を固定しています。
この楽器はきちんとしたコンサーティーナなので本体側の雌ネジに
金属製の受けがあり耐久性があります。
安い物の場合、木ネジみたいなネジで、
本体側は木に穴が空いただけというものもあります。
それなりに強く締めないと空気漏れしますし、
コンサーティーナの調律では蓋をしてネジを締めると狂いが出るので
調律作業では何度もネジを緩めたり締めたりします。
そういう場合、木ネジ方式ではすぐに傷みがでてしまいます。

木ネジ式では固く締まる事もあり、慣れないユーザーが開閉すると
ネジの頭の溝を壊してしまうこともあります。
そういう状態で調律に来ると交換する同じネジもないので大変困ります。


蓋を開けて内部を点検するとリードに錆が出ている事が分かりました。
これは少し大変なことになりそうです。
錆があると調律が狂うだけではなく、すぐに調律が変化して安定しません。
なので調律する前に錆を除去する必要が生じます。


調律を繰り返されてきた物なのかリードが薄くなっている箇所もあります。
きちんと教育を受け経験のある人が調律する場合、
余程調律を繰り返してもリードが極端に消耗する事はありません。
普通に使っている楽器で定期的な調律をするのであれば何度やっても
問題が出るようなことはありません。

慣れない人による調律を受けたり、基準となる調律のピッチを
大きく変更するような調律を何度か繰り返した場合に
リードが薄くなってしまうことがあります。
アコーディオンではあまり見られませんが
経験的にコンサーティーナやバンドネオンでこのような事が
多く見られる感じがします。


薄くなったリードを外してみましたが、薄いだけではなくて変形も
しているので不慣れな方が調律したのかも知れません。
ちなみに、当店での調律作業は私、店主以外の者が行う事はありません。
念のため..


消耗したリードの裏側ですが少し錆が出ています。
先端が薄くなってきていますがまだ使えそうなので
今回はこのまま使う事にします。


錆びたリードの画像です。
両面共に錆が出ています。
一つずつ手作業で錆を除去しますが、このコンサーティーナは
本格的な物ですので、このようにリードを簡単に取り外す事ができます。
なので、アコーディオンリードを使ったコンサーティーナや
アコーディオンの錆除去作業よりもかなり短時間で作業できます。
アコーディオンリードの楽器の場合はリードをロウで留めていますので
一旦ロウを溶かしてリードを取り外し、錆を取った後に
ロウで接着する作業が必要になる為です。

この楽器のように専用のリードを使っているコンサーティーナでは
本体側に薄い皮のリードバルブが付いているのでリードにバルブが
ありません。この事も錆除去作業を簡易にしています。
アコーディオンリードの場合はリードにバルブが貼ってあるので
錆を取る為にバルブを剥がし、貼りなおす作業が必要になります。


という訳で、こちらから順番に錆の除去とリードの調整を
一つずつ行って行きます。


片面が終わると反対面です。
こちらの面はオウムガイの断面みたいですね..
リードは片方からの空気の流れで鳴るように調整されているので
蛇腹の押し引きで鳴るように表裏2面に付いています。
なのでボタンの数の倍のリードがあります。


そして...右手側の両面が終わったら今度は左手側です。
小さな楽器ですがリードの数は100を超えます。
錆の除去とリードの調整が全て終わってやっと調律作業に入れます。
アコーディオン類の楽器は色々大変なのです。