小型ボタン式入荷2023/11/03

イタリアから新しい楽器が届きました。
MORESHIという老舗メーカーの物で、小型のボタン式です。
以前にも同じ機種の黒が入荷しています。


右手37音、96ベースなので中型サイズの鍵盤式と同じ音域です。
リードセットはMMLです。
この仕様であれば殆どの事はできますが、必要最小という部分もあるので
大きさ、重さはとても小さくできています。


ボタンはC配列で5段あります。
MMLなのでスイッチは5個あれば足りますが、この楽器には7個あります。


ベースボタンは殆ど困る事がない音域の96。
スイッチは3つあります。
蛇腹の内側は赤です。


イタリア製の楽器なのでイタリア製のリードが入っています。
voci armocicheというメーカーの物で、
リードプレートにちゃんと刻印が入っています。


ベースリードの方にはリードメーカーを証明する為の
ホログラムのステッカーが貼ってあります。
アコーディオンメーカーを気にする人は多いと思いますが、
それ以上にリードメーカーを気にして欲しいと思います。


重さは実測で8.2kgでした。
34鍵盤並みの重さで、大きさはそれ以下で、音域は37鍵盤と同等です。
無駄に音域の多い楽器を使っても重くて苦労するだけです。
目的に合った楽器を選択する事で費用も苦労も抑えられます。

Accordina マイナーチェンジ2023/06/30

フランス Marcel Dreux からアコーディナが届きました。
在庫品として注文していた物です。


金属製の模様切り抜き外装、横向きのマウスピース、白黒ボタンという、
Marcel Dreuxの最も標準的なモデルです。
これは表面が艶消しの仕様ですが、ピカピカに磨いた物もできます。
その他、外側が木でできた物や、金属でも穴の空いていない物など
多数のモデルがあります。


今回届いた楽器は今までと少し違う部分があります。
まずは外観ですが、ボタンの下の部分の造形が以前と違います。
以前はボタン式アコーディオンのような階段状でしたが、
新しい物は高さの違う筒状になっています。
少し有機的なデザインになった感じがします。
私は以前の方が好みですが、実際に殆ど見えない部分なので
特に問題はないでしょう。
操作感などは何も変わりません。


一番変わった部分はこれです。
以前はリードの固定は溶けたロウで接着していました。
鍵盤式のアコーディオンと同じような方法です。
新しい物はネジで留めてあります。
紫色のアルマイト処理された軽量なネジでガッチリ留まっています。
リードの根本部分だけ隙間を埋める為でしょうか、
特殊な接着剤のような物でシールされています。

リードがネジ留めの構造は、一番最初に考案されたアコーディナ(Borel)と
同じ方法です。
フレンチタイプのボタン式アコーディオンもロウを使わずに
釘やネジでリードを固定してあり、独特の音を作っていますが、
今回の固定方法の変更で音質が少し変わったかも知れません。
私にはハッキリと感知できませんが、2種類を交互に比較したら
分かるかも知れません。


もう一つ、外観の変更があります。
楽器裏側の樹脂製パネルにMarcel Dreuxのm.dマークが付きました。
以上が変更点です。
ご来店いただければ実際の楽器を見たり、試す事ができます。


高級中古22023/06/17

高級機種の中古が2台入荷しました。
これはもう一台の方です。


イタリアの今は無きDallapeです。
この楽器は当時Dallapeの輸入をしていたトンボ楽器から正規で入った物です。
イタリアでは「ダッラペ」と発音しますが、日本のカタログには「ダラッペ」と
表記てあったので、日本ではダラッペで通っています。
当時、アコーディオンを始めようとしていた私は、カタログを見てそういうメーカーが
ある事を知りましたが、三河弁の「だらー」と、茨木や福島の「~っぺ」が混ざったような
奇妙な名前ですぐに覚えました。
と、同時に記載されていた価格がとても高額で驚いたのを覚えています。
この楽器はその頃、20~30年程度以前の物と思います。


41鍵盤、HMML、MLチャンバー、120ベースのフルスペックです。
鍵盤のような大きなスイッチと、グリルに並んだラインストーンが特徴の外観です。
先のCavagnoloと同じで、新品かと思うような綺麗な外観を保っています。


ベース側にはパールホワイトのベースボタン、7つのスイッチがあります。
スイッチの一つに他にはない選択があります。
この楽器はベースリードが5列あり、4オクターブの音域があります。
このうち、低音の2列はコードボタンを押した時は鳴らない音です。
低過ぎて音が濁る事と、3和音で5列鳴ると15のリードが鳴ってうるさくなるからです。
ベースのボタンを押した時はスイッチで選択されているリードが全て鳴ります。
例えば、マスターを押していれば5列全部鳴ります。
一般的なスイッチの組み合わせでは、コードボタンを押した時に音が必ず出る
必要があるので、最高音から3列の内、いずれかは必ず選択するようになっています。
この楽器のスイッチの一つは、最低音の1列のみ選択する物があります。
この場合、最低音列のみなので、コードボタンを押しても音は出ません。
ベースボタンを押すと最も低い音域の単音が出ます。
このような楽器は今まで見た事がありません。
アコーディオンが持つ一番低い音を1オクターブだけですが
単独で鳴らせるという機能はどんな時に使うか分かりませんが
クラシックなどでは使えそうな機能です。
このスイッチは過去に輸入された同じ機種のDallapeに共通の物ではなく、
以前に見た同機種にはありませんでした。
まあ、スイッチの組み換えを行えばどんな楽器でも付加する事もできますが..


右手リードです。
チャンバーがあるので、90度向きの違う木枠が付いています。
リードは勿論ハンドメイドです。
この楽器も内部の状態がとても良く、錆やカビは皆無、
リードバルブの反りもありません。
内外共に新品のような極上の中古です。
この画像は買い取りしてすぐに開けた時のもので、
清掃や手直しなど全くしていない状態です。


ベース側のリードも全く問題なしです。
勿論、新品の時からあるリードの調整不足や経年による調律ズレはある筈ですが
そういう部分は販売前に全て修正します。


重さは実測で12.4kgでした。
この頃の同じ仕様の楽器としては普通ですが、近年の機種と比べると少し重いです。
実際、問題になるような重さではありません。
重さは楽器としての性能に関わるので軽ければ良いというものではありません。

今はメーカーもなくなり、世界中に残っている楽器のみです。
Dallapeの音はRolandのV-Accordionのプリセット音として
実際のDallapeをサンプリングした物が使われています。
他のメーカーのアコーディオンの音は採用されていませんので、
それくらい、貴重な楽器という事なのでしょう。


高級中古12023/06/17

高級機種の中古が入荷しました。


フランス Cavagnolo の鍵盤式です。
フランスはボタン式がとても多く、Cavagnoloも殆どの楽器はボタン式ですが、
鍵盤式も生産されていました。
この楽器は当日、VICTORIAの輸入販売をしていたビクトリアジャパンから
正規に入った物です。
20~30年以前の物と思いますが、恐ろしく綺麗な中古です。

Cavagnoloの鍵盤式は、フランスで作成された物と、イタリアのアコーディオンメーカーで
委託生産された物がありますが、この楽器は恐らくフランス製です。
フランス製の外観の特徴として、蛇腹留めが付いていない事と、
ベースストラップの調整ダイアルが下面に付いている事があります。
Cavagnoloで現在も鍵盤式が作られている(販売されている)かは不明です。


41鍵盤、MMML、Lチャンバーです。
同じ時期にチャンバー無しの物も輸入されていましたが、これはLチャンバーです。
シングルチャンバーなので楽器の厚みが大きくなっています。
外観は新品かと思う程に綺麗な状態です。


ベースボタンはフランスのボタン式と同じようにキノコ型です。
画像では分かりにくいですがパールタイプの白です。
ボタンの背面が階段状になっているのもフランス式の特徴です。
鍵盤式のCavagnoloは、イタリア製アコーディオンのような一般的なベースボタンの
形状の物もありますが、そういう物はイタリアで委託生産されていた物です。
ボタンはキノコ型ですが、2列ベース、4列コードになっています。
フランスのボタン式では3列ベース、3列コードの物もよくあります。

蛇腹の中は赤です。
画像では分かりにくいですが、ワインレッドのサテン生地で、
メタリックな艶感があります。


外観だけではなく、内部の状態も極上です。
右手側のリードです。
チャンバーがあるので、リードの向きが90度違っている物があります。
納品してそのままの状態ですが、目立った汚れや埃はなく、
リードの錆は皆無で、リードバルブの反りも殆どありません。


Cavagnoloの鍵盤式は独特な音色に特徴があります。
音色はフレンチタイプのボタン式のようなシャープで澄んだ音です。
この音はリードが木枠に釘留めされている事によるものです。
一般的なアコーディオンはロウで接着されています。
Cavagnoloの特徴としては、釘だけではなく、ネジも併用されていますが、
この楽器でも確認できます。
リードはハンドメイドが付いています。
以前見た楽器ではハンドメイドタイプでしたが、
チャンバーモデルにはハンドメイドが付いているのかも知れません。


ベースリードです。
こちらも大変綺麗な状態です。
低音の大きなリードバルブにも反りが出ていません。
Cavagnoloの鍵盤式のベースの特徴として、最低音がEである事があります。
この楽器もEが最低音になっていて重厚な低音が出ます。
一般的なイタリアの楽器ではAかGが最低音です。


重さは実測で12.6kgでした。
41鍵盤の楽器としては少し重いですが、シングルチャンバーで
本体が厚い事が影響しているかも知れません。
それでも以前のチャンバー楽器では13kgも珍しくなかったので
慣れれば問題なく使える重さでしょう。

外観も内部も大変良い状態の希少な高級楽器です。
当時はとても高価な楽器でしたが中古ならもう少し現実的になります。


フランス製鍵盤アコーディオン2023/05/29

フランス Maugeinから発注していたアコーディオンが届きました。
フランス製では珍しい鍵盤式です。


オレンジ色がとても鮮やかな鍵盤式です。
この楽器は在庫ではなく、お客様からの注文で作成した物です。
色やデザインなど細部に渡り打合せを繰り返して作成した、こだわりの楽器です。
そして、Maugeinもこちらの要求通りにきちんと作成してくれました。
ヨーロッパのメーカーでは、注文通り、というのがとても難しい部分があります。
特に外観に関しては日本人が考えている程、厳密ではないので
発注する時はとても気を遣います。
ですが、今回は100点満点です!


41鍵盤、MMML、120ベースという仕様です。
Maugeinで生産されている楽器は殆どボタン式ですが、鍵盤式も作成可能です。
恐らく年間に数台あるかないか、という程度と思います。

ボディーカラーは鮮やかなオレンジ色です。
この色はフランスのルノーのCLIO(現行モデル)という車の
orange valenchiaという色で塗装してもらいました。
CLIOは日本ではルーテシアという名前で販売されている車です。
単に車の色で塗っただけではなく、お客様からのリクエストでラメも入っています。
Maugeinは全て塗装仕上げなので色を変えても価格は変わりません。
イタリア製などの楽器はセルロイド張りの物が多く、
塗装で仕上げた場合はオプション扱いになり価格が上がります。


メーカーロゴは濃紺のラメ色で塗装してあります。
これもお客様からのご依頼です。
このメーカーロゴは現行のMaugeinでは新しいデザインに変わっていますが
特別に旧字体で作成してもらいました。
同じく、グリルカバーも旧デザインのメッキ仕上げにしています。


右手のスイッチもメーカーロゴと同じ濃紺のラメ入り塗装。
鍵盤は特に指定しませんでしたがパール鍵盤が付いてきました。


ベースボタンはパールの白で、スイッチは2つから3つに変えています。
ボタンはフランスなのでキノコ型で、ベース3列、コード3列の仕様です。
これは2列ベース、4列コードも作成可能です。
細かい部分ですが、ベースストラップは紺色にしてあります。
そして、ボディーカラーだけではなく、注目は蛇腹内のデザインです。


沢山ある生地から柄を選んで発注しましたが、
カラフルな花柄で、文字通り華やかな外観になりました。
蛇腹の山折り部分は白に指定しました。
この部分も色を選択できます。
Maugeinは蛇腹を内製しているメーカーです。
殆どのアコーディオンメーカーは蛇腹は外注しています。
蛇腹を内製している為、色や柄を任意に選んでも価格は変わりません。


フランスのボタン式の楽器には胸当てがありません。
この楽器もそれにならっていますが、今回はお客様からのリクエストで
当店で胸当てを取り付けました。
上の画像は楽器が届いた時のものなので胸当ては付いていません。


41鍵盤、MMML、120ベースの楽器ですが、重さは実測で10.4kgと軽量です。
Maugeinは楽器の重さが軽い部分も特徴です。

これだけの外観の指定をしていますので、デザインを確定するまでの
お客様のやり取り、決まったデザインをメーカーに正確に伝える連絡など、
通常のオーダーより手間が掛かりますが、当店が受け取る、
外観のオーダーを行う事による割増し費用はありません。
これはMaugeinだけでなく、全てのメーカーでそうしています。
勿論、製造時にメーカーが必要とするオプション費用が出る事はあります。


フランスのボタン式がメインのメーカーですので、リードの取り付けは釘留めです。
これにより、フレンチボタンと同等のクリアな音が得られます。
フランスの鍵盤式と言えばCavagnoloが有名ですが、あの感じの音が出ます。
Cavagnoloはとても高価ですし、鍵盤式の場合、イタリアで作成された物も流通しています。
Maugeinは鍵盤式もボタン式も、フランス国内の本社だけで作成されています。


とても綺麗に作られた楽器ですが、内部を詳細に見ればエラーが存在します。
これは全てのメーカーで普通にある事ですので、当店ではお渡し前に
詳細な点検を行い、修正と調律を行っています。
この楽器も同様ですが、分かりやすいエラーとしてまずはコレ。

矢印部分に問題がありますが、何が問題か分かるでしょうか?
本体の外側にベルトを留める金具をネジ留めしていますが、
そのネジが本体内側に貫通しています。
ネジが貫通する事自体は問題ありませんが、その場所が悪いです。
ネジの先が見えている所は黒い部分ですが、この黒い部分は本体と蛇腹の
合わせ目になる部分で、黒い物は発泡ゴムでできたパッキンシールです。
パッキンは柔らかく伸縮性があるので合わせ目に沿って変形し、
空気漏れを防ぐ役割をしていますが、この部分に硬いネジの先が入っています。
この部分に硬い物が入ると合わせ目に物が入るので合わせ目に隙間ができます。
恐らく、楽器を完成させて本体と蛇腹が一体となっている状態で、
最後に金具をネジ留めしたので、メーカーはこの事態に気付いていません。
ネジの先端を切断し、パッキンシールの補修を行いました。
このような事例はイタリアの楽器でも時々見られます。
完成して最後に取り付ける、ベルト金具、蛇腹留め、胸当てなどのネジ留めが
問題の起きる箇所に入り込んでいる不具合が多いです。


これも分かりやすいエラーです。
リードが付いている木枠の一部に欠損があります。
リードとリードを分離している隔壁の位置が欠損しているので
空気が漏れて隣の音が鳴ったり、空気を余分に消費する不具合になります。
有名メーカーの新品でもこのようなエラーが幾つもあるので
販売前の点検、整備、調律は必須です。
このような分かりやすいものだけではなく、リードの発音の調整など
地味な作業ですが確実に音に影響する部分の修正を行っています。
最後に全体の調律を行いますが、この時にMMの波の速さを使う人の
好みに合わせるという大事な作業も行います。
実はこの楽器、調律後の最後の試奏で鍵盤の重さがどうしても気に入らなかったので、
鍵盤を全て外して調整する作業を行いました。(写真は撮り忘れました)

フランス製釘留めリードの華やかな外観と音色を持つ楽器ですが、
外観は世界に一つの物となりました。
フランスの楽器は少し高いですが、長く使って行く楽器ですので
お気に入りの1台を作ってみてはいかがでしょうか?
音や機能に関する不具合があっても全て修正し、
保証やその後の修理、調律割り引きもあるので安心して使って行けます。