フリーベースの修理2022/06/17

プロ奏者のフリーベースアコーディオンの定期点検、調律を承りました。
当店が開業する以前に購入されたボタン式のフリーベース(コンバーター)です。
最近は数年毎に当店で点検、調律をさせていただいています。



調律以外に何か不具合があれば併せて修理してください..という事で
ひと通りの点検をしてみましたが、1つ不具合を見つけてしまいました。
フリーベース時の1音で何故かボタンが半分程度しか押せません。
音は出ていますが弱い感じです。



隣のボタンを同時に押してみると問題のあるボタンの
途中で止まる具合がよく分かります。
無理に押せば押し込めるような気がしますが、
何故か、それは止めておけ!と心の声がするのでやめておきます。



ボタンの先に繋がるフリーベースへの伝達部でもボタンの押し加減の差が出ています。
左の黄矢印が正常な方で、赤い矢印はボタンが半分しか押せない方です。
押せない方はその先への伝達も半分の量です。



リードを外してバルブの開き具合を見ると差は明らかで、
問題のある方は正常な方のボタンのバルブ開度の半分以下しか開いていません。
見つけてしまった以上、放置できないので原因究明と修理する策を考えます。



原因を明らかにするにも、修理をするにも、複雑な機構の裏を見ないと分りません。
ただでさえ複雑なアコーディオンのベース機構ですが
フリーベースの場合は更に超複雑機構がバルブの上に乗っています。
以前にフリーベースを全部バラして修理した事が数回ありますが
とても大変で時間の掛かる作業になりました。

プロの楽器なので時間があまり取れない事と、
費用もできるだけ抑えたいので全部バラシはできるだけ避けたいところです。



問題のあるバルブは一番端にある事が分っているので、
その真裏には何があるか?という事で確認してみました。
赤矢印の所に暗く写っている棒がバルブへ繋がるシャフトです。
その先に長方形のバルブがありますがそのうえにベースメカニックがあるので見えません。
バルブの大体の位置を赤い線で書いてみるとこんな感じです。

なんとか分解せずに原因と修理方法を考えていると、
ふと、バルブの上にあるスイッチを留めているネジ2つが気になりました。
もしや、ネジが長過ぎてバルブが上がるとネジの先が当たっているのでは?
と、想像しました。



狭い隙間で目視できないのでデンタルミラーで何とか確認してみます。
すると尖った物がバルブの上にあり、開こうとするバルブに当たっている感じがします。
やった!解決! と思ってネジ2本を外してみましたが、
まだバルブは全開になりません。
もう一度ミラーで見てみるとネジは無いのにまだ尖った物がバルブの上にあります。
シルエットで見える大きさと形から、爪楊枝の先?と思いました。

そして、また仮説を想像。
ネジ穴が壊れてスイッチを留めるネジが止まらなくなり、
ネジを利かせる為に爪楊枝を穴に入れて狭めてネジを留めた..
とすれば、爪楊枝は接着剤で留まっている..
ならば、相手はアルミニウムなので接着もそんなに強くない..

という訳で、ツララのようにバルブ上に降りている物体を
狭い隙間から何とか倒すようにして除去を試みました。
試す事数十分、ポリッと何かが取れました。



ベース本体を持って逆さまにして振ると小さな物が出てきました。
それは想像通り、爪楊枝の先でした。
接着剤らしき物も付いています。

この状態でボタンを押すと、押し切れました!!
バルブも全開。
補修材が爪楊枝ならこの処置は日本で行われたものでしょうか?



ネジは念のため、元の物より短い物に交換し、
ネジ穴を修復して戻しました。



ネジを元に戻してスイッチの取り付け完了です。



ボタンは正常に押す事ができます。



バルブもきちんと開いています。
無事に修理が完了しました。
ベースメカニックの分解を回避できて良かったです。

もし、最初の段階でボタンを無理に押し込んでいたら..
爪楊枝の先がバルブに当たってバルブとシャフトの接着が外れて
バルブが取れたり、シャフトが曲がってバルブの面が本体と並行でなくなり
空気漏れが出たり..という状態になったかも知れません。
そうなれば確実にベースメカニックの全バラです。
何かが押せなくなった時、けして無理に押し込まない事です。


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