タンクの穴あき2022/10/06

今日は定休日です。
昨年塗装をやり直したバイクですが、塗装が済んで部品を戻して動くようにしてから
何となくガソリン臭が強くなっていることを気にしていました。
最初はタンクに取り付けた燃料コックのナット締めが悪くて
ガソリンが染み出ていると思っていましたが、
ある日タンクの下の塗装にシワができている事が分り、
タンクに穴が空いている事を確信しました。
折角塗装しなおしたところなのに...




タンクに穴が空いていることに気付いたのは1ヶ月ほど前です。
という訳で、タンクを外して浮いてしまった塗装を剥がしました。
長時間のガソリンによる侵食で浮いた塗装はペリペりと簡単に手で剥がれました。
幸い範囲は限定的で目立たない下部だけでした。
めくった塗装の下には下地塗装が残って白くなっています。



塗装の下地を研磨して取り除くと思ったよりちゃんとした穴が空いていました。
実際には塗装があるので、極僅かにガソリン漏れをしてたという状況でしょう。
原因はタンク内側からの錆による侵食ですが、
内部の錆止め塗装はしっかりしていますし、錆がタンクから出てくる事もないので
極めて限定的な範囲の錆と判断しました。

錆の原因はタンクの空間にある空気中の水蒸気が寒暖により凝縮して水になり、
ガソリンより重い水がタンクの底に溜まって腐食していったという事でしょう。
そうならないように極力、ガソリンは満タンにして空間を減らすようにしていましたが
30年間の間に僅かな水が溜まったのでしょう。
偶には水抜き剤を入れる必要がありそうです。



今回は表からハンダ付けで補修しました。
多めに盛っておいたので腐食が進んでも暫くは大丈夫と思います。



下地として錆止め塗装をしました。



最後に黒い塗装で仕上げました。
自動車用のタッチアップですが、元の塗装と色が違うので補修箇所が見て分ります。
実際にバイクに取り付けると下になる部分なので見えません。
ガソリン漏れがあると車検に通せないのでギリギリのところで見つけて
補修できて良かったです。
10日後には30年目の車検に出す事が決まっていました。


イタリア製アコーディオンの調律2022/10/07

イタリア製小型アコーディオンの調律を承りました。
古い物ではなく、使用上の大きな問題もないものです。


日本に代理店があるブランドなので一般の楽器店でも注文で購入できる物です。
34鍵盤ですがHMMLのリードセットなのでスイッチが沢山あります。



購入から10年程度は経過していると思いますが、使っていれば埃が溜まります。
定期的な調律で内外の清掃も行う事ができます。



蛇腹留めの内側のナットが緩んでいました。
このまま使い続けるとナットが外れて楽器内に落ちて
思わぬトラブルになる事もあります。
このような小さな不具合も調律時に見つけることができます。



鍵盤の高さにバラつきが出ています。
これも使っていれば起きることがあります。
殆どの場合、手を引っ掛けたり、ベルトを引っ掛けて鍵盤を持ち上げる事で起きます。
このままでは弾き辛いので修正します。



鍵盤の高さを修正しました。



リードを取り外したところですが、スイッチの切り替えで開閉するシャッターが
全開になっていません。
これは製造時からの問題でしょう。
作った時、売った時、きちんと調整していない場合には最後まで問題が残ります。
音は出るので使う事はできますので不具合と認識されません。
ただ、このような状態では楽器の能力は最大に発揮できていません。
当店では調律時に、ただ調律を行うのではなく、様々な問題を修正して行きます。



リードの隙間にバラつきがあります。
発音に影響しますが、これも調整が不十分な例です。



この画像にも不具合がありますが、見ただけでは分りません。



リードバルブの上にある金属のバネをずらしてみると2本重なっている事が分ります。
人間が手作業で貼って行くのでこんな事もあるでしょう。
このような不具合は眺めただけでは見つからず、
リード一つずつに対してきちんと点検、調整をしていかないと気付く事はできません。
調律の前には全てのリードの状態をチェックして必要があれば修正をします。



ベースの下にある脚部に割れがあります。
この部分は楽器を置く時や運搬時に強い衝撃が掛かりやすいので
損傷をうけている場合が多い箇所です。



ベースの底板を外してみると割れている脚部に薄いシートが入っています。



割れた部分を外してみると両面テープで補修されていました。
板を外した時に脚部に挟まっていたシートは両面テープの一部でした。
力が掛かる部分なので両面テープによる補修は適していません。
テープを除去した後に適切な接着剤で修理します。



ベースメカニックに異常はなく、内部清掃だけで完了しました。
ベースボタンの板の両サイドに面白いものをみつけました。
ボタンの両サイドには使われていない穴が4列あります。
つまり、120ベース分の穴が空いている訳です。
メカニックのスペースから120ボタンは無理ですが96ならできそうです。
72ベースも120ベースも、内蔵するリードは同じで、
ボタンのパーツの数が違うだけです。
72ベースは使っていると不足する場面が出てきますので
スペースがあるなら34鍵盤でも96ベースあると便利です。
スペースもリードもある訳なので34鍵盤でも96ベースが標準になると
使う側としては有難いです。
最近はそういう仕様の楽器も出てきました。



ベースリードです。
こちらも調整が不揃いになっていますので全て修正して行きます。



ベースリードの高音域のリードも隙間にバラつきがあります。
高音域の小さなリードほど、隙間の僅かな違いによる
発音への影響が大きいのできちんと調整する必要があります。



僅かですが蛇腹内部にカビが出ています。
もっと酷い例は多く見られます。
これも調律時に除去する事ができます。
楽器内にカビが出ると健康被害が出ることもありますので
定期的な調律を行う事で内部も清浄に保つことができます。



調律を完了し、後は発送するだけです。
手前の部品は交換して不要になった物です。
外も中も綺麗になり、音もリフレッシュできました。


高温にご注意2022/10/11

当店で販売したイタリア製アコーディオンの調律を承りました。



調律前のリードの点検で異常を発見しました。
一部のリードの根元のロウにひび割れと隙間があります。



内側から光を通して見ると隙間から光が漏れている事が分るので
大きな隙間ができていることが分ります。
よく見ると、全体に先の方にズレている感じです。
ロウで接着されているリードのロウが溶けて
リードが前にズレて隙間ができたと推測できます。
これだけ隙間があると内部空気漏れがあるので
音が弱くなったり、空気の消費が多くなるでしょう。



ロウが溶けたようなので他にロウが使われている所をチェックしました。
右手のバルブはロウで接着されている楽器が多いですが
この楽器もそのような構造です。
バルブの並行が乱れている感じがします。
イタリア製の新品であればこんな事はありません。
ロウの部分も綺麗な仕上げになっていませんので、
全体が高温に晒されてロウが溶けたという事でしょう。



詳細に調べるとバルブの取り付けがズレた事で
鍵盤を押すと他のバルブのアームにバルブが干渉している所がありました。



鍵盤を離すとバルブが当たっていたアームには傷がありました。
ズレが出てからそれなりに長い期間使われていたのでしょう。



大きく傾いたバルブを戻しました。
空気漏れは出ていないようです。



バルブの位置を直したので、アームと接触しなくなりました。
リードの取り付けも修理して問題はなくなりました。

ロウは50℃以上になると柔らかくなってきますので、
この楽器は50℃以上の環境に暫く置かれていたと思います。
不思議なのは所有者に心当たりがない事です。
50℃以上というと一般家庭の室内であれば真夏のエアコン無しでも
そこまでは行かないので、車の中に置いておいたとか、
暖房器具の近くに放置したなどが原因でしょうか?

今回は大事には至りませんでしたが、場合によってはリードが木枠から
脱落したり、溶けた蝋がリードを汚染する事もあります。
そうなると修理費用が大きくなりますので、
アコーディオンは高温環境に置かないように気をつけましょう。


原因不明2022/10/12

高い音で出ない部分があるという事で修理を承りました。
音が出ていないのは高い方から2音あります。



該当部分を外から見てもよく分らなかったので外してみました。
すると、内部に黒い物が付いていて、リードが動かない状態である事が分りました。
黒い物は焦げたようにも見えますが、液体が乾燥したようにも見えます。



他の鳴らないリードです。(右側)
リードの内側に黒い物が入っていますし、
よく見ると外に付いているリードも周囲に黒い物が染み出ている感じです。



こちらも外してみましたが同様に黒い物で汚染されていました。



この黒い物は何でしょうか?
恐らく、液体でだったものが乾燥して残った物と思います。
持ち主の方は心当たり無しです。



不思議なことに、リードの裏側と木枠の内側だけが汚れており、
リードの木枠が当たっていた部分は何ともありません。



同じ様に該当部のバルブにも汚染が見られません。
これは外から入ったものではなく、リードの木枠の中で起きた事?
と、判断するしかありませんが、全く見当がつきません。



黒い汚れは水溶性である事が分ったので水洗で除去しました。



乾燥させた後に木枠へ戻しました。
音は正常に出るようになりましたが、
根本原因が全く分からないまま、完了する事になりました。
こういうことは初めてです。


コンサーティーナのハンドル2022/10/14

一般の楽器店経由でアコーディオンの修理という事でご依頼がありました。
届いた楽器はコンサーティーナでしたが、
一般の方からみるとアコーディオンという事なのでしょう。

修理の楽器は少し前にブログの記事にしたメーカーと同じ物で、
ハンドル部分が取れていました。




バンドネオンの様な感じのハンドルが付いたコンサーティーナですが、
ハンドル部分が本体から取れています。
ハンドル側にネジが残っており、本体からネジごと取れた感じです。
まさか演奏の力で取れるとは思えないので落下させたのか、
何かにぶつけたのか??



ハンドルが付いていた部分を本体の裏側から見たところです。
ネジ穴の部分が残っていますが、本体内からはワッシャーなどが出てこないので
単に木ネジ2本で留めてあっただけのようです。



ハンドル側はネジが残っているので本体の穴を抜けて行ったという事でしょう。
固定はネジ留めとネジ周辺に僅かな接着がしてあるだけです。



内側に貼ってある網をハンドル部分の真裏だけ切り取りました。
ここに金属板を入れてネジ留めして修理する事にします。

まさか演奏の力で取れるか?と思いましたが、それもアリかも知れません。
イタリア製とは言え低価格な普及品ですので仕方ない部分もありますが、
本体は薄い合板なので力を何度もかけていると穴が広がって
ネジが通り抜ける可能性はあります。
せめて内側にワッシャーを入れておくか、全体を接着しておけば
こんな事にはならなかったでしょう。