鍵盤部の損傷2023/03/29

アコーディオンの鍵盤の付け根付近のボディーが割れてしまった楽器の
修理を承りました。
楽器はVICTORIAのフリーベースです。
このような修理は年に1回程度は経験しています。
鍵盤の修理: cookie's blog 



割れてしまった部分です。
アコーディオンの本体で一番薄くなる部分なので、
鍵盤の先端付近をぶつけると割れる事があります。
大抵は運搬時になると思いますが、楽器を演奏する状態で歩いて
鍵盤の端をドアの淵などに当てると割れる事があります。


鍵盤の付け根部分が割れると鍵盤が高く(深く)なります。
実際には鍵盤が動く訳ではなくて、背面の本体が下がるという事になります。


こちらは割れていない方なので、鍵盤は高くなっていません。


割れた部分を内側から見ていますが、狭いのでよく分かりません。
この部分は近年の楽器では軽量化の為に薄くできている物があります。
特に軽量である事をセールスポイントにしている機種は注意が必要です。
もう一つ、真逆とも言える重い楽器も注意が必要です。
この楽器はダブルチャンバーのフリーベースなので重いです。
重い物が動いている時はエネルギーが大きいので、
何かにぶつかった時のダメージも大きくなります。


損傷部分を修理する為には鍵盤を全て外す必要があります。
鍵盤を外しましたが、埃の塊と何か薄い板のような異物が出てきました。
この機会に清掃を行います。


鍵盤を外して清掃を完了しました。
面白いのは、この楽器の鍵盤下の板です。
4つのf字孔(S字?)のような穴が空いています。
これは意図して空けたのではなくて、VICTORIAの高級機の
グリルカバーの廃材を使ったのではないか?と思います。
偶然ですが、その機種で同じような修理を以前に行っています。


鍵盤のバルブです。
チャンバーのある楽器なので、1つの鍵盤にバルブが2つあります。
バルブの下に貼ってあるフェルトが虫に食われています。
古い楽器ではよく見られますが、古くない楽器でも注意が必要ですね。


割れた部分ですが、やはり昔の楽器よりこの部分が薄いと感じます。
接着修理しますが、それだけでは弱いので補強を入れます。


接着修理して1晩経過しました。
ヒビは残っていますが、隙間はなくなりました。


鍵盤を元に戻しました。
鍵盤の高さも正常に戻りました。


損傷部分の表面を整えました。
傷は残っていますが目立たなくなりました。


ちょっと離れて見たら殆ど分からなくなりました。
一度割れた楽器は元の状態より強度が落ちます。
以前にも増して注意が必要になります。
元より、アコーディオンは意外と弱い部分がありますので、
取り扱いは丁寧にする必要があります。

Faubourg 362023/03/29

フランス Maugein から新しい楽器が届きました。
この楽器は在庫ではなく、お客様のオーダー品です。


49音、MM、80ベースの楽器です。
小型軽量な楽器ですが、リードはハンドメイドです。
ボタンはミラータイプ、メッキグリルで蛇腹は敢えての黒です。
蛇腹の内側は、色はもとより、様々な柄を選ぶ事もできます。(費用は変わりません)
ボディー色は、真っ赤ではなく、ワインレッドという感じの深みのある赤です。
この色は、あるフランス映画に出てくるアコーディオンと同じ色になっています。


アコーディオンが出てくる、あるフランス映画とは、「Faubourg36」という映画です。
この映画で使われている楽器はMaugeinが、この映画の為に作成した物で、
映画の舞台となる時代に合わせたデザインの楽器となっています。
上の画像の楽器は鍵盤式のFaubourg36モデルですが、
映画ではボタン式が使われています。
どちらもオーダーで作成可能ですが、今回は費用と重さを抑えるために
レトロタイプのボディー形状と、装飾は省き、色とグリルのみ同じに作りました。


映画 「Faubourg36」は、日本でも「幸せはシャンソニア劇場から」という
タイトルで公開されています。
公開は2009年で、公式サイトは既に無いようです。
下記サイトで情報が見られます。

DVDが発売されているようです。(上の画像はDVDのパッケージです)
また、Amazon Prime Video で見る事ができるようです。

この映画、2009年(monte accordion開業の年)に見に行っています。
名古屋の名演小劇場という小さな映画館に行きましたが、
その時のブログ記事がありました。

そして、シャンソニア劇場ではありませんが、
今年、名演小劇場が閉鎖となってしまいました。
シャンソニア劇場のように復活するでしょうか..


アコーディオンの話に戻ります。
右手の音域は49音あります。
小型に見えても音域が多いのはボタン式の良いところです。
リードは勿論、釘留めで、ハンドメイドリードを使っています。
ボタンは映画と同じ、ミラータイプの物です。
グリルカバーも映画と同じデザインのメッキタイプです。
Maugeinのロゴは最近、新しくなった現行のロゴです。
色は映画と同じように白です。


実は、Maugeinはグリルカバーのデザインと、メーカーロゴを新しくしていて、
現在は上の画像のようなものになっています。
これはこれで良いと思いますが、以前のデザインはとても良くて捨て難いです。
現在、新しいデザインに切り替わっているので、基本的に旧デザインはできません。


これは以前入荷した物なのでグリルもロゴも旧タイプです。


蛇腹は映画と同じ、黒です。
Maugeinはアコーディオンメーカーとしては異例の、蛇腹内製をしています。
なので、色を変えたり、柄を入れたりしても価格に影響しません。
蛇腹を空気漏れなく、長年使えるように作るのは独自のノウハウと
それを作成する技術が必要です。
なので、殆どのアコーディオンメーカーは蛇腹を外注で、
蛇腹だけを作っているメーカーで作成しています。
その方が、コストをかけずに確実な物が使えるからです。
当店でも蛇腹が修復不能な場合はイタリアのメーカーで作成しています。

ベースボタンは80ベースです。
96ベースと同じ音域があるので困る事は殆どありません。
勿論、dimの和音も出ます。
80ベースはdimが出ないと思っている方もいると思いますが、そんな事はありません。
フレンチタイプのアコーディオンのベースは、96や120ベースでも
3列ベース、3列和音(maj,min,7th)が一般的なので、dimのボタンはありません。
ですが、dimは出す事ができますので、80ベースでも同じように可能です。


コンパクトな楽器ですので、軽量にできています。
実測7.2kgは34鍵盤60ベースより軽量です。