黒金フリーベース2つ2022/11/07

当店でアコーディオン教室の講師をしているアンジェロ アクィリーニさんの
楽器の調整を行いました。
アンジェロさんはプロのアコーディオン奏者です。
新型コロナの影響も落ち着いてきて年末にかけて演奏機会が増えるため
今のうちに気になる部分を修正しておくという計画です。



アンジェロさんが現在、メインで使っている楽器の右半分です。
私がアンジェロさんの紹介で修理を習いに行った北イタリアのメーカー
Cooperfisa(コーペルフィサ)の特注品です。
アンジェロさんは「黒金ちゃん」と呼んでいます。
この楽器はアンジェロさんがまだ日本に来る前にイタリアで作成した物です。
グリルカバーには漢字で黒金と書いてあります。
このカバーは手作業で切り抜いていますので、
オリジナルのデザインにも対応できます。

イタリアで修理を習った時にグリルカバーの切り抜きもやりました。
難しい作業で、何本も糸ノコの歯を折ってしましました。




右手側45鍵盤、HMMLL(MLチャンバー)です。
5セットリードの場合、日本ではHMMMLが多いですが
ヨーロッパではHMMLLもよくあります。
桑山哲也さんが使っているCavagnoloはMMLLです。
一般的には4セットの場合HMMLですが、MMLLという選択もあります。



ベースは120ボタンのフリーベース(コンバーター)です。
フリーベースは右手で言うところのMLの物が多いですが
この楽器はHMLのリードがあるのでご覧のように中身ギッシリです。



右手のスイッチはアンジェロさんのこだわりで、マスターパームスイッチと
通常のスイッチ15個+顎スイッチ7個です。
一般的には最大で15個ですが増設しているので複雑機構になっています。
一般的な顎スイッチは手元のスイッチと設定がダブっているので
機構もそんなに複雑にはなりません。
手元スイッチの機構を利用して顎スイッチと連動させるだけですので。
この楽器では、手元15個と顎スイッチ7個は設定のダブり無しで、
22種類、全て違う組み合わせになっています。
そして、手のひらで押すマスターパームスイッチもダブり無しなので
全部で23通りのリードセットが選択できるようになっています。

グリルカバーの内側にはマイクの基盤が見えますが、
この楽器には内蔵マイクも入れてあります。
プロ奏者なのでどんな状況にも対応できる仕様になっています。



奏者が使う楽器という事もあり、かなり埃が堆積しています。
最近はスイッチの切り替え動作が良くないという事でなので、
まずはスイッチの整備から行います。



堆積した埃を清掃します。
奥からは掃除機で吸い出せない塊も出てきました。



清掃すると異常が見えるようになります。
スイッチを支えている木製の台にヒビが入っていました。
過酷な使用で割れてしまったのでしょう。
このためにスイッチの土台が動くようになっており、
スイッチを押す力が逃げている事が不具合の原因の一つでした。



スイッチの台の修理とスイッチ機構の清掃、調整の為に
スイッチ機構を取り外しました。
顎スイッチが7個もあるので取り外しが大変です。



修理を完了してスイッチ機構を戻すところですが、
顎スイッチからのリンクが沢山あるので外す時以上に大変です。



次はベース機構の点検をしました。
フリーベース(コンバーター)という事で、複雑機構の塊です。
幸い、不具合や異常はなかったので清掃だけで済みました。



フリーベースの黒金と言えば、偶然ですが楽器店からの依頼で
修理、調律に来ている楽器も黒金カラーでフリーベースでした。
こんな機会は滅多にないのでベース部分を並べてみました。
左側が依頼で来ていたHOHNER GOLAのフリーベースで、
右側がアンジェロさんの黒金ちゃんです。
サイズとしてはHOHNERの方が少し大きいですが、
HMLリードのCooperfisaの方が沢山のリードが入っています。



ベース部分を横から見てみました。
左がHOHNERで、右がCoopcerfisaです。
分かりにくいですが、CooperfisaはHリードの小さなリード列があります。



ベースボタンも黒いCooperfisaのベースです。
ベースボタンの左右にあるスリット状の穴は開閉できる機構が付いています。
今回、この機構にも不具合が出たので修理しました。
コンバーターなので、切り替えの細長いスイッチがある事を除けば
スタンダードベースと見た目は変わりません。



こちらはGOLAです。
コンバーターではなく、フリーベース用のボタンが独立しています。
切り替えの必要はありませんが、フリーベースの演奏は
手を奥まで伸ばして演奏する必要があります。
外観は見事に黒金ですね。



同じくGOLAの右手側です。
45鍵盤、HMMML、MLチャンバーです。
グリル部分に開閉できるシャッターが付いています。
HMMMLですがスイッチは最小限という感じです。
黒金ですが金は品のあるゴールドですね。
さすが、超高級機!
以前にGOLAの調律をした事がありますが、
その時は一般的な41鍵盤、HMML、スタンダードベースでした。
HMMMLでフリーベースというのはとても珍しいと思います。
HMMLのスタンダートベースで400万円程度と思いますので
新品価格は大変な金額でしょう。



アンジェロさんの黒金ちゃんの右側です。
仕様は、45鍵盤、HMMLL、MLチャンバーです。
鍵盤は全て黒で、黒と金以外の色は無い、徹底した黒金です。
大量の顎スイッチが特徴ですが、
グリルのデザインも日本人ならデザインしない感じの特徴あるものです。
この楽器はアンジェロさんがCooperfisaに依頼して作成した物ですが
以来、カタログにはAngelo Aquiliniモデルとして発注可能になっています。
もちろん、グリルカバーは一般的なデザインになります。



黒金ちゃんの顎スイッチ側から見たところです。
元々6個で作成したものに無理やり1個増設したので、
1つはグリルカバーの方にあります。
顎が細くないとうまく操作できそうにありません。



さて、このテンコ盛りの黒金ちゃんですが、重さはというと..
16.4kgもありました。
アンジェロさんは身長170cmありませんので、そんなに大きな人ではありません。
よくこの重さの楽器で演奏しているな..と思います。

そして、これからこの巨大な黒金2台の調律をしなければなりません。
重くて大きな楽器の調律は本当に大変です。
しかも、フリーベースなので並みの大変さではありません。


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