日本製ビンテージ2020/01/25

とても古い日本製アコーディオンの修理を承りました。
ご依頼は昨年ですが大掛かりな修復で長期になるため、
なかなか開始できない状況でした。


自宅の蔵から出てきた物で、ご先祖様愛用の品だったと思われます。
外観の保存状態がかなり良いですが恐らく60~70年程度以前の物と思います。



トンボ楽器製のASIAというモデルのようですがおしゃれなデザインです。
セルロイドの色も綺麗に残っています。
さすが、古い立派な蔵から出てきただけのことはあります。
温度、湿度が保たれていたのでしょう。




恐らく純正のハードケースもとても綺麗な状態。



ハードケースの中に押してある印です。



楽器に付いていたベルトですが、木綿の布を巻いて補修してあります。
緑色の革なので元々付いていたオリジナルと思います。



ベースのバンドも木綿の布で綺麗に補修してあります。



ベルトの金具はピカピカです。
年代を考えると驚異的。
リードがスチール製ということで、当時は殆ど真鍮製だったと思いますので
かなりの高級品だったのではないかと思われます。



外観は綺麗ですが、鍵盤の高さはかなりのバラツキがあります。
鍵盤自体は酷い変色や変形もなくとても綺麗です。



鍵盤のカバーを外してみると..
この部分も大変綺麗です。
木でできたバルブは高さのある独特な形状です。
花魁の下駄?みたいな形ですね。

バルブにはフェルトは無く、皮だけ貼ってあるタイプで、
フェルトの虫食いによる鍵盤高さの乱れではありませんでした。
単にアームの変形だけと思います。
いずれにしてもバルブは一旦外して皮の交換が必要です。



外観は綺麗ですが内部は経年を感じさせます。
リードバルブは反りが盛大です。



リードには錆びが出ていて、リードを留めているロウも劣化でボロボロです。
そういえば、以前にNHKでドラマのエキストラに出た時に修理した
トンボの古いアコーディオンも同じような感じでした。
年代も同じ位と思います。



ベースリードです。
なんと、5列もあります。
そして1列は面倒な直付けです。



ベースリードもリードの錆び、ロウの劣化、リードバルブの劣化があります。
という訳で、内蔵している全てのリードは取り外して錆びを除去して
リードバルブを交換し、木枠にロウ留めするという作業が必須です。
当然、最後は全体の調律も必要になります。



ベースリードを取り外すと空気の出入りする穴とバルブ表面が見えます。
茶色の所はバルブの皮が付いていますが、白いところは皮がはがれて
下の白いフェルトが見えています。
ベースメカニックは全て取り出してバルブのフェルト、皮を交換し、
調整しながら戻して行く作業が必要です。



ベースの底板です。
シリアルNo.が書いてあります。
開口部の網は虫食いで破れています。



ベースメカニックは驚くほど綺麗な状態です。
埃も少なく状態は大変良いです。
これならバルブ材の交換は現代の楽器と同じ感じでできそうです。
と言っても、その作業自体が大変ですが..



ボディーの内側に印がありました。
「TODA」という印と「510」、カタカナの「ヤ」、四角に囲まれた「A」の4種類。
TODAは検査した人?
510はこの楽器の製造時の識別番号で、ヤとAは不明です。

さて、この楽器、修理すると、とても時間が掛かるので費用も相当になります。
一般的には修理しない選択になりますが、古くから家に伝わる物で
保存状態も良いので直す価値は十分にあります。
70年前の楽器の音を私も聴いてみたいです。

ちなみに、この楽器が出てきた古い蔵は改装して春にはカフェになるそうです。
オープン時に間に合わせて当時の楽器の音を蔵のカフェで響かせたいという
オーナー様のご希望です。
ご期待に沿えるよう頑張って修復させていただきます。

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