バンドネオンの修復42021/04/09

バンドネオンの修復を行っています。

右手側のリード、リードプレートの研磨を完了し、作業は順調に進んでいましたが
ここに来て問題が発生しました。


研磨が終わったリードですが、その後、リードの調整を行い、リードバルブを貼って
調律という具合で進む予定でした。
ところが、リードの調整をしようとしてリードを曲げてみると、穴に嵌って
戻って来ないことが分かりました。
しかも、上の画像のように殆ど全てのリードで嵌ったまま戻りません。
これはリードは鳴らない事を意味します。


本来、リードはリードの形と同じ下穴の周囲とは接触せずに自由に動きます。
上の画像のようにリード穴から少し上に出たように調整しますが、
リードの先端を押し下げても穴の周囲には当たらずに元の位置に戻る筈です。
でなければ自由に振動して音を出すことはできません。
ですが、今回、リードの錆を落として、リードプレートを研磨したにも関わらず、
リードが嵌って戻らないことが分かりました。
今までリードの錆除去を行えば大抵、リードはフリーになって鳴るようになりましたが
この楽器ではまだ問題が残っているということです。

因みに、上の画像の真ん中のリードは後で取り付けられた物です。
リードが折れて交換したのだと思いますが、イマイチな出来です。
今回は楽器を使えるようにする事が目標なのでこのまま行きます。
他にも交換された箇所が幾つかあったのでそれなりに使われていた楽器と思います。


問題はリード下にあるリードプレートに空けられたリードと相似形の穴です。
これはリードより僅かに大きくできているので通常はリードの周囲とリード穴の周囲は
全く接触せずにリードは自由に上下振動できます。
少しでも接触すると音に異常が出たり音が出なくなります。

アコーディオンでは気温の低い時に鋼でできたリードとアルミニウムでできた
リードフレームの熱膨張差により、リードが穴と接触して音に異常が出たり
音が鳴らなくなる事がありますが、それと良く似た事が起きています。

よく観察してみるとリードプレートの表面に亜鉛の酸化物が出ていましたが
これがリード穴の周囲にもかなりの量が出ている事が分かり、
これにより穴が狭まっている為にリードが当たって動かなくなっているようです。
この楽器が殆ど鳴らなかった真の理由はこの事だったようです。


仕方がないのでリード穴の周囲を削って酸化物を落とす作業を始めました。
リードは外さない状態で作業するしかありませんので、これはかなり困難な作業です。
削り過ぎると隙間が増えて発音に問題が出ますし、
少しでもリードが当たる場所が残れば、やはり発音に問題が出ます。
一つ一つ、手作業で削って行くしかありません。
1枚のリードプレートをやってみましたが、完了するのに3時間かかりました。
右手だけで6枚、左も入れて12枚ありますので、単純計算で36時間です。
一日に作業できる時間を考慮すると最低でも5日間必要です。
作業に馴れれば少しスピードアップできるかも知れませんが、
実際には5日では完了できないと思います。
さすがに見積り通りの金額ではできないので、大変申し訳なかったのですが、
修理費用の増額を連絡し、認めていただけました。
最初に予見できなかった責任もありますので、時間に対する費用はかなり
少なくしましたが、それでもそれなりに費用が増えてしましました。
まだまだ地道な作業が続きそうです。


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