預かり修理2020/10/17

プロ奏者の方からの修理を承りました。
普段は楽器を長く預かる事ができないのでライブの前などの短い時間に
問題解決の為だけの修理をさせていただいています。
今回は少し時間が取れるという事で楽器を預かることができました。
時間をかけて修理する事ができます。

黒鍵の2箇所が深くなっていて、押し切るとコツンと音が出ています。
鍵盤を外すと予想通り、鍵盤下のフェルトがなくなっていました。
画像の左2つはフェルトが無くなった該当箇所です。


鍵盤を全部外すと演奏時に下になる最高音の鍵盤下に
落ちたフェルトがありました。
この部分は埃も溜まる箇所ですのでこの機会に清掃します。


2つ落ちたという事は他の箇所も落ちる可能性が高まっています。
分解ついでに全てのフェルトを交換します。


短い時間しか取れないプロ奏者の場合、応急的な修理がされることがあります。
鍵盤を外すとセロハンテープで補修した箇所がありました。
恐らく空気漏れ対策と思いますが、テープは剥がして
きちんとバルブセッティングで空気漏れを抑えることにします。


取り外した白鍵です。
この楽器はチャンバーがあるので鍵盤の先は二股に分かれてバルブが2つ付きます。

注目ポイントは鍵盤の構造です。
白い樹脂の下は無垢木材の塊で、とても硬い木でできています。
木材の塊に軸を通す穴だけが空いています。
古い楽器に時々ある構造ですが、重くなる欠点はあるものの
耐久性や操作時のしっかり感があるのはこのタイプです。
激しい系のプロ奏者には向いている構造です。
鍵盤だけでなく、楽器の受け側にも厚い木のガイドが付いているのが分かると思います。
重量増は避けられませんが耐久性と剛性は得られます。


これは別の最近の楽器の鍵盤部分です。
軽量化と加工を簡単にする為、木材は少量で軽い物を使い
軸が通るところは金属の部品になっています。
軽量化できますが犠牲にする部分もあります。


鍵盤からバルブへ繋がるアームの二股部分ですが、
元は使っていないと思われる接着剤が入れてあります。
恐らく、何らかの問題があって対策してあると思うので
これはこのままにしておきます。


鍵盤のバルブ部分ですが、バルブとアームの取り付け部分も
接着剤で補強してあります。
本来の修理方法ではありませんが問題は出ていないのでこのままにします。

外した鍵盤を元に戻しながらバルブの当たりを調整して
空気漏れを減らすようにしていきました。
また鍵盤のレスポンスが良くなるように各部の清掃、調整もしました。
キレのある演奏は奏者と楽器の両方が良くないと実現しません。


鍵盤周りの問題が修正できたので、今度は以前から気になっていた右のレジスターです。
分解、清掃、修正を行い、確実な切り替えと、動作が軽くなるようにします。
演奏中に切り替える機会が多いプロの演奏ではとても重要なことです。

レジスターの問題はスイッチ周りに原因がある場合と、本体側にある事があります。
両方に問題がある場合もあります。
今回は本体側も分解、清掃、調整したので良い状態になっていると思います。


レジスター自体を楽器に留めているのは5本のネジです。
画像は楽器側のマウントですが、矢印のところにネジが入ります。


レジスターを固定しているネジを外しましたが、サイズがバラバラです。
問題が出ると都度、ネジを変えて修理しているためと思いますが、
問題があるネジもあります。
本来は全て同じサイズの物が付いていたものと思います。
今回は全て同じサイズの適正なネジに入れ替えてしっかりと固定しました。


レジスターを留めるネジが長過ぎて鍵盤のアームと干渉している痕跡が見つかりました。
赤い矢印はネジが入る部分で、黄色の矢印は鍵盤からバルブへ繋がるアームの
上部にネジの先端が当たってできた痕跡です。
鍵盤を押すとアームが上がってネジの先に当たっていたのでしょう。
修理をする場合は慎重に他の影響も考えて行う必要があります。
短い時間での修理ではゆっくりと観察できない時もあるので難しいところです。


レジスターの可動部分に付いている樹脂部品を外しました。
全部で20個ある物ですが、元々付いている物は透明で薄い物です。
上の10個は厚めの物に変わっていて、それぞれの厚みもばらついています。
これも問題が出る度に都度、修理して行った為と思います。
今回は元々付いている物に近い物と入れ替え、上の物は捨てました。


レジスター部分を組み上げました。
動作も軽く確実になり、固定もしっかりとして安心感が出ました。
今回は時間が取れたので色々と対策できましたが
それでもプロのパワープレイにどれだけ耐えられるか?
ちょっと不安ではあります。

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