古いEXCELSIORの整備 ― 2023/12/04
製造から50年程度経過しているEXCELSIORの整備を承りました。
機種は911ですが、珍しいMusette仕様(MMML)です。
古い物なので、それなりに多くの作業が必要となりました。
古い楽器ですが、幸いリードを留めているロウは問題なさそうです。
リードに貼ってある革製のリードバルブも何とか使えそうです。
一般的には、50年程度で革製のリードバルブは総替えします。
リードを留めているロウも50年程度で劣化が問題になってきます。
なので、アコーディオンの最初の寿命は50年程度です。
劣化部分を全て修理すれば、更に何十年と使って行けますが、
修理費用が高額になるので、判断が難しくなります。
そのような理由で、40年を超えた中古は使える残存期間が短いです。
整備済みで販売されている物でも、リードのロウや蛇腹、
バルブのフェルトや革まで交換はされていませんので、
古い楽器は良い状態で長くは使って行けません。
さて、上の画像は一見、何の問題もないように見えますが
小さな問題があります。
何が問題か分かるでしょうか?
答えは、上の画像の通り、リードバルブに付いている
金属製のバネが2枚重なっている事です。
これは見ただけでは簡単には分かりません。
詳細に全てのリードを点検していかないと気付く事はできませんが、
調律前に行うリードの修正作業で見つける事ができました。
言うまでもなく、これは製造時からの問題です。
人が作業する事なので、こういう事もあります。
こちらは経年による問題です。
リードに錆が出ています。
幸い錆の程度は軽く、錆びている箇所も多くはありませんでした。
リードに錆があると調律が安定しないので、錆がある場合は
楽器として使って行く事ができない程の大きな問題です。
進行度合いによっては修理費用がとても大きくなります。
また、楽器の保管状況や使用環境によっては
比較的新しい楽器でも起きる事があるので注意が必要です。
錆があっても普通に音は出るので、オークションなどの中古楽器は
常に錆リスクがあります。
錆があれば修理費用が高額になりますし、
修理しなければ楽器として使う事ができません。
返品もできないので、全くのムダになります。
オークションと言ってもタダではないので、高額な博打ですね。
ベース側のレジスタースイッチを操作した時の感触に
引っ掛かりがあり気になるので点検をしました。
その結果、動きに問題があるのはスイッチ機構ではなく、
リードの下にあるシャッター機構のうち、
一番高い音のリードの列に問題がある事が分かりました。
上の画像の矢印部分を動かすと硬い感じの引っ掛かりがあります。
更に調べてみると、リードの木枠を固定する金具のネジの先端が
シャッター機構の上に突き出ていて、これが干渉していました。
矢印部分が突き出ているネジの先端です。
この位置では先端は機構と接触していません。
シャッター機構を動かして行くと、高くなっている部分が
ネジの先端に当たる所があります。
このような場合、単にスイッチの感触が悪いというだけではなく、
シャッターが全開にならなかったり、全閉にならなかったりで、
音にも問題が出ていた筈です。
リードの木枠を固定する金具を外しました。
左の皿ネジが問題のネジです。
右の鍋ネジは他の金具に付いている物で、こちらがオリジナルでしょう。
恐らく、オリジナルのネジが回し過ぎで効かなくなった為、
別のネジに交換したのだと思いますが、長過ぎるので
直下にある機構と干渉したのでしょう。
何も考えずに修理すると、こんなことになります。
修理後のチェックでも気づけなかったのだと思いますが、
スイッチの感触が悪くなった事は気にならなかったのか??
と思います。
そもそも、皿ネジを使う場所ではありません。
楽器の修理をしていると色々な事に遭遇して面白いです。
面白がってはいけない事なのだと思いますが..
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