バルブ材交換2022/06/05

34鍵盤のイタリア製アコーディオンの整備を承りました。
全体の調律以外に鍵盤のバルブ材の交換も行う事になりました。
バルブ材の交換時期は製造後40年程度からですがこの楽器は20年程度で
まだ状態も酷くはなかったので、まだ不要とお伝えしましたが
実施をご希望という事で行う事になりました。



鍵盤のバルブ材というのは鍵盤の先に付いていて鍵盤操作で開閉する
バルブの下に貼ってあるフェルトと革の事です。
上の画像の茶色のパーツがバルブでその下の白い部分がフェルト、
一番底の薄い茶色の部分が革です。

バルブ材の交換は難しい作業でうまく行わないと空気漏れや
鍵盤高さのバラつき、鍵盤深さが不適などのかえって悪くする時があります。
イタリアで習った時も苦労しました。
もう10年以上前の事なんですね..



まずはスイッチ、鍵盤の取り外しからです。
鍵盤を全て外すと埃が溜まっているので掃除を行います。



鍵盤の下になる部分やバルブ周りをスッキリと掃除しました。
細い金属の棒2本は鍵盤を串刺しにして留めている部品です。
黒鍵と白鍵で別れているので2本あります。



外した鍵盤の方も埃が付いているので一つずつ掃除をします。



バルブの裏にあるバルブ材です。
この面にも異物が入っています。
長年使うとこのような事になりますが、今日は交換するので
そのままバルブ材ごと外して捨てるだけです。



バルブを横から見た状態です。
経年でフェルトが潰れて斜めになっていますが、
製造時の取り付け、調整が悪い場合もこのようになります。
バルブの底面の圧が均一でないと空気漏れしますので
斜めにならないようにする必要があります。
勿論、縦横両方向で水平にする必要があります。



バルブ材はバルブに接着されていますが無理やり剥がします。
接着がしっかりしていると剥がすのが大変ですが、
この楽器では比較的簡単に取れました。



バルブ材を全て取りました。
34鍵盤なので34個ですが、チャンバーのある楽器では
鍵盤数の2倍の数になります。
因みに、ベースの方にも24個の同じ様なバルブがあります。
ベースボタンの数と同じではなくて72ベースでも120ベースでも24個です。



鍵盤からバルブ本体を外しました。
バルブ材を交換する場合でもバルブを外します。
そのままバルブ材だけを交換してもうまくは行きません。
そういう楽器を時々見ますが..



全てのバルブを外しました。
これは再利用するので捨てません。
そして綺麗にする必要があります。



バルブは鍵盤から延びるアームの先にロウで接着されています。
リードを木枠に留めているロウと同じです。
上の画像はバルブに残ったロウを取り除いた残骸です。



バルブからロウを取りましたがまだロウやフェルトを貼っていた
接着剤が残っているので更に綺麗にします。



綺麗になったバルブです。
ここまでするのにかなりの時間が掛かります。
イタリアではバルブも新品にしますが簡単に手に入らないので
オリジナルを再利用する分だけ作業が増えます。
そして、まだ作業は続きます。



別で作成しておいたフェルトと革をバルブに貼り付けました。
フェルトは赤になってちょっとお洒落?
ここまで行ってバルブの準備が全て完了します。
後は楽器への組付けです。



最初の鍵盤から始めます。
位置、角度、鍵盤高さ、鍵盤深さの全てを調整する必要があります。
鍵盤の数だけ行うのでかなりの時間を要しますが、
これがチャンバーのある楽器のなるとバルブが倍になります。
しかも、調整にかかる時間、難易度は倍以上になります。
チャンバーの楽器が高額になる一因です。



バルブと鍵盤の位置が確定したら最後に専用のロウを溶かして
バルブと鍵盤のアームを接着します。
これは専用のロウで、リードを木枠に付けている物と同じです。
アコーディオンの形が付いていますが溶かしてしまいます。
ロウを自分で調整して作るような事をする人がいるようですが
接着性や硬さ、脆さに問題が出る事が予想されます。
仮に施工直後は良くても経年による問題がでる可能性もありますので
私はイタリアから専用の物を購入しています。



全てのバルブをロウで接着しました。
普段目に触れる場所ではありませんが綺麗に仕上げる事も重要な作業です。
冒頭の画像と見比べてみて、今回は新品の時より綺麗にできたかな?と、
勝手に思っています。



鍵盤が戻ったので最後にスイッチを取り付けますが
一部の部品が経年劣化でひび割れています。



劣化した部品は劣化に強い素材へ交換してスイッチを戻しました。



これで鍵盤のバルブ材交換が完了です。
鍵盤を離した時の音が小さくなりました。

最近は動画を自分で撮ってネットへ上げたり、配信する人が増え、
マイクで取る機会が増えて楽器から出る小さな雑音を相談される事が
増えてきました。


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