中国製アコーディオンの修理2022/05/14

先日、当店で販売する中国製アコーディオンの事を書きましたが、
今日は同じメーカーの日本向けOEM製品の中古を買われた方から
修理のご依頼がありました。





中国Goldencup のOEM品です。
整備済み中古という事で2万円台でネットオークションで購入したそうです。
中古アコーディオンを整備済みとして多数のアコーディオンを販売している
個人からの物と思われます。



問題の症状はベースボタンが戻らなくなったという事です。
この場合、音が出たままになる場合が多いですが
今回は音は出ていなくてボタンが戻らないという症状です。
大抵の場合、音が出ない時の方が問題が大きいです。



幸い今回は大きな問題ではありませんでした。
ボタンから伸びる金属の長い部品の先が受けている部品から抜けて
斜めになった状態です。



ボタンから伸びる金属部品の末端は、くし型の金属部品の隙間に
収まっており、小さなL字に突起が出ているので簡単には抜けない構造です。
これが抜けて外れた原因は部品を上から押さえている
人工皮革?のような部品が磨り減って隙間ができているからです。

矢印部分はボタンが戻らない部品が抜けた所ですが、左右の他の
部品の隙間より広くなっているのが分ります。
よく使う音は減りが早いという事と思います。
他のボタンの隙間も場所によって磨耗が進んでいます。

この磨耗以外にも金属部品にも磨耗が出ます。
中国製のベースメカニックは金属部品同士が擦れる構造のため、
頻繁に使うと金属が磨り減って隙間が増えて行きます。
イタリアの楽器ではこのような事が起きないような
全く違う構造や素材になっています。



矢印部分は例の合成皮革のような部品です。
金属の板とサンドイッチ状になって取り付けられています。



修理の為にこの部分の部品を分解しました。
部品の摩擦で擦り減って出た粉が溜まっています。
今回は位置をずらす事で対応しましたが頻繁に使うと同じ事が起きます。
同時に金属部品も減って行きますので酷使すると
ボタンのガタツキが増えて操作感がとても悪くなってきます。

中国製ではベースや鍵盤など可動部分で磨耗による寿命があります。
当店では中国製アコーディオンはお試し用という位置付けで
長期の使用はできない物と考えています。
沢山練習した人ほど寿命は短くなるので
楽器がダメになってきた人はステップアップの時が来たという事で
喜んでよいと思います。
その頃には中国楽器も十分に元が取れたでしょう。

今回の楽器は34鍵盤の物ですが中国製ではボタン式や
41鍵盤のダブルチャンバーのような上位機種でも
34鍵盤と同様の構造でできているので耐久性の問題があります。
なので先を見越して上位機種を購入するという方法はお勧めしません。
長く使う事を考慮するならヨーロッパの楽器です。



この楽器は整備済みという事ですが、全くそういう感じはありません。
リードバルブに反りがありますし、リードの調整もできていません。
当然、調律も酷い状態です。



高音部のリードも同じようにダメな状態です。
発音が悪いですし、リードバルブの反りの為に雑音が出ます。
リードバルブの交換、調整を行い、全体の調律をすれば
楽器として使えるようになりますが、
そこまで費用をかけるだけの価値が残っていない楽器という判断で
今回はベースボタンを修理して取り敢えず使えるようにして
作業を完了しました。



不思議なことにベースストラップだけは新品のような感じです。
これをもって整備済みとして販売する手口なのでしょうか?
幾ら2万円台といっても使えない物に費用をかけるのは無駄です。
オークションで複数の中古アコーディオンを販売するようなところから
楽器を買っても良い事は一つもありません。


コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
迷惑書込み対策です。
下欄に楽器の名前をカタカナ(全角)で入力下さい。
当店は何の専門店でしょうか?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://accordion.asablo.jp/blog/2022/05/14/9503604/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。