そしてバンドネオン ― 2021/06/01
先日、バンドネオンの修復を完了したところですが、
また同じように音がきちんと出ないバンドネオンの修理を承りました。
一般的な物より少し音域が少ない物で、木目仕上げの可愛らしいバンドネオンです。
鳴らしてみるときちんと発音する箇所が少なく、前回修復した楽器ほどではないですが、
似たような感じの状況です。
内部を見るとやはりリード、リードプレートの錆が見られます。
リードバルブも全数交換が必要な状態です。
木枠の上にマスキングテープが貼ってあり、手書きで音名が書いてあります。
以前の調律で書いたものでしょうか?
でも、普通は残さずに剥がします。
よく観察するとリードプレートの所々に白い粘土状の何かが付いています。
パテ埋めをしたようにも見えます。
この部分にも同様の処置がしてあります。
リードの錆がもれなくありますね..
リードプレートを外して内側をチェックしてみました。
リードの錆は裏面にもしっかり出ています。
リードバルブの一部は樹脂に変えられているところもあります。
例の白い粘度状の部分ですが裏から見るとこんな感じです。
触ってみると柔らかく可塑性があります。
触った質感や見た目から恐らく、「ひっつき虫」ではないかと。
海外にこのような物があるのかどうか知りませんが、
恐らく、日本で応急的にされた処置ではないでしょうか。
いずれにしてもこの部分は問題がありそうです。
右手側のリードプレート6枚を全て外しました。
まずはリードバルブを全て外しました。
これは再利用できませんので全て新品に交換します。
リードプレートに残ったリードバルブの接着剤の除去から始めます。
リードとリードプレートを磨いて錆を落としました。
そして裏面。
こちらも同じ様に作業します。
裏面も錆を落としました。
右手側6枚のうち、3枚の両面を整えました。
明日は残りの3枚を行います。
そしてバンドネオン修理 ― 2021/06/02
新たにお預かりしたバンドネオンの修理を行っています。
右手側のリードです。
リードの錆を除去する作業を行っています。
6枚あるリードプレートのうち3枚は昨日完了し、今日は残り3枚分の作業を行いました。
これで右手側のリード全ての錆落としが終わりました。
錆と言えば、こちらも。
バンドネオンの右手側のカバーを留めているネジ4本ですが錆が出ています。
このネジは一般的には指で回してねじ込めるような形状の物ですが、
この楽器はマイナスネジです。
マイナスネジの溝も工具による損傷で傷んでいます。
外観が悪いこともありますが、このネジは調律作業で何度も締め込みと
取り外しを行う事になりますので、錆落としと、工具が入る部分の修復をしました。
左手側にも同じ物が4本あります。
リードの作業に戻ります。
最初に点検した時に「ひっつき虫」のような物で補修されていた所は
リードプレートに半円状の切り欠きがある事が分かりました。(黄色矢印)
また、リード先端が折れている箇所を一つ発見しました。(赤矢印)
という訳で折れたリードを取り外し、同じようなリードを作製して入れ替えました。
書いたら簡単ですが、リードは同じ物がある訳ではないので金属を切り出し、
手作業で同じサイズになるように少しずつ調整してリードがプレートに当たらないように、
でも、隙間ができ過ぎない様に、左右のバランスも見ながら調整して入れ替えます。
勿論、音程も同じになるように調整する必要があります。
ひっつき虫で補修してあった箇所は半円の切り欠きがある事が分かりましたが、
楽器に取り付けてみると、その部分が貫通して空気が漏れる事が分かりました。
空気の漏れを止める為に上から粘土状の物で蓋をしていたという訳です。
それにしてもこれは何の為にできた切り欠きなのでしょうか?
途中で空ける事は考えられないので楽器製作時に手違いで空けてしまったのでしょうか?
という訳で、切り欠きを全て金属で塞ぎました。
やはり同質の物で隙間無く埋める方が良いと判断しました。
リードプレートはリードの振動受け止め、楽器本体に伝える大事な役割りがあります。
この部分に半固形の物や振動を吸収する物、一体化しない材料で補修すると
少なからず振動を減衰させたり、ノイズになる可能性があります。
金属で隙間無く埋めれば共に振動できます。
勿論、界面は隙間が無いだけではなく原子レベルで一体化させています。
この作業も書いたら簡単ですが、実際には表面仕上げまで含め大変でした。
7箇所あったリードプレートの半円状の切り欠きを全て補修しました。
これ以外には左側も含めて同様の問題はありませんでした。
今日はここまで。
バンドネオン修理 左側 ― 2021/06/05
バンドネオンの修理を行っています。
昨日までに右手側のリードの修理を完了しました。
左手側を分解しました。
ボタンやバルブに問題はありませんが、板の部分に割れと修理した痕があります。
この部分が損傷している例は多いです。
できればもう少し綺麗に修理して欲しいところです。
接着剤がはみ出て凹凸があります。
この部分は蛇腹の枠と合わさる部分なので凹凸があると空気漏れが起きます。
裏側から見ところです。
割れた部分を別の木片で補強してあります。
この部分は比較的薄い板なのでリードが大きくて重い左側の場合
調律などの操作で負担が掛かって割れるのでしょうか?
合板を使うか、もう少し板厚があれば良いと思いますが、
楽器としての音の影響があるのかも知れません。
右手側と同様、リードバルブは劣化して反りが出ています。
一番外側の列は蛇腹でリードバルブを挟み込まないように
金属製のガードが付いていますね。
左手側のリードを全て外しました。
リードの錆があります。
裏面も同様に錆があります。
まずは劣化したリードバルブを全て外しました。
これは使えないので全て新しい物に交換します。
リードの錆を落とし、リードプレート表面も磨きました。
今回はこの状態でリードが正常に発音する事を確認できたので一安心。
前回の楽器ではこの状態でも殆ど全てのリードが発音せず、
とても時間の掛かる作業を必要としました。
本来はリードの錆除去とリードプレートの表面研磨程度で
発音をしてくれることが殆どです。
バンドネオン修理 左側2 ― 2021/06/06
バンドネオンの修理を行っています。
昨日までに左側のリードの錆除去とリードプレートの研磨を完了しました。
リードの調整を行いつつ、新しいリードバルブを貼って行きます。
長さと幅を切断して調整しながら行うのでかなり大変です。
全てのリードにリードバルブを取り付けました。
裏面にも同じ数だけあります。
本体と蛇腹の合わせ目にあるパッキンですが、元々付いていた革パッキンの上に
白い樹脂製のパッキンが重ねてはってありますが漏れをきちんと止めていないので
全て剥がして新しいパッキンを貼って行きます。
リードプレートを楽器に戻しました。
これで調律前にできる事は全て行いました。
後は調律を行うのみです。
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