ボディー割れ修理22022/07/10

先日、当店でご購入いただいた楽器の調律を承りましたが
鍵盤付け根部分のボディーが割れている事が分り、
その部分の修理を開始したという事を書きました。

あれから修理、調律を進めて本日、完了しました。


割れてしまった部分ですが修理して隙間が見えなくなりました。
白や赤などのセルロイド張りのボディーは不規則な模様が入っているので
傷や修復の跡が目立たないのが良いところです。
一般的な黒の場合は本体割れを修理しただけではそれなりに目だってしまいます。



グリルカバーの変形も修正しました。
内蔵マイクの動作も問題ありませんでした。



この楽器は右手のスイッチの動きが悪かったので
鍵盤を外してスッキリしている今のうちに機構の分解清掃を行いました。
リードの下にある板(茶色)を外すと下にスライドする梯子状の薄い板があります。
この隙間はとても狭く、異物が入ると動きが悪くなります。



音の切り替えに関わる部品を全て外して清掃しました。
元通りに戻せば動きが軽くなる筈です。



音の切り替え機構の問題はなくなりました。
本体割れも修理できたので鍵盤を戻して行きます。



鍵盤を全て戻し、スイッチを取り付けて修理完了です。



今度はベース側です。
リードの木枠を外したところですが、音の切り替えスイッチを動かしてみると
完全にオープンにならない部分があります。
先ほど、右手で分解清掃した梯子状の板と同じ部品ですが、
きちんと所定の位置で停止していないために全開になっていません。
この状態ではリードへの空気の出入りが制限され、発音が弱くなったり
ピッチの低下が起きますので修理が必要です。



シャッターが完全に開いていない原因は部品の変形です。
矢印部分の金属部品ですが本来は手前にある部品のように
垂直になっていなければなりません。
ですが、部品が曲がって斜めに傾いています。
このためにシャッターの位置がずれています。

部品を修正すれば直りますが、この部分が曲がる原因は
切り替えスイッチを2つ以上、同時に強く押す事で起きます。
そんな事を意図的にする人はいませんが、ベースのスイッチは
本体の表面に飛び出ている形状なので、ソフトケースに入れている状態などで
どこかにぶつけたり、何かが当たったりするとスイッチを2つ以上同時に
強く押される場合があります。
或いは、置いてある楽器を倒してスイッチが床に押される事もあります。

ボディーの割れやグリルカバーの変形など、楽器移動時などの扱いに
問題があるように感じます。
重さがある楽器なので移動する時や置く時は極力、ゆっくりと行う事です。
アコーディオンは重たくて塊感がある楽器なので何となく丈夫な印象がありますが
実際には中身の空間が広い薄い木の箱です。
重いのは金属部品が中に沢山あるからなので
中の空間が詰まっている訳ではありません。
ボーリングの球のような感じではないという事ですね。



本体の修理が完了し、リードの調整など発音に関わる部分の修正を行い、
最後に全体の調律を行って全ての作業が完了しました。
鍵盤を上からみても高さが同じになりました。



これは請求書ですが、今回は全体の調律に加えてボディーの割れなどの
不具合がみつかり修理費が初期の見積りより多くなりました。
この楽器は当店で新品でご購入いただいた物で、すでに10年経っています。
それでも調律や修理費用は標準費用から3割引きになります。
今回のように大掛かりな修理が必要になった場合は大きなメリットがあります。
改造や交換部品が必要になる場合は適用外ですが
修理や調律の費用が抑えられますので維持費が安く済みます。
この割引きに期限はありません。
当店がなくなるまでは..