ネットオークションの楽器の整備2022/02/08

ネットオークションで購入したというアコーディオンの修理を承りました。
当店ではどこで購入した楽器でも修理を受け付けています。
日本で有名なブランドの10年以内?の新しい楽器です。
修理と言っても状態が良く、大きな不具合はないので全体の調律程度です。

オークションで購入する場合、新しい事、価値のある物、
という2点が揃っていれば失敗する事は殆どありません。
20年以内の物であれば修理、調整の費用が大きく掛かる事はありません。
40年以上も前の物をイタリア製である事や有名ブランドである事を理由に
買ってしまうと消耗部品の劣化やリードの錆、リードを留めるロウの劣化など
修復に費用が掛かる問題が出ますので、そういう物を保障無しで買うのは
無謀な行為です。
費用をかけても使いたいという物であれば別ですが。



新しい楽器なのでリードバルブの反りなどはありませんし、
リードを留めているロウも全く問題ありません。
上の画像で1箇所だけリードバルブが変えられている所があります。
何かの不具合があり交換したのだと思います。
ただ、何故同じような薄い樹脂製の物に交換しなかったのか不思議です。
ここだけ発音が変わってしまう可能性があります。
また、良く見るとリードの根元に錆があります。



錆があるリードを拡大しました。
新しい中古楽器なので普通の使い方であればリードが錆びる事はまずありません。
また、一般的にはリードの錆が出るのは表ではなくて裏面です。
このように表側の面に錆があり、あるのは少数という場合、
考えられる理由は素手で触った事でしょう。
リードバルブがこの部分だけ変えられているので、
その作業の過程でリードを素手で触ったのかも知れません。

リードは素手で触れば汗や汚れが付いて錆が出やすくなります。
この事を知らない人もいるようで、ネット上で見た修理を教える?動画では
ベタベタと何も気遣いなしにリードを触っていました。
このような場合、後になって錆の問題がでてきます。
知らないというのは怖いです。
また、ネットで無料で見られるような情報はその程度と思いました。

無料や極端に安いというのは一番簡単に誰でも票集めできるつまらない方法です。
そういう物に群がる人は有料になったら来ません。
万人に良い情報を無料で与える事が発展に繋がると思う人もいるようですが、
そうではなく、例えばアコーディオンであれば、修理する人、販売する人、
演奏する人、教える人が、提供した内容に見合った報酬をきちんと得る事が
当たり前になる事が持続性のある真の発展と私は思います。
それはピアノや弦楽器、管楽器の世界を見れば理解できると思います。
ネットで簡単に情報発信できる時代故、よく考えて行わないとダメです。

話が逸れましたが...
私が修理を習ったCooperfisaで、リード関係、調律の担当をしていたシモーネは
いつも青いニトリル手袋をしていました。
これはリードを素手で触って汚染させない為です。
私も作業中はいつもこのことに注意しています。
サラリーマン時代は研究職でしたが、分析、観察、測定するサンプルは
素手で触らない、というのが常識なので言われなくても染み付いています。



新しい中古で明らかな故障や不具合はありませんがリードの調整は不十分です。
これは右手側のリードですがリードの隙間がバラバラです。
弱い音の発音に問題がある状態ですが、これは出荷当初からのものでしょう。
調律前に全て修正します。



ベース側のリードも同じように調整がバラバラです。
イタリア製の有名ブランドでも出荷時はこの程度です。
これは当店で輸入している物でも同じようなものです。
だからこそ、販売前の調整がとても大事なのです。