そしてバンドネオン修理2021/06/02

新たにお預かりしたバンドネオンの修理を行っています。


右手側のリードです。
リードの錆を除去する作業を行っています。
6枚あるリードプレートのうち3枚は昨日完了し、今日は残り3枚分の作業を行いました。
これで右手側のリード全ての錆落としが終わりました。


錆と言えば、こちらも。
バンドネオンの右手側のカバーを留めているネジ4本ですが錆が出ています。
このネジは一般的には指で回してねじ込めるような形状の物ですが、
この楽器はマイナスネジです。
マイナスネジの溝も工具による損傷で傷んでいます。


外観が悪いこともありますが、このネジは調律作業で何度も締め込みと
取り外しを行う事になりますので、錆落としと、工具が入る部分の修復をしました。
左手側にも同じ物が4本あります。


リードの作業に戻ります。
最初に点検した時に「ひっつき虫」のような物で補修されていた所は
リードプレートに半円状の切り欠きがある事が分かりました。(黄色矢印)
また、リード先端が折れている箇所を一つ発見しました。(赤矢印)


という訳で折れたリードを取り外し、同じようなリードを作製して入れ替えました。
書いたら簡単ですが、リードは同じ物がある訳ではないので金属を切り出し、
手作業で同じサイズになるように少しずつ調整してリードがプレートに当たらないように、
でも、隙間ができ過ぎない様に、左右のバランスも見ながら調整して入れ替えます。
勿論、音程も同じになるように調整する必要があります。


ひっつき虫で補修してあった箇所は半円の切り欠きがある事が分かりましたが、
楽器に取り付けてみると、その部分が貫通して空気が漏れる事が分かりました。
空気の漏れを止める為に上から粘土状の物で蓋をしていたという訳です。
それにしてもこれは何の為にできた切り欠きなのでしょうか?
途中で空ける事は考えられないので楽器製作時に手違いで空けてしまったのでしょうか?


という訳で、切り欠きを全て金属で塞ぎました。
やはり同質の物で隙間無く埋める方が良いと判断しました。
リードプレートはリードの振動受け止め、楽器本体に伝える大事な役割りがあります。
この部分に半固形の物や振動を吸収する物、一体化しない材料で補修すると
少なからず振動を減衰させたり、ノイズになる可能性があります。
金属で隙間無く埋めれば共に振動できます。
勿論、界面は隙間が無いだけではなく原子レベルで一体化させています。
この作業も書いたら簡単ですが、実際には表面仕上げまで含め大変でした。


7箇所あったリードプレートの半円状の切り欠きを全て補修しました。
これ以外には左側も含めて同様の問題はありませんでした。
今日はここまで。