MMMアコーディオンの調律2023/02/03

イタリア製のミュゼット(MMML)の調律を承りました。


BURANDONIというメーカーの34鍵盤ですが、MMMLのリードが付いています。
日本国内で新品として販売された物ですが、MMMの調律のズレが多過ぎて
気持ち悪い音になっているので、ズレ幅を減らした上で、全体を正しく調整する事になりました。


この楽器はそんなに古い物ではありませんが、奇妙な事に気づきました。
蛇腹留めの上の方ですが本体カラーに合わせた茶色の革の物が付いています。


下側の蛇腹留めは黒で、上下で色違いです。
劣化して交換するには時期が早いと思います。
聞いてみると、下側の蛇腹留めがすぐに外れるという事で、
購入した後にクレーム対応してもらったそうです。
その時に、下側だけ色の違う物に交換されて戻ってきたとの事でした。


上のこげ茶の物が純正品で、下の黒い物が交換された物です。
スナップ部分を見て分かりましたが、これはチェコ製の合成皮革でできた物です。
手元にあった物で長さが合う物があったので交換したというところでしょうか?


今回はイタリア製の黒い革製の物に上下とも交換する事になりました。
一番上が元々の物、真ん中の物が交換されたチェコ製の物、
一番下が今回交換するイタリア製の黒い物です。


右手のスイッチですが、ミュゼット仕様なので、MMMのスイッチがあります。
使用に伴う埃がスイッチ周りに付いていますが、これは調律前に取り除きます。


鍵盤の根本にも埃が溜まっています。
これも調律前に除去します。


右手のリードですが、リードバルブを押さえている金属バネの形が悪い物がありました。
よく見ると、そのリードの修理のロウ留めの処置が他と違って雑になっています。
これは何か訳があって、一度取り外して付け直したのでしょう。


該当リードを横から見るとバネが浮いているのがよく分かります。
何故かリードバルブが少し汚れています。


ベースリードの方ですが、リードバルブの反りが少し出ています。
古い楽器ではないので経年のナチュラルな変化というところです。

よく言われている、アコーディオンは新品から使って行くと段々と音が鳴るようになる、
という理由は、リードに貼られているリードバルブの押さえが緩くなる為です。
同時にこの事で調律もズレが出てきます。
使う事でリードが変化して鳴るようになる、という事はありません。
リードが育つといか書いている人を見た事がありますが、全く根拠のない思い込みです。
本当にリード自身が変化した場合、金属の特性が変化する訳ですので
大きな調律のズレが出る筈です。


右手側のロウ留めが雑になっている部分のリードを外しました。
この時、このリードが最初の状態と表裏が逆に取り付けられている事に気づきました。
上の画像は内側になっていた方です。
なので、リードバルブのバネが浮いていません。
内側のリードなのにリードの上の部分にロウが付いています。
これは元々表側だったので、接着の為に乗せたロウが付いてる、という事です。
リードには表裏の印が付いている物があり、このリードにも表を意味する
斜めの線がリード先端の脇に入っていますので、
間違いなく取り外した際に表裏が入れ替わっています。
これが意図して行った事なのかどうかは分かりません。
ダイアトニックアコーディオンではないので、表裏が変わっても音程は変わりません。


本来内側だった方のリードバルブとバネを外しました。
バネは強く曲げられている事が分かります。


各部を正しく調整してリードバルブを貼り直しました。


今度は表裏を最初と同じ状態にしてロウで留めました。
これで一件落着。
これは極端な例ですが、調律をする前には、
右側、ベース側含め、全てのリード、リードバルブの調整を行い、
同時に細かい不具合の修正、除去も行います。


ベースのリードが付いている木枠を取り外した本体側です。
木枠の穴の跡が本体側のバックスキンに残っていますが、
上から2列のリード列は、かなりのズレがあります。
下から3つのリード列では、スイッチで開閉するシャッターが
僅かですが、全開になっていません。


分かりやすいように木枠の穴の跡の輪郭を描いてみました。
一番低音のリード列の大きな穴の一部が欠けている事が分かります。
ニ番目の低音のリード列の穴も僅かに欠けています。
大きなリード(低音域)は空気の消費が大きいので、できるだけ大きな開口が必要ですが
これでは本来の能力が出ていない可能性があります。


リードの穴を本体と合わせる為、木枠の加工をしました。
併せて、スイッチで開閉するシャッターの調整も行います。

ここまで書いた、リードの調整や穴の位置のズレ修正、シャッターの調整など、
どれも、そのままで音は鳴りますし、楽器としても使えるでしょう。
ですが、本来の性能が発揮できなかったり、調律のズレや、発音の遅れなどの症状が出る事もあります。
どんなに有名な楽器でも、高価な高級品でも、調整に問題があれば性能は発揮されません。
当店で販売する物は、新品、中古問わず、このような調整は全て行っています。
勿論、調律の見直しもしますので、今回のようなMMMのズレ幅が大き過ぎるという事があっても
そのまま、お渡しする事はありません。
MMの波の速さも任意に調整してお渡しする事もできます。


楽器の調整とは別の部分で気になった事が一つ。
ベース側本体の下側部分が網目状に何かが付着しています。
これは滑り止めシートとして販売されている
柔らかい塩化ビニルのシートが貼ってあったのだと思います。
貼ってあった理由は分かりませんが、軟質塩化ビニルには可塑剤が入っており
可塑剤がアコーディオンの表面にあるセルロイドと反応する事があります。
すると、塩ビが剥がれなくなったり、セルロイド表面に凹凸ができたりします。
アコーディオン本体にはできるだけ樹脂やゴムの類を長期接触させないようにした方が安全です。
どうしてもという場合は、目立たない部分で長期試験を行ってからにすると良いでしょう。


問題の部分は綺麗に取り去る事ができました。
結構大変でしたけど..
調律も整い、見た目もリフレッシュして新たな気分で楽器を使うのも悪くないと思います。


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