空気漏れの修理22014/05/10

先日、空気漏れのあるアコーディオンの修理を行いましたが、
今日も別の空気漏れ修理がありました。
http://accordion.asablo.jp/blog/2014/05/04/7442431



症状はベースの音が強く蛇腹を押すとボタンを押していなくても
鳴ってしまうというものです。
写真はベースリードを取り外したところですが、所々四角い穴のところが白くなっています。
これが空気漏れをしている箇所です。


ベースのメカニックが簡単に外せるタイプの楽器ですので
すぐにバルブにアクセスできます。
一般的な楽器ではここまで来るのにはとても大変な作業になります。

メカニックを取り去ると薄い皮の部品が出てきました。
本来、開閉するバルブの表面に付いていて空気が通る穴を塞いでいる物です。
この状態ではバルブの下にあり、見る事もできない物ですが、
楽器の中に散乱していました。


バルブを指で持ち上げてみると皮の付いているところと無いところがあります。
皮が剥がれてしまったところは白いフェルトが見えています。
最初の写真で白く抜けていたところはこの部分です。
この状態で暫く使っていたのか、フェルトの周囲が穴の形に汚れています。


数枚剥がれていましたが、他も弱くなっている可能性があります。
点検してみると、ご覧の様に剥がれかけているバルブがありました。


こちらも剥がれかけています。
ベースバルブの数は24個ありますが、全ての皮が不安定と見て間違いないでしょう。


という訳で、バルブを取り外しました。
皮が付いていないところが良く分かります。
フェルトは通気性があるので完全に空気を止めることができず、
強い蛇腹操作で音が出てしまっていたのでしょう。
だましだまし使っていたのか、空気の流通による埃汚れが
フェルトの面に四角い穴の形で残っています。


剥がれかけている皮を剥がしてみると驚きの事実が..
本来、接着で付いているところですが、両面テープで補修されています。
恐らく、楽器を販売する際に古い皮を新しい物と交換した時にテープで行ったのでしょう。
古い皮は硬くなり空気漏れを起こしたり、閉じる時の音が大きくなるので
30~50年で交換が必要になります。
因みに、楽器はアコーディオンの専門店で中古で購入したとの事です。
イタリア製の有名ブランドで40年以上前の物と思われます。


全てのバルブで両面テープによる補修が見られました。
羊毛フェルトに天然皮革。
普通に考えて紙ベースの一般的な両面テープで長期の使用に耐える筈がありません。
残念ながら日本でのアコーディオン修復の現実はこのようなものもあります。
勿論、全てではありませんがそういう事もあるという事です。
ユーザーが安さを要求する結果なのかも知れません。
アコーディオンは他の楽器と比較してとても複雑で製作や修復が大変ですが、
他の楽器のユーザーほど、楽器にかかるコストを理解してもらえていない気がします。
統計を取った訳でもありませんので、感覚的なものですが..

バルブを外したベースの土台ですが、アルミニウムの錆が出ていましたので、
取り除く作業を併せて行いました。


ベースバルブは全て修理して、元の状態に組み戻しました。
空気が抜ける穴は全て茶色の皮が見えるようになりました。
空気漏れもなくなり普通に使える楽器となりました。

テキトー改造2014/05/10

先日、ベースのバルブの皮が剥がれてしまった楽器の
修理の事を書きましたが、同じ楽器の改造についてです。
http://accordion.asablo.jp/blog/2014/05/10/7442434


ベースリードですが、見慣れない白い板がありました。


何だろう?と思って白い板を外してみると、赤いフェルトが出てきました。


更に、フェルトを外すと下にリードが出てきました。
この楽器はベースリードが5列ある物で、最も高音のリード列が
鳴らないようにするためにフェルトと塩ビ板で塞いでありました。
5列リードのベースでは最高音のリードが鳴ると右手側と音域が重なり
邪魔になるため、大抵はスイッチで鳴らない音を選びますが、スイッチが
少ない楽器や、スイッチのリード選択の設定によっては高音が常に鳴り続けます。
そういう場合は、高音リードが鳴らないように改造するか、
スイッチの組み換えを行います。

この楽器ではスイッチの組み換えが難しい機構ですので塞いだのだと思いますが、
フェルトで塞ぐと空気は通過するので無駄な空気を消費します。
また、強く蛇腹操作をすると鳴ってしまう事もあります。
空気の流通自体を止める処置をするのが正しい方法です。
バルブも両面テープで補修してありましたし、全体に良い状態で修理された
楽器ではありません。
年代も相当ですので、本当は大規模な修復を行った方が良いでしょう。