Claviola2020/08/25

Claviola(クラビオーラ)という珍しい楽器の修理を承りました。

Claviolaは以前にドイツHOHNER社が作っていた息を使う
鍵盤ハーモニカに類似した楽器です。
息を吹き込んで鍵盤を操作して鳴らす物で、
音は笛というかクラリネットのような丸みのある独特な音です。
音色や楽器の形状から鈴木楽器の「アンデス」と類似の楽器と思う方も
いると思いますが、発音の原理が全く違っています。

アンデスは複数の笛を鍵盤で選択する楽器で、発音は笛(リコーダー)ですが、
クラビオーラはリードを使っています。
鍵盤で操作して息を吹き込み金属リードを鳴らすという部分までは
鍵盤ハーモニカと同じですがリードの後には音程に合わせた長さの
共鳴管が付いていて独特な音が出ます。
原理としてはクラリネットに近いと思います。
音はアンデスと似た部分がありますが、アンデスは笛の特徴である
風切りのノイズが少し混ざるのに対して、クラビオーラはクリアな音です。

今回の不具合は上の画像の付箋の貼ってある鍵盤の音が
ノイズ混ざりになってきちんと発音しなくなった事です。


幾つかのネジを外すと中が見えてきます。
空気が入る気密部分は透明なアクリル板の蓋になっています。
沢山のネジで留めてある透明な蓋を外すと
鍵盤操作で開閉するバルブが出てきます。


異常のある個所のバルブを外すとリードが見えました。
間違いなく金属リードで発音する楽器という事が分かります。
息で鳴らす楽器なので錆びにくい銅合金のリードです。

リードをよく観察すると僅かにズレがあり、リードとリードフレームが
干渉して発音に問題が出ている事が分かりました。
ちょっと狭くて深い場所ですが、これ以上の分解をせずに直すため、
金属の細い道具でなんとか位置を修正しました。


楽器を元に戻して試奏してみると異常は直って綺麗な音が出ました。
でもちょっと不安なので暫く吹き続けているとまた不具合が再発しました。
予感的中です。
なので再び分解することに。

分解すると透明な蓋の内側には水蒸気が沢山付いていました。
透明だと中の状態がよく分かって面白いですね。
鍵盤ハーモニカなどもこんな感じで息が結露しているのだと分かります。
ちなみに、当店ではアコーディナという息を使う楽器の販売や修理をしていますが、
販売する物、修理した物についてはしっかりと洗浄、消毒をしてお渡ししています。
これは新型コロナ流行の以前からずっとそのようにしています。


分解を進め、気密室、バルブを取り去るとリードがしっかりと見えてきました。
リードには音名がドイツ語で書いてあります。


シリコーンのパッキンを取るとようやくリードの全貌が見えます。
ここで意外な発見。
この楽器のリードの向きですが、一般のアコーディオンやハーモニカと逆向きです。
通常、鳴らない面から空気を送っているのですが何故か鳴ります。
リード単体では鳴りませんが共鳴管が付くと鳴るようです。

ここで以前から気になっていた事が思い出されます。
アコーディオンなどのリードは逆向きでは鳴らないように調整しているだけで
調整すれば逆向きでも鳴ることは経験的に知っています。
ですが、ネットでアコーディオンのWikipediaを見ると、
「フリーリードの1枚のリードは一方からの通気でしか発音しないため、」
という一節があり、以前から自分の中で引っ掛かっていました。
明らかにこの一節は不要です。
まあ、ネットなんて誰でも好き勝手に発言できるところなので
書いてある事に信憑性を求めること自体が不要なのかも知れません。
実際、アコーディオンの修理や練習方法などについて???な事は
山ほど見かけますので..


クラビオーラのリードですが接着剤で留められています。


接着を取ってようやくリード単体を取り出せました。
リードの修正と固定を行い元に戻して修理完了です。


修理したクラビオーラの共鳴管部分です。
リードには調律の痕が全くありませんでしたので、共鳴管の長さで調律しているようです。
金属の蓋が共鳴管に付いていてネジ留めされていますが位置の調整ができます。
この位置調整で調律するものと思いますが、不用意にずれないようにネジ留めと
併せて接着剤で留められています。

この不思議な楽器は今は作られていません。
持っている方は貴重な物になるので大事に使う事をおすすめします。
ためしに吸ってみると音が出ました。
フリーリードは一方からの空気だけで音が出るという規定はありません。

コメント

_ loinorn ― 2021/06/01 19:15

笙がリード1枚で吹き吸い両方対応してますね。
現在吹きと吸いの2枚備えているアコーディオン一族は進化なのか退化なのか??

_ Cookie(店主) ― 2021/06/01 19:33

loinorn様、コメントの書き込みありがとうございます。
私は笙は実際に触れた事もなく、吹き吸い出るという事を知りませんでした。
ひとつ勉強になりました。

吹き吸いでリードが別になったのはやはり、進化と思います。
吹き吸いでリードが鳴るようなセッティングの場合、弱い音から強い音までリードが反応するような調整ができません。
強弱に追従させる為にはリードは別にする必要があったと推測します。
また、吹き吸いで音程を同じにしてもピッチが変わりますので正確なピッチで演奏する為にもリードは1対にするしかなかったのでしょう。
笙ではそのあたりは問題にならないのか少し疑問です。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
迷惑書込み対策です。
下欄に楽器の名前をカタカナ(全角)で入力下さい。
当店は何の専門店でしょうか?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://accordion.asablo.jp/blog/2020/08/25/9296144/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。