ベースの異物2023/03/10

ベースボタンを押した時の音がおかしい、という事で修理を承りました。
楽器は古いEXCELSIORで、長く使ってきた物のようです。


ベースの異常はすぐに確認できたので、分解してみると
何か黒い物がベースメカニックに入り込んでいます。


黒い樹脂の破片のようなものです。
これが原因で意図しない音が混ざっていたようです。


異物は2個だけでした。
1つの部品から割れた物です。


取り出した異物はベースストラップのきつさを調整するダイアルを
支持している部品の一部です。


ダイアルはストラップとネジで繋がっているので外れていませんが、
ストラップを外すと支持する部品が壊れているのでダイアルが外れます。


ダイアルを外しました。
この楽器では全体が樹脂でできており、ネジ部分のみ金属です。
部品は楽器に接着されていて、外すのはちょっと大変です。
近年の楽器では全体が金属でできています。
大きな力が掛かる場所で、壊れると演奏の継続が困難になるので
金属製の方が安心です。


修理するためには部品を外す必要がありますが、接着されているので
できれば外さずに行いたい所です。
ですが、古いEXCELSIORでは小型楽器でも120ベース入っているので
ダイアル部品周辺に手が入る隙間が殆どありません。
ダイアル部品を外すか、ベースメカニックを取り出すか、という選択になります。


という訳で、ダイアル部品を取り外しました。
割れてしまった軸受けと反対側の残っている方にもヒビが入っています。
オリジナルを使って修理するには接着するしかありませんが強度の問題が残ります。
本当は金属製の最近の部品と変えてしまうのが良いのですが、
交換する為には本体の加工が必要な事と、ベースメカニックを取り出す必要があるので
今回は接着修理で直す事にしました。


接着修理しました。
これを本体に戻せば完了です。


ダイアルは直りましたが、ベースストラップが経年で傷んでいるので
併せて交換します。
ストラップは切れる事は殆どありませんので、10年以上もそのままで使っている人が
多いですが、硬くなって手の甲が痛くなったり、見た目が悪くなっているので
10年以内に交換する事をお勧めいたします。

交換する時はストラップだけではなく、付随する金属部品も交換します。
この楽器は古い物で、ネジのピッチが今の部品と違っています。
新しい部品が使えないのでネジ部分だけオリジナルを使います。


ネジ以外の金属部品は新しい物と交換します。
見た目もリフレッシュできます。


ストラップの新旧です。
上が付いていた物で、下が新しい物です。


ダイアル部分とストラップを交換し、ベースの問題はなくなりました。


ベースストラップだけではなく、ショルダーストラップの劣化も激しいです。
これはすぐに交換が必要な状態です。
見た目が悪いというだけではなく、楽器の金具に通す部分の劣化が剥がしく、
いつ切れてもおかしくない状態です。
通常、ここまで使ってはいけません。
ベルトは切れる前に交換が基本です。
切れると演奏の継続ができませんし、楽器を落下させて怪我や楽器の損傷を招きます。
交換したら3年以上は使えます。
年間の維持費は僅かですので、ここはケチらないでください。


その他、楽器の機能的な部分の補修が必要な状態です。
蛇腹と本体の合わせ目のパッキンシールが劣化していて空気漏れが起きています。
交換する事で空気漏れが改善します。
この楽器は古い物ですが、リードの錆やリードを留めているロウの劣化はありません。
全体の調律を行う事で良い状態になります。