さようならVercelli2008/06/26

前の記事の続きです。

修了証を受け取り、これで本当にCooperfisaの皆さんとお別れだと思いました。ファブリツィオは、用事があるから帰る筈だったのに6時近くまで私の事に付き合ってくれました。ロミオは、今からすぐに演奏の予定があるとの事で、私が今日仕上げたアコーディオンを持って出かけました。順番に、握手したり、ハグしたりして、別れの挨拶を交わしました。私はやっぱり、ありがとう程度しか言えず、用意した言葉などどこかへ行ってしまいました。その場に居なかったパオロは、わざわざ電話をかけて来て別れの挨拶をしてくれました。

見慣れた建物から出て、いつも会社とセミナリオの間を車で送り迎えしてくれたシモーネと一緒に、いつもの様にセミナリオへ行ってもらい、部屋へ行ってスーツケースを取ってきて、大きな門のある受付へ鍵を返しました。受付のリナおばさん、用務員のジュゼッペおじさんに挨拶してセミナリオを後にし、シモーネに駅まで送ってもらいました。日本にとても興味があるシモーネとは、一番沢山話をしたし、調律やリード関係の部分ではとても詳しく、時に厳しく教えてくれました。御礼に英語と漫画絵で描かれた日本を紹介する本をあげるととても喜んでくれました。1,2年後には、日本に遊びに来るとの事で、再会を誓ってお別れしました。

3ヶ月前、雨が降るこの駅に降りて、ロミオと会い、最初にCooperfisaへ行った時の事を思い出しながら駅へ入りました。電車に乗り込み動き出すと、毎日見ていた教会のとんがり屋根と、大きなドーム屋根が段々と離れて行きます。さようならCooperfisa..さようならVercelli..
大きな川を渡り、日本と似ているけどどこか違う、田んぼの風景の中を過ぎました。電車の中では、イタリアへ来てからの事を色々と思い出していました。時々、思い出して涙が出そうになるのを抑えて。半ば放心状態の様な感じでミラノへ着いていました。

Cooperfisaの皆さんのおかげでとても充実した日々を過ごす事ができました。本当に感謝しています。でも、これからが自分にとっての本当の努力が始まります。なんと言っても、既に会社は辞めてしまったのですから。明日からは、帰りのフライトが出るフランクフルトまで、フランス経由で少しのんびりと旅行しながら移動する予定です。

修了証2008/06/26

前の記事の続きです。

エミリアーナが持ってきた書類は、何が書いてあるのか分かりませんでしたが、多分それは修了証の様な物だという事はすぐ分かりました。書類にはピエモンテ州のマークも入っています。その頃には、近くにいた人がみんな集まってきていました。そして、その書類の下の空いた所に、私と関わった人が1人づつサインをして行ったのです。サインで埋まった書類を、エミリアーナが読み上げて私に渡してくれました。みんなは拍手しています。
全く予想もしていなかったこの事に、とても驚いたのと、嬉しいのと、別れの悲しさが混ざった気持ちで一杯で、涙が止まりませんでした。私は知らない間にタオルを渡され手に持って握り締めていました。
このような書類を作って準備してくれていたなんて本当に、驚きましたし、本当に嬉しかった。こんな風にして頂ける自分はとても幸せだと思いました。

後で調べると、その書類に書いてあるのは大体、こんな感じです。
「Italia Vercelli にある、アコーディオンメーカーのCooperfisaに於いて、Kunio Nakayama氏は、私たちの会社のアコーディオン修理師を形成する課程をみごとに修了した事を認めます。」
ピエモンテ州のマークの所には、「ピエモンテの優秀な職人」、「その品質を認める事ができる」と書かれています。

別れの時2008/06/26

Cooperfisaでの最終日の続きです。
夕方に最後の仕事を終えて、その後、今後の事などを社長のエミリアーナさんと話をしました。日本でのCooperfisaの販売や、私が注文する楽器の事などです。そうしている間に、5時を過ぎ、段々と皆さんと別れる時間が近づいてきました。5時半になった時、ファブリツィオが私の所に来て、別れの挨拶をしました。用事があるので少し早く帰る為です。ファブリツィオは、Cooperfisaのアコーディオン組み立て、修理の一番の腕前を持っていて、社内的にも地位を認められている人です。私の今回の研修の実践的な部分で一番お世話になった人です。最初はちょっと怖い感じの人かと思いましたが、とても親切で優しい人でした。いざ、別れの時となると、殆ど何も言えなくなります。言いたい事が沢山あるのだけれど..代わりにやっぱり涙が出ます。

そうこうしているうちに、エミリアーナが何か紙を持ってきて私に見せてくれました。

最終日2008/06/26

Cooperfisaでお世話になるのも最後となりました。今日は、午前中、ボタン式アコーディオンのチャンバー側バルブの取り付けを行いました。
事務員のドナテッラは午前のみで帰ってしまう為、お昼前に身近にいた人を集めて写真を撮影しました。皆さん、本当に親切にしてくれて、いい人ばかりです。写真左から、ファブリツィオ、シモーネ、ロミオ、リラ、私、エリーザ、ドナテッラ、エミリアーナです。(この他にも従業員はいます)
後ろに並んでいる楽器は、Cooperfisaの製品です。高い天井の方まで棚で積み上げています。地震は無いとの事で、このような展示が可能なのです。
写真を撮ったりしていると、今日が最後という実感が沸いてきて悲しくなりました。

チャンバー側バルブ2008/06/25

今日も、昨日から行っているボタン式アコーディオンのチャンバー側バルブの取り付けと、調整作業を行いました。この作業をうまく行わないと、空気漏れの症状が出ます。何もボタンを押さないのに、蛇腹を開閉できたり、酷い場合には音が出てしまう時もあります。空気漏れがある楽器は蛇腹の操作がダイレクトに伝わらず、キレの悪い演奏になりますし、開いた時と同じフレーズを弾いても、閉じる時に空気が足らなくなったりします。アコーディオンの命である蛇腹操作が、音として反応しにくい状態は、演奏の質を下げるのはもちろんですが、初心者が練習する過程で上達を妨げます。楽器を買う時は必ず、空気漏れのチェックをおこないましょう。これは初心者にはわからないので、慣れた人に見てもらう事が重要です。また、既に空気漏れがある楽器を使用している方は、修理する事をお勧めします。但し、チャンバーの付いた楽器は調整が大変なので時間と費用がかかります。ベース側のバルブに原因がある場合は、ベース部分をオーバーホールする為、やはり時間と費用がかかります。また、空気漏れの原因は多岐に渡る場合があり、全てを一度に対策しないと直らない場合もあります。なので、中古楽器を購入する場合はこの点によく注意をした方が良いでしょう。