ロウの劣化2021/06/19

30年程度は経過していると思われるボタン式アコーディオンの調律を承りました。
リードの錆もなく、リードバルブも修正程度で使えそうな感じで、
調律費用のみで良い状態にできるかと思いましたが..

ベースリードの木枠です。
リードは既に取り外しました。
調律だけで済むところでしたが、リードを留めているロウの劣化があり
リードをきちんと固定できていない事が分かった為、リードを外して
ロウ留めをやり直す必要が出ました。
幸い、ベース側だけで済みそうですが、一般的には製造時に同じ品質のロウで
同じ時期に施工されるので楽器全体として修理する事が殆どです。


リードを木枠から外し、リードに付いている古いロウ、木枠に残っている古いロウを
綺麗に除去した後に新しいロウで木枠にリードを接着するという作業が必要です。
とても時間が掛かるので楽器全体で行うとそれなりに高額な費用となります。
また、この作業後には必ず調律が必要になりますのでセットで行います。

殆どのアコーディオンはリードが蝋(ロウ)で留められていますが、
ロウの劣化による問題は早ければ10年程度で起きることもあります。
大体、40年以降になると問題が出てきます。
60年経過した楽器では殆どの場合、再施工が必要です。

リードの固定が緩いと発音不良、ノイズの発生、不安定な調律など
楽器として使うには大きな問題が出てきますので、
リードの固定が悪くなった場合はロウ留め再施工が必須となります。
40年以上経過した中古楽器は常にこの問題があり、
20年以内には問題が表に出てくる事を理解して購入する必要があります。
そして、通常、この大変な作業をやり直して中古として販売している業者はありません。
もし、それを行った中古の場合は同年代の同型楽器の平均的な中古価格より
かなり高額になっていなければ採算が取れません。
一般的には余程、価値のある楽器でなければロウ留め施工をしてまで
中古で販売しませんし、そういう楽器は買い取りや下取り対象外となります。


折角取り外したリードです。
当店では、普段は見えなかったり触ることができないリード裏面の不具合除去、
リード、リードバルブの調整も併せてしっかりと行います。
これはその後の調律の仕上がりにも影響します。
ロウ留めが悪いからロウ留めだけやり直すようなつまらない修理はしません。

今回はロウ留め再施工の分だけ費用が余分に掛かりましたが、
上の画像のようなリード裏面の不具合を発見、修理する事などできました。
それにしても何で裏面の部品がこんなにうねっているのでしょう?
楽器の使用では起きないですし、人が触れられる場所ではありません。
製造時からのものか、途中のメンテナンス時によるもののどちらかでしょうか..