中古楽器2009/05/01

レッスンに来て頂いているお客様の楽器を修理させて頂く事になりました。ネットオークションで買ったという楽器ですが、かなり古い物で30年以上の物だと思います。
症状は、鍵盤の高さ不揃い、鍵盤操作時のカタカタという音、ベースボタン操作時のカチャカチャという音とパタンパタンという音、空気漏れ、調律ずれ..と、古い楽器特有の症状が全て出ています。
しかし、この状態でも全ての音は鳴り、演奏もできます。つまり、オークションで売る人の言い分として、「完全動作します」と、言えるし、嘘もありません。

但し、楽器として本格的に使おうとした場合、古い楽器はメンテナンスが必須になります。この楽器の場合は、調律ズレ以外の症状は全て、バルブに使っている皮とフェルト(後で調べたらスポンジでしたが)の劣化に起因する物です。この部分は30年以上経てば確実に劣化します。

という訳で、左右全てのバルブを交換する事になりました。写真の様にベース側のバルブは楽器の一番底にあるので、全てのベースメカニックを取り出さないと手が入りません。しかし、この作業をすると、単にバルブが新しくなるだけではなく、ボタンをひとつずつ調整しながら組み上げるので、ボタンの高さが全て揃い、操作時のノイズが減り、ボタンの反応が最大になる為、音圧が上がり、レスポンスがよくなります。費用と時間は必要ですが、楽器は新品の状態に近くなります。

中古楽器を買う時の失敗しない楽器選びの方法は二通りあります。
1つは、10年以内の新しくて暫くは使い物になる楽器を買う事。これなら元々安い楽器も高級な楽器も、20年程度はちょとしたメンテだけで使い続けられます。
もうひとつは、修理しても十分な価値がある高級な物を買う事。
例え古くて修理に費用がかかっても、良い楽器なら直せば価値があります。新品で30万円以下だった楽器は直す費用と楽器の価値から考えると古い中古は避けるべきです。
古い高級品は、直せば最新の同型モデルより良い楽器に生まれ変わる可能性もあります。但し、きちんと直せばという条件が付きます。
それと、リードが酷く錆びた楽器だけは止めておきましょう。

バルブ劣化2009/05/01

手前の記事に書いた楽器の右手側のバルブの状態です。
バルブ自体は、木やアルミニウムで出来ていますが、その下にはフェルトと皮が貼り付けてあります。フェルトはバルブの当たりを柔らかくしたり、バルブの角度の誤差を吸収する役目があり、皮は空気をしっかりと止める役割があります。
古くなるとフェルトも皮も柔軟性が落ちるので、パタパタとノイズが出たり、空気漏れが起きたりします。また、全体が縮むので鍵盤の高さが少し上がり(鍵盤が深くなり)、高さもバラバラになります。

この楽器の場合、フェルトの部分がスポンジでできているので、劣化具合もかなり酷く、カチカチに硬化している上に、ボロボロと崩れている場所もありました。皮も硬化して穴の当たる部分には段差が付いてしまっています。