脚部の破損2022/07/15

アコーディオンの脚部を破損したという修理を承りました。
脚部とはベースの手のひらが当たる部分の板の4隅に付いている、
置いた時に床に接する部分のことです。

今年に入ってご購入いただいて1年以内の新品楽器で
同様の破損が2件ありました。
どちらもイタリア製ですがメーカーは違います。



破損した脚部です。
4つある脚の一つが取れています。
ベースの底板は殆どの場合、木の板でできています。
楽器によってはアルミニウムや合成樹脂の場合もあります。
この部分の板は厚さが5ミリ程度と薄いのであまり強度がありません。
厚くすると楽器が重くなるので強度と重さのバランスを取った結果です。



破損した脚です。
板の部分が破壊して脚と一緒に取れた状態です。

楽器を置く場合、脚部を床に接するように置くのが一番安定で安全です。
殆どの方は演奏後にそのようにしていると思いますが、
置く時に最初に床や台と接するのが脚です。
楽器は重いのでゆっくりと置いたつもりでも大きな力が脚部に掛かります。
この楽器のように脚が比較的飛び出ているタイプは台の上などに置く場合、
目測を誤って台の角の部分に脚の横を当ててしまうことがあります。
恐らく、今回の破損もその状況だったと思います。
脚は垂直な力にはある程度強いですが横方向の力には弱く
板が割れてしまうことがあります。

また、脚が飛び出ていないタイプでも楽器をドスンと置いて
脚部の下にある木の部品が破損する事がよくあります。
脚部が樹脂の場合、割れたり、取れたり、という事もよく目にします。
楽器を置く時はゆっくりと慎重に行う事を忘れてはいけません。
たとえ10センチの高さからでも力を抜いて落とすように置くと
楽器が壊れる事があります。



修理を完了しました。
新品の楽器なので見た目をできるだけ損なわないように、
そして、強度を初期の状態以下にしないように修理しました。
この部分の内側は直下にベースメカニックがあり、
強度を保つための大掛かりな補強をするスペースがありません。
なので強度を維持するように修理するには技術が必要です。

今回はとても綺麗に修理できました。
前回、同様な修理の時も殆ど目立たないように修理できました。
どちらにも共通するのが、ユーザーが自分で修理しなかった事です。
自分で接着剤を使って修理すると割れた部分に接着剤が付いてしまうので
その後、正確な位置に戻して割れ目を目立たなく修理する事が困難になります。
破損した場合、自分で修理せずに戻してもらえると綺麗に修理できます。



今回はご購入から1年未満で保障期間内ですが、
取り扱いによる破損なので有償修理となります。
それでも、ご購入特典の割り引きが適用されます。
使用中に重大な破損や修理が必要になった場合も出費を抑えられます。
これは保障期間の1年を過ぎても続くサービスです。
その後の調律にも適用されますので維持費が安く済みます。
ただし、改造的な作業や交換部品が必要な場合には適用されません。