高温にご注意2022/10/11

当店で販売したイタリア製アコーディオンの調律を承りました。



調律前のリードの点検で異常を発見しました。
一部のリードの根元のロウにひび割れと隙間があります。



内側から光を通して見ると隙間から光が漏れている事が分るので
大きな隙間ができていることが分ります。
よく見ると、全体に先の方にズレている感じです。
ロウで接着されているリードのロウが溶けて
リードが前にズレて隙間ができたと推測できます。
これだけ隙間があると内部空気漏れがあるので
音が弱くなったり、空気の消費が多くなるでしょう。



ロウが溶けたようなので他にロウが使われている所をチェックしました。
右手のバルブはロウで接着されている楽器が多いですが
この楽器もそのような構造です。
バルブの並行が乱れている感じがします。
イタリア製の新品であればこんな事はありません。
ロウの部分も綺麗な仕上げになっていませんので、
全体が高温に晒されてロウが溶けたという事でしょう。



詳細に調べるとバルブの取り付けがズレた事で
鍵盤を押すと他のバルブのアームにバルブが干渉している所がありました。



鍵盤を離すとバルブが当たっていたアームには傷がありました。
ズレが出てからそれなりに長い期間使われていたのでしょう。



大きく傾いたバルブを戻しました。
空気漏れは出ていないようです。



バルブの位置を直したので、アームと接触しなくなりました。
リードの取り付けも修理して問題はなくなりました。

ロウは50℃以上になると柔らかくなってきますので、
この楽器は50℃以上の環境に暫く置かれていたと思います。
不思議なのは所有者に心当たりがない事です。
50℃以上というと一般家庭の室内であれば真夏のエアコン無しでも
そこまでは行かないので、車の中に置いておいたとか、
暖房器具の近くに放置したなどが原因でしょうか?

今回は大事には至りませんでしたが、場合によってはリードが木枠から
脱落したり、溶けた蝋がリードを汚染する事もあります。
そうなると修理費用が大きくなりますので、
アコーディオンは高温環境に置かないように気をつけましょう。