HOHNER2021/10/12

ドイツHOHNERのボタン式アコーディオンの調律を承りました。
少し古いモデルで40年程度は経過しているでしょうか。


左手を通すベースストラップの傷みが激しいので交換する事になりました。
ボタン式アコーディオンはコンパクトな物が多いのでベース周りの隙間が狭く
ストラップを留めているネジの脱着が困難な場合が多いです。


HOHNERの一部のモデルではベースメカニックが2本のネジを外すだけで
2分割に取り外せるのでストラップの交換も楽にできます。
HOHNERの、特に古いモデルでは独自の機構を持った楽器が多いです。
中国製の楽器では一つの塊でベースメカニックが外せる物が多いです。
イタリア製の物はボタンを一つずつ抜いて分解して行く必要がありますが
その分、ボタンを押した時の感触は素晴らしく、耐久性も優れています。


こちらは右手側の内部ですが、リードは取り外してあります。
音色切り替えの機構も独自の構造という事がすぐに分かります。
殆どの楽器では切り替えのための機構は楽器の外にありますが
この楽器では内部にあり、外にあるのはスイッチのみです。


スイッチに繋がる軸が本体を貫通しており、空気が漏れにくいように
フェルトのブッシュが付けてあります。
このための貫通孔がこの楽器の場合7個もあるので空気漏れが心配です。
スイッチ動作で軸が穴に対して並行に大きく動くので摩擦抵抗も大きそうです。
イタリアの楽器ならMMLの場合、貫通孔は3つですし、
穴に対して軸は僅かな回転運動なので摩擦も少ないです。
このようなスイッチごとに貫通孔がある構造は今の楽器では見られません。


HOHNERはチャレンジングなメーカーで、こんな形状の物を作った事もあったようです。
見た目には面白いですが弾き辛そうです。


さらには、こんな形状の物もありました。
実はこれ、今になってこのフォルムが復活しています。
HOHNERの小型楽器で、どちらかというと子供さん向けの物のようです。
輸入代理店のモリダイラ楽器のサイトで見られます。

一度は消えた形状がなぜ復活したのか分かりませんが
手が短い子供さんが楽に弾けるようにという意図のデザインのようです。

他にもHOHNERは全て金属ボディーの楽器や特殊な鍵盤支持機構の物、
レバー操作で蛇腹をロックする機構、ピンを用いないで本体と蛇腹を繋ぐ構造等々、
色々な事を試してきた経緯がありますが今も続いている構造は少ないです。
アコーディオンが発明されて今に至るまで色々な試行がなされ、淘汰されて
今の構造に落ち着いてきていますので現在主流となっている機構、構造の物が
最良と思っています。


お預かりしている楽器は年代のわりにリードや、
劣化が問題になるロウ留めの状態は良好です。
それでも部分的にリードの錆が出ていました。
リードに貼ってある薄い革や樹脂製のリードバルブは殆ど問題ありません。
今では普通になっているリードバルブの樹脂化もHOHNERは早くから行っていました。
この楽器はその恩恵でリードバルブの劣化による問題は殆どありません。
同じ様に革以外の素材でリードバルブを試して後に劣化で問題が出ている
メーカーもありますが、これは年月が経たないと答えが出ないので難しいです。


ベースリードの方にも少し錆が出ています。
私の経験による知見ですが、HOHNERなどドイツ周辺のアコーディオンでは
イタリア製のリードよりも錆が出ている確率が高い場合が多いです。
近年の物は分かりませんが、とても古くない楽器で錆が出ている事もあります。
勿論、使用状況、保管状況の影響もあると思いますが
合金の組成による影響もあると考えています。
リードに錆がある場合、調律が安定しないので除去後に調律を行う必要があります。


右手ボタンの裏側の蓋を開けましたが、大きな埃の塊が出てきました。
やはり年月分のものが蓄積しています。
当店では調律を行う場合、楽器全体の清掃も行っています。
定期的な調律で音以外の部分も良い状態を保つことができます。

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