ベースボタンの修復2021/02/13

興味本位でアコーディオンのベースメカニックを分解してしまい、
元に戻せなくなったという楽器の修理を承りました。
私も子供の時からの分解系ですので、気持ちはと~ても分かりますが、
アコーディオンのベース機構はとても複雑なので触らないことです。


届いた楽器のベース部分です。
ボタンや部品は丁寧に梱包されて届きましたが
ボタンの順番や位置はバラバラで全く分かりません。
因みに、ボタンの部品には位置を示す表示などは付いていません。


ベースボタン(コードボタン)には3箇所に金属の小さな突起が付けてあります。
4箇所ある決まった位置の3箇所のどこかに突起がありますが、
これはボタンによって色々変えてあります。
同じ物も複数あります。


こちらは楽器側のベース内部です。
細い針金状の部品が4列、狭い間隔に幾つも並んでいます。
ボタンの突起と楽器側の棒の部分が直交するように触れて
ボタンを押した時にこの細い棒が倒れてこれに連結する
バルブが開いて音が出ます。

ボタンの突起は4箇所しかないので1オクターブを構成する
12音の位置を決めている訳ではありません。
ボタンの突起と楽器側の棒の位置関係により決まった和音が出ますが
同じ突起位置を持つボタンは同じ和音を鳴らすボタンの数以上の数あるので
楽器側との位置によって同じ突起位置でも別の和音が出るという
難解なシステムになっています。


ボタンを支えている土台も取り外されていましたので、
まずはこれを戻すことから始めます。


ですが、それも簡単ではありません。
土台を留めている2箇所のネジ穴は楕円になっていて、
本体側と部品側で楕円の長径の方向が90度変えてあります。
つまり、上下左右、数ミリ程度、位置を変えられるということです。
外してしまうと元々の正確な位置が分からなくなってしまいます。
だから単に部品を戻してネジ留めして終わりという事にならないのです。
私なら分解する前に印を付けて元に戻す時に参考にしますが、
単にバラしてしまうと分からなくなってしまいます。
こういう状況はアコーディオン内部には幾つもあります。
特にリードブロックの位置やネジの締め付けは調律に影響しますので
絶対に分解しないでください。


ボタンの形やピンの位置、出てくる音を確認しながら少しずつ
ボタンを正しい位置に戻し、7th以外のボタンは戻せました。
この作業、実は2008年のイタリアでの実習中に経験しています。


さて、これは残った7thのボタンですが、これはちょっと珍しいです。
ピンが4箇所付いています。
現在の楽器では7thのうちの3音だけを鳴らすのでピンの数は3つです。
4本ある場合、7thの構成音全てを鳴らすということです。
この場合、問題になるのは音量や空気消費量が他より多くなる事や、
ボタンの戻りバネ圧が高くなる事、抜いてある音を利用して
複数和音ボタンを押して特殊な和音を得るという事ができないなどです。
その為、現在の楽器では7thやdimのボタンはピン3つの
3音構成になっています。
ただ、今回のようにバラバラになったボタンを戻す時は有難いですね。
4本ピンがあるという事はこの列は全て同じ部品という事なので。


無事にボタンが全て戻りました。


届いたボタンを戻していって最後に残ったのがこれ。
さて何の部品か?
この楽器はイタリア製ではないので見慣れない部品です。
最初から自分で分解した部品なら分かるのですが、
他人が分解した物は工程を見ていないのでこのような状況になります。
本体側を観察して行ってそれが入る場所を特定して事なきを得ました。
自分で分解していない物を元に戻すのは少し苦労があります。

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