バンドネオンの調律2023/09/26

先日、点検、見積りをさせていただいたバンドネオンの
修理、調律を行いました。



右手のリードですが、改めて見てもリードバルブに問題がある事が
すぐに分かります。
全てのリードバルブを交換した後に調律を行う事になりました。

楽器にはサインが入っていますが、日本人が書くサインには見えないので、
楽器作成時のものか、海外で調律など行った時のものと思います。


楽器にはスタンプもありますが、これは中古として販売した時の
販売店のものでしょう。
鉛筆書きの日本人のものと思われるサインもあります。
この楽器を国内で整備した方のものと思います。
私はサインなど書かない事が殆どです。
みんなで書いたら文字だらけになりますので。
サインを書くより、整備、調律にベストを尽くし、
自分のサイン代わりにしたいと思っています。


右手リードを外しました。
これは低音側3枚ですが、同じ音程にオクターブ上のリードがあるので
実際には6枚になります。
バンドネオンはアコーディオンで言うところのMLになっています。
なのでボタンの数の倍のリードが入っています。
(一部、単音の部分もあります)


付いていたリードバルブは全て外して新しい物を取り付けます。
単に剥がして張替えるだけではなく、古い接着剤や錆、埃の除去、
リードの調整を行います。


剥がした古いリードバルブです。
見た感じ、オリジナルや海外で交換された物という感じがしません。
手芸店で買った革や適当な樹脂フィルムなどで作成した物と思います。
そういう物では良い働きはできませんし、長持ちもしません。


磁石に張り付くリードバルブもあります。
フロッピーディスクを切った物を使用した事が分かります。
ネット上で代替え材料として紹介している人がいるのか、
アコーディオンでもこれを使って補修しているのを偶に見ます。
硬すぎて明らかに不適な材料です。
自分で交換しても貼り換えると調律が変わるので
調律も行なわないと楽器として成立しません。


リードバルブを新しい物に交換しました。


右手側全てのリードのリードバルブを交換しました。
ここまででも多くの時間が掛かっています。


左手側も同様の作業を行いました。


この楽器は空気漏れが多いので、蛇腹に付いている革パッキンを交換します。


接着剤で革が貼ってありましたが、それ以前の古い接着剤が残っていて
表面の凹凸が激しいので表面を整えます。


接着面を整えました。


バンドネオンは手で締めるネジで蓋を留めますが、
空気漏れを気にしてか、本体が凹む程、ネジを締めている事があります。
ですが、パッキンが劣化していたり、施工が悪かったり、素材が悪ければ
どんなに締めても空気漏れは改善しません。
或いは、別な理由で空気漏れしていれば締めても無駄です。


実際のネジを付けた所ですが、よく見るとネジの頭に傷があります。
恐らく、工具を使ってきつく締めたのでしょう。
でなければこんなに凹む筈がありません。
手で締めるネジなので無理に締めれば問題が出ます。
不思議な事に、古いバンドネオンでこの部分が凹んでいるのは
頻繁に見ますので、常態化しているのでしょう。
手締めで行い、空気漏れが気になる時は修理で対処が必要です。


リードやバルブが付いている隔壁となる板ですが
割れがあり小さな隙間があります。
これは暗くして背面から照らしている状態です。
このような隙間が空気漏れの一因です。


割れている場所も表から普通に見ても判断は難しいです。


ネジで部品が留められている部分にも割れと隙間があります。
気付いた隙間は全て修復します。


リードプレートが付く部分ですが、各リードを分けている隔壁の上にある
革パッキンがズレています。
これは内部空気漏れの原因になります。
酷い場合は隣のリードの音が混ざってしまいます。
ずれているところは全て修正接着します。


左手側の大きなリードの隔壁のパッキンもズレがあります。
場所によっては革が薄過ぎるので不適な部分は張替えします。


隔壁そのものに割れがあるところもありました。
これも修復。


ボタン操作で開閉するバルブにズレがある所があります。
空気漏れの原因になりますので悪い所は全て修理します。
ボタンの下に位置するバルブは修理が大変です。


必要な修理が全て終われば最後に調律を行います。
バンドネオンの調律はとても大変なので時間が掛かります。
時間が掛かっただけの費用も掛かりますので高額になりますが
一か月にできる数が限られますので、それで生計を立てていく為には
仕方がありません。


全ての作業が完了しました。
とても時間が掛かりましたが、楽器としてきちんと使えるように
できたと思います。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
迷惑書込み対策です。
下欄に楽器の名前をカタカナ(全角)で入力下さい。
当店は何の専門店でしょうか?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://accordion.asablo.jp/blog/2023/09/26/9646070/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。