意外な原因2023/01/25

先日、アコーディオンの蛇腹と本体を繋ぎ留めているピンの事を書きました。
今日もその、ピンのお話しです。


新品で販売する為の楽器を整備しています。
リードの修正や位置の調整、内部の清掃など、新品であっても必要な作業が沢山あります。
それらを完了し、最後に調律を行って全ての整備が終わりますが、
最後になって楽器を元通りに組み立て、試奏する時になって問題が出る事があります。
調律がずれる事もありますし、何か異常が出る事もあります。
なので、先日も書いた通り、ピンを抜いて何度も分解と組み立てを繰り返す事になります。

今回は最終確認で本体を蛇腹と合わせてピンで留めて、完成状態としたとき、
左手のスイッチの動きが悪くなっている事が分かりました。
最初は元々悪かったのか、組み立てた事で悪くなったのか分かりませんが、
分解して確認する事で原因が見えてきます。


楽器を分解した状態で機構を確認しましたが、何も問題は起きませんでした。
状況と経験から仮説をたてて検証すると原因が分かります。
このプロセスは自分がサラリーマン時代に研究職をしていた事がとても役にたっています。
今回は本体を組み立て、最後にピンを刺した事で問題が出ると予想しました。
本体を分解したままでピンを刺してみると、
ベースの音の切り替え機構とピンの先端が触れそうな位置に来る事が分かりました。
上の図ではギリギリ接触していません。


スイッチを押して音を切り替えると、組み立てた時と同じ、感触の悪い動作をしました。
そして、ピンの先端が機構に当たっている事が確認できました。
このままでも一応、切り替えはできている感じですが、スイッチの感触が悪いですし、
切り替えも不完全になる事がありそうなので修理します。
原因が分かれば修理は簡単です。
アコーディオンは新品でも色々な不具合を持っているのが普通です。
整備にかける手間と時間の違いにより、同じ楽器でも性能や使い心地に違いが出てきます。


コンサーティーナの調律2023/01/25

コンサーティーナの調律を承りました。


24ボタンの物で、リードはアコーディオンの物を使っています。
リードバルブに数字が記入してありますが、これはボタンとの位置対応でしょうか?
恐らく製造時には書いていなかったと思いますので
後の調律などの時に書かれたのかも知れません。


リードバルブの上に貼ってある細い金属バネの先が突き出ています。
この方法はアコーディオンでは一般的ではありませんが、
きちんと調整されていれば害は無いかも知れません。
これも元々付いていたものかは不明です。


リードの隙間の調整はあまりできていません。
コンサーティーナは大抵そんな感じですが、アコーディオンでもそんな感じです。
新品の時からあまりきちんとしていない部分です。
弱い音の発音が悪い場合、強い音で音が止まるような時は
新品でも全体の調律を行うと良いでしょう。
隙間の調整を行うと調律が変わるので調律とセットで行う事が必須です。
当店では調律費用にリードの調整も含まれています。


リードはネジで固定されています。
ネジの頭は六角穴ですが、インチサイズです。
英語圏で作成された楽器だからでしょうか?
イタリアの楽器ならミリサイズです。


リードの調整の為に取り外しました。
リードの隙間が大きく違います。
右の方はこれでよく発音してるな..というレベルです。


経年でリードバルブに反りが出ています。
これは使っていれば仕方がない事ですので、
定期的な調律を行う事で戻すようにするしかありません。
リードバルブも調整すると調律が変わるので調律とセットで行います。


リードバルブに貼ってある金属バネですが、内側に反っています。
これは経年や使う事でならないので、最初の調整に問題があったという事でしょう。
或いは、製造後にどこかで行った調整が悪かったのかも知れません。


リードに錆が出ています。
この楽器の場合、錆は殆どなく、ごく一部でしたので
調律の費用の中で錆除去も行いました。
錆が出ると調律が変わったり、不安定になります。
また、錆を除去すると大きく調律が変わります。


一か所のみ、錆が酷い部分がありました。
何故ここだけなのかは分かりません。


錆が酷いリードの対になっている方の裏面も錆が大きく出ています。


リード、リードバルブの調整、錆の除去などを行った後に全体の調律を行いました。
下にあるのは交換を行って取り外した部品です。

コンサーティーナはアコーディオンより調律が大変な部分があります。
バンドネオンはもっと大変です。
なので、音域に対する調律費用がアコーディオンより高くなっています。