フレンチボタンの調律2022/10/26

フレンチタイプのボタン式アコーディオンの調律を承りました。
特に故障などはなく、経年による調律です。



クロマチックボタン式アコーディオンは2つのタイプがあります。
1つはインターナショナルで、もう一つはフレンチです。
インターナショナルは鍵盤式の右手をボタンに変えただけという感じなので
それ以外の部分の構造や音色は鍵盤式と大体同じです。

一方、フレンチは独特な構造と音色を持っています。
主な特徴は、右のスイッチ(レジスター)が背面にある、
ベースボタンがキノコ型で周囲の板が階段状である、
リードが木枠に釘で留めてある、等々..
上の画像は特徴の一つである、ベースボタンの部分です。

音にも特徴があり、その理由の殆どはリードが釘で留めてある事に由来します。
1つ前のブログ記事で書いた鍵盤式のCavagnoloは、
鍵盤式でありながらリードはフレンチボタンと同じ釘留めで、
特徴のある音を作り出している希少な楽器です。



今回は調律という事で、内部の清掃、リードの調整、調律という手順で進めます。
ところで、この楽器は外観はフレンチの特徴を持っているので
見るからにフレンチなのですが、リードの取り付けはロウ留めなので
音色に関しては鍵盤式とあまり変わりません。
右47音、MM、80ベースで、50万円前後で販売されていますが
言ってみれば、見た目だけフレンチという楽器です。
リードは低コストな標準リードで、内容を考えると比較的高い楽器と言えます。
ですが、ボタン式としては低価格なので持っている人は多いと思います。

アコーディオンを買う時、価格だけではなく、内容が伴っているか?という部分を
きちんと考えなければ後で後悔する事になります。
見た目やブランド、値引き等に左右されない目(耳)を持たなければいけません。
値引きは定価が高く設定してあるだけの事ですので「お得!」と思ったら負けです。
通販のCMみたいですね。
当店では輸入時に掛かった費用と必要な利益を計算して都度、
楽器の価格を決めています。
なので表示価格からの値引きはありませんが、既に値引き済みとも言えます。
この方法がその時点での最小価格になるのでそのようにしています。

問題なのは、販売するところがきちんと楽器の仕様を説明していないところです。
この機種はフレンチボタンと思って購入している人が殆どと思いますが
内容はロウ留めリードなのでフレンチとは違う楽器です。
ロウ留めが悪いという事ではなく、知らされていない事が問題です。

そして、MMの波の速さも、いかにもフレンチという速い波に調整されれていて、
それしか選択できない、それがフレンチの特徴、という感じで販売されています。
クラシックな感じのフレンチなら速い波のMMですが、
モダンな感じであれば遅い波になります。
これは調律で変えられる部分ですが、販売時に選択はできない店が殆どです。
せめて調律で変えられるもの、という説明位はすべきと思います。
これに関してはフレンチボタンだけではなく、全てのアコーディオンで言える事です。
当店では、機種、価格、ブランド、新品、中古によらず、
全ての楽器はMMの波の速さを任意に調整してお渡ししています。



この機種はリードがロウ留め、標準リードである事に加えて、
調整不足が目立つという特徴があります。
リードの隙間の調整が不十分なため、発音しにくい音が沢山残っています。
日本で沢山出回っているので、何度も見てきた経験があります。

上の画像でもリードの隙間にバラつきがあるのが見てとれます。
今回は全体の調律を行いますので、その前に全てのリードの
発音の調整を行います。
これは調律の費用の中に含まれています。



その他、調律の前には発音に関する不具合などの修理も行います。
これはリードのロウ留めのロウの一部が欠損して穴があいているところです。
ロウを補充して埋めます。
フレンチなら本来はロウ無しで、釘留めなんですけどね..

リードの釘留めの事については下記の記事でも触れていますので
ご興味ある方は見てみてください。




これも小さな不具合です。
リードが付いている木枠の穴ですが、ここから空気が出入りしています。
穴の一部に接着剤が付いて少し狭くなっています。
実質、問題にならないレベルと思いますが、僅かな空気抵抗になりますし、
風切り音が出る事もありますので取り除きます。
アコーディオンは部品点数がとても多く、手作りで組み上げて行きますので
大きな問題にならないレベルの細かい不良部分が残っています。
そういう部分を取り除く事で、楽器本来の性能を引き出す事ができます。



ベースリードの方ですが、こちらもリードの隙間のバラつきが多いです。
素人が見てもわかるレベルです。
発音が遅れたり、大きな音を出そうとすると音が出なくなるなどの
不具合が出ますので、調律前に修正します。



ベースの1音だけ大きく調律がずれているところがありましたが、
リードが折れていました。
リードに使われる材料中に欠陥があったり、調律時の不適切な加工で傷ができると
使用にともなう金属疲労で折れる事があります。
問題がないリードではどんなに長く使っても金属疲労で折れる事はありません。
上の画像の折れている所の左2つ目は、他とリードの留め方やサイズが違うので
以前に折れて交換されたものと思います。

この、ベースに使っている一番低音のリード列ですが、
一般的にはリベット留めされている所がネジ留めです。
個人的には印象が悪い方法と感じています。

リードの調整が終わったら後は全体の調律を行って完了です。
その際、MMの波の速さはお客様のご希望に合わせて調整します。
全て完了すると、発音しやすくなりますし、音も整いますので
楽器が変わったように感じる人もいます。
新品で購入した楽器は調律を行うととても良くなる場合がありますので
一度、検討してみてはいかがでしょうか?


持ち込み楽器の修理2022/10/23

部分的な調律をしてほしいという事で楽器が持ち込まれました。
機種は、かつてCobaさんが使って日本でメジャーになった
鍵盤式のCavagnoloです。(MMMLタイプ)



調律希望の音は少ないので日帰り作業で預かりました。
作業を始めようと思ってスイッチを操作すると一番端の
スイッチの押し心地がおかしい事に気づきました。
カバーを外して点検すると、パッと見では異常が分からなかったので
分解が要るかな?と思いましたが..



異常のあるスイッチと反対側の端を見てすぐに原因が分かりました。
スイッチを固定している長い軸が抜けかけています。
面白いのは、軸が抜け出ているのは鍵盤の低音側なので
重力に逆らって動いている事です。
重力が掛かる方向には軸の先が曲げてあるので行かないのですが、
何故上に動くのか??



異常のあるスイッチの軸は抜けた状態なので横へずらすと、この通りです。
グリルカバーがある時はカバーに当たってズレませんが、
カバーを外した事で左右に傾くようになりました。
スイッチの端で僅かに軸が残っているので抜け落ちなかったようです。
演奏の本番中に外れたら大変な事になったでしょう。
修理は軸を戻して完了ですが、再発しないように処置しました。



長く調律していないと思いますので埃が堆積しています。
修理ついでに清掃しましたが、先のスイッチのトラブルや
埃の堆積など、長く使っていると色々な事が起きているので
定期的な調律を行うと安心です。
MMMの楽器は調律が大きくずらしてあるので多少のズレがでても気にならず、
長く調律していない方が多い傾向にあります。



このCavagnoloもそうですが、フレンチタイプのボタン式では
グリルカバーの固定に多数のネジを使っているので
ちょっとした点検でも分解に手間が掛かります。
一般的なアコーディオンなら指で回すネジ2本を緩めて終わりなので
1分以内に分解できますが、このタイプはそうは行きません。
ネジすら使っていない機種もあり、そういう物は秒で開きます。



グリルを留めているネジは9本でした。
フレンチタイプの楽器はベースボタンがキノコ型なのでベースを分解する時も
ボタントップを全て外す必要があるので大変です。


Claviettaの整備2022/10/18

1960年頃にイタリアで製造されていた鍵盤ハーモニカ、
クラビエッタの修理を承りました。


見た目は普通に鍵盤ハーモニカです。
製造していたのはオリジナルのアコーディナと同じなので
構造や部品が共通の部分も多いです。
外観は問題ありませんが、空気漏れがとても多く、
まともに使う事ができないような状態の楽器です。



空気室を分解しました。
クラビエッタや当時のアコーディナは吹き込みの後の空気の処理が
同じような構造になっています。
吹き込んだ空気は二重底になっている底の方を通って行きます。
上の画像の金色の部分は上下を分離している板です。
吹き口から入った空気は、この板の下の空間を最初に通ります。



二重底の下を通った空気は吹き口から一番離れた所の仕切り板の切れ目から
上の空間へ入って行きます。
上の空間の天井には鍵盤操作で開くバルブがあり、
バルブを抜けた空気は最後にリードを通って外に出ます。
なのでリードは一番外側の圧力がない空間に設置できます。
音が良く出てメンテナンスも容易です。
鍵盤ハーモニカではリードが先で最後がバルブなので
リードは本体内の空気室にあるので音がこもりますし、水が付きやすいです。
調律作業も大変になります。

クラビエッタへ吹き込んだ息は二重底の下の
冷えた空間を先に通る事で呼気中の水蒸気を凝縮水に変えて落とします。
バルブ以降のエリアで凝縮水ができにくいようにする凝った構造です。
当時のアコーディナも同じ構造を持っていますが、
現在のアコーディナでは省略されています。
二重底でも長時間吹くと内部が暖まって冷却効果が薄れるので
実際の効果がどの程度あるかは不明です。



鍵盤操作で開閉するバルブです。
形や構造、サイズまで当時のAccordinaとそっくりです。
このバルブはエンジンのバルブと似た構造をしており、
内圧でバルブが閉じる方向に力が掛かるので空気漏れしにくい構造になっています。
強く吹く程、バルブは閉まるように動きます。
現在の鍵盤ハーモニカでは殆どの場合、圧力が抜ける方へ動く構造なので
ある程度、鍵盤のバネを強くしないと空気漏れします。
あまり鍵盤のバネを軽くできない理由ですが、
空気の方向が演奏中に入れ替わるアコーディオンでも同じ事が言えます。



バルブは専用の特殊ネジで留められていますが、
僅か1.5ミリ程度の細いステンレスネジなので、少し無理をすると折れます。
このネジは鍵盤に繋がる長い物で、代わりの物はありませんし、
バルブのネジ内に折れた物が残り、それを抜くのが困難なので
どんな事があっても折りたくない部分です。
自分で分解してこの部分を折った楽器を今までに何度か見てきました。
年数が経っていて固着している時もあり、難しい作業になります。



今回の空気漏れの原因はバルブのゴム部品の劣化です。
バルブを全て外しました。
見ただけでは劣化が分かりにくいですが、
硬化と変形で役に立っていない状態です。



ネジ部分からバルブ材を外そうとすると簡単に割れ、この通りです。
薄いせんべいのように大変脆い状態です。



別で作っておいた新しいバルブ材と交換したところです。
もちろん現在では専用部品はありませんので手作りします。



古いバルブ材を全て取り外しました。



そして新しいバルブ材を取り付けました。
これを行うと手が痛くなります。



バルブを全て外したらバネで押さえられていた板がフリーになって
接着がダメになっている事が分かりました。
バルブを戻す前に本体の接着修理が必要です。
多分ですが、以前に接着修理をしたような跡があります。



空気漏れの主な原因はバルブですが、その他にもあります。
空気室の合わせ目に入っているパッキンシールも劣化して硬くなっているので
貼り替えします。



バルブを戻し、シールを貼り換えました。
バルブを戻すのはネジを締める作業なので、
外す時と同様、とても気を遣います。



空気漏れの原因はもう一つあります。
空気室の下にある凝縮水を抜くドレンバルブです。



ドレンバルブのバルブ材は革ですが、劣化していますので貼り換えます。



ドレンバルブの修理を行い、空気室を組み戻してバルブ周りの修理は完了です。
これで空気漏れは激減し、大きな音が出るようになりました。



本体の一部が破損しているので修理します。



後は全体の調律を行いますが、先だってリードの発音調整をします。
外さずに調整できるところもありますが、必要があればリードを外して調整します。
発音の調整などを行い、最後に調律を行います。



そして、調律完了!
これで楽器として普通に使える状態になりました。



今回、これで終わりではありません。
同じ物が複数あります。
Claviettaを愛用する方は壊れた時の為に予備を持っている事が多いです。
古くて手に入りにくい事や、プロ奏者が仕事で使う場合が多いためです。



2台目も全く同じ症状と内部状態です。
という訳で、同じ作業をもう一度おこないます。


30年目の車検2022/10/15

今日は土曜でmonte accordionは営業日ですが..


午前9時過ぎ、東名高速の豊田上郷SAにいます。
まずはタリーズで朝食。



先日、穴が空いた燃料タンクの修理を行ったバイクを車検に出す為に
名古屋へ向かう途中です。
17日に行く予定でしたが、17日の天気が怪しいので今日になりました。




このバイクを購入してから30年目の車検です。
2年前の車検の時は距離計が41236kmでした。



今回の距離計は43007kmなので、差し引くと 1771kmです。
2年で1771kmなので、1年あたり885.5km。
これでもこの2年は少し距離が伸びています。



タイヤはまだ溝がたっぷりあるので車検は通ります。
タイヤのトゲトゲも、ビバンダムマークもしっかり残っています。
ですが、交換したのは8年前なので交換する予定です。
バイクの場合、タイヤトラブルは命に直結しますので。



タイヤ交換をした8年前の距離計は、38688kmなので
現在の43007kmから差し引くと、4319km。
そりゃあタイヤも減っていない訳です。
1年あたりの走行は540kmという事になります。
せめて1年に1000km位は乗ってあげたいです。



という訳で、名古屋市天白区にあるDATZ名古屋さんまで来ました。
暫くお預けして、点検、整備と車検をしていただきます。
今日はここからバス、地下鉄を乗り継いでmonte accordionへ出勤します。


コンサーティーナのハンドル2022/10/14

一般の楽器店経由でアコーディオンの修理という事でご依頼がありました。
届いた楽器はコンサーティーナでしたが、
一般の方からみるとアコーディオンという事なのでしょう。

修理の楽器は少し前にブログの記事にしたメーカーと同じ物で、
ハンドル部分が取れていました。




バンドネオンの様な感じのハンドルが付いたコンサーティーナですが、
ハンドル部分が本体から取れています。
ハンドル側にネジが残っており、本体からネジごと取れた感じです。
まさか演奏の力で取れるとは思えないので落下させたのか、
何かにぶつけたのか??



ハンドルが付いていた部分を本体の裏側から見たところです。
ネジ穴の部分が残っていますが、本体内からはワッシャーなどが出てこないので
単に木ネジ2本で留めてあっただけのようです。



ハンドル側はネジが残っているので本体の穴を抜けて行ったという事でしょう。
固定はネジ留めとネジ周辺に僅かな接着がしてあるだけです。



内側に貼ってある網をハンドル部分の真裏だけ切り取りました。
ここに金属板を入れてネジ留めして修理する事にします。

まさか演奏の力で取れるか?と思いましたが、それもアリかも知れません。
イタリア製とは言え低価格な普及品ですので仕方ない部分もありますが、
本体は薄い合板なので力を何度もかけていると穴が広がって
ネジが通り抜ける可能性はあります。
せめて内側にワッシャーを入れておくか、全体を接着しておけば
こんな事にはならなかったでしょう。