ベースメカニックの違い2020/07/08

新品で輸入した楽器のベースボタンの動きに問題があり修理しています。
新品なのに?と思う方もいらっしゃると思いますが、
殆どの、というより確実に、新品で仕入れた楽器には不具合があります。
最近は個人輸入で仕入れて調整もせずに販売している個人や業者もあります。
その上、保障もなく販売している事すらあります。
アコーディオンは全部の音が出ればヨシという物ではありません。


ベースメカニックの分解をしたところです。
手前にある物がベースメカで、上は残った楽器本体とバルブです。
とても簡単に、とても短時間でこの状態まで分解可能です。

先日、中古楽器の整備でバルブ材を交換する為にベースメカニックを分解した事を
書きましたが、この時もバルブを交換する為にベースメカを全て取り出しました。

でも、前回の場合と今回の場合では全く工程が異なります。
前回の楽器はイタリア製(EXCELSIOR)で、イタリア製などヨーロッパの
高級機の殆どが採用している方法でベース部分が作られています。
これは分解の為に120個のボタンを1つずつ取り外し、直行する棒状の部品24本を
一つずつ取り外し、それらを固定している部品数十点を一つずつ分解して取り出します。

元に戻す場合も同じように部品を1つずつ組み戻します。
組み立ての時はきちんと作動するように組み合わせて行くため、
分解よりもちょっと大変になります。
沢山ある部品を入れ替えてしまったり、場所や向きを間違えてはいけませんし、
1ミリ以下の細かい位置関係まで元と同じようにして行く必要があります。
前回のようにバルブの交換をした場合は高さが変わりますので、
一つ一つ、調整をしながら組み戻すという、とーっても時間の掛かる作業になります。


今回の楽器は30万円台の比較的低価格な楽器ですが、
ベースメカニックはネジ2本外すだけで全てごっそり取り出せます。
これだけでベースのバルブまで触る事ができる状態に分解可能です。
時間にしたら1分程度。
同じアコーディオンのベースの分解でも全く使う時間や難易度が違います。
ネットで時々見かけるベースを分解している図は大抵この簡単な方式の物です。
或いは、ただ蓋ベース部分のを開けただけとか。
何となく凄いことをしているように見えるという感じでしょうか..
まあ、分解できても不必要に行う事は推奨しません。

簡単に分解できてメンテナンス性が良いやり方があるのに、
殆どのヨーロッパの高級機は何故、面倒な方法で組み立てられているのでしょうか?
それはボタンの操作感に優れ、作動音が小さく、耐久性が高いからです。
簡単に分解できる方式はトラブルの時に短時間で修理ができるメリットがありますが、
楽器を使う時には劣る部分もあるということです。
ボタンを押した時のざらついた感触、カシャカシャという雑音、
押し込む程に重くなって行くバネ荷重などがデメリットです。
この簡易な方式は中国製、ドイツや東欧の低価格な楽器、
古いイタリア Scandalliの低価格機種などに見られます。

高価な楽器は価格と引き換えに時間と手間の掛かる製造方法で作られ
演奏時の操作性、長期に渡って使える耐久性が与えられています。


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