クラビエッタ2つ2013/01/09

イタリア製の古い鍵盤ハーモニカ、Clavietta の修理を承りました。
なんと、2台です。
プロ奏者の方からのご依頼ですが、やはり予備として複数お持ちなのでしょう。


二台とも純正ケースに収められて届きました。
見ての通り、片方は黒鍵の一つが跳ね上がっています。
よく見ると、二つの楽器の黒鍵の高さは全然違います。
右側の楽器は一見、黒鍵が低い様に見えますが、実は白鍵盤が高いのです。
当然、深さも深くなっていて、大変弾き難いです。
何故か鍵盤のバネ圧も低くてフワフワして弾き難いこと、この上ない。
ちょっと触れるとすぐ音が出てしまいます。


不具合の原因を探る為、分解しました。
クラビエッタは最初に作られたアコーディナと同じメーカーで作成されていましたので、
内部の構造がソックリです。

黒鍵が跳ね上がっている原因はバルブが外れているだけでした。
何故か裏返しに取り付けてあるバルブがあります。
シールパッキンはオリジナルではありませんので新しいですが、
少し硬い材料で、段付きもクッキリですので交換でしょう。


バルブの部分を見るとゴムの板が重ねて入れてあります。
これはオリジナルの部品ではありませんので、劣化して交換したのだと思います。
ですが、一番下にあるスポンジゴムは柔らか過ぎて変形しています。
それを後で補修するために薄いゴム板を挟んだと思われますが、
変形量がマチマチなので鍵盤の高さもバラバラになっています。


もう一台の方は、スポンジ状のゴムがバルブ材に使われていました。
柔らかいので変形して鍵盤が高くなっています。
何度も操作すると段々と鍵盤が上がってくるという、依頼主の方の説明通り、
操作中にスポンジが変形して上の写真の様に穴に潜り込んでしまう現象も確認できました。
鍵盤のバネ圧が低いのは、この現象を回避するために低く調整したのでしょう。


これはバルブ材を適切な物に交換するしかありません。
クラビエッタは既に生産されていませんのでオリジナルは手に入りません。
こういう用途(耐久性、非粘着性、適度な強度と変形、耐水性など..)に
適切な材料がありますが、手に入るかどうか..
厚さも厳密ですので、まずは材料調達から始める必要がありそうです。
こういう時、以前の仕事の経験が活かされます。
無機材料が専門でしたが、実験装置を自作する時には樹脂や金属、
接着剤などの選定が重要でしたので。