オリジナルのアコーディナ2022/02/11

1950年代と思われるAccordinaの初期モデルの修理を承りました。
アコーディナは1930年代に考案され1950年代に実際に製品化されたと
されている鍵盤ハーモニカと同じ原理で鳴らす楽器です。
当店では復刻版として現在制作されている物をフランスから輸入して
販売しているので、修理、調律も行っています。



少し前にアコーディナの空気の通り方などブログにて紹介いたしました。

その時、オリジナルではケースの二重底で呼気中の水分を手前で凝縮させる機構が
あるという事を書きましたが、まさにその機構を持つ楽器がやってきました。



分解したケース底部分です。
側面にある吹き口から入った空気は矢印のように二重になっている
下側の空間に入って行き、両端に設けてある隙間から本体のバルブがある
空間へ抜け、バルブが開いた所からリードへ向かって排気されます。
先に扁平で冷えた空間を通る事で大部分の結露が完了し、バルブからリードへ
行く過程では結露が減るという事を狙った構造です。
単純な構造ですがそれなりに効果はあると思います。

オリジナルのアコーディナやクラビエッタではこのような構造がありますが、
二重底の隔壁をケースに留めている接着剤が劣化している事が多く、
粉々になった接着剤の破片が内部で発生する問題が起きている場合が多いです。
この楽器も少し兆候があります。
該当する楽器をお持ちの場合、酷くなる前に対処を行うと安心です。



今回の修理ですが、折れたリードの修理です。
この楽器はオリジナルモデルでも初期の貴重な物で、真鍮製(銅合金)の
リードが使われています。
真鍮リードは錆にくく短くても低音域が出せ、柔らかな音が特徴ですが
使い続けると折れる欠点があります。
以前はアコーディオンにも使われていましたが折れるので今はスチールリードです。
アコーディナでは水分で錆が出るのでその後、ステンレスリードに変わりました。

ステンレスリードのアコーディナは現在でもフレーム付きで音程が確定した
リードが手に入るので外して交換するだけで済みますが、
真鍮リードは同じ物がないので、フレームからリードを外し、
同じ形状になるように手加工したリードと付け替えています。
これはとても時間の掛かる繊細な作業になります。



寸法が合っていなければリードが発音してくれないのですが、
最終的には音程も合わせないといけないので、なかなか大変な作業となります。
素材が柔らかくて加工しやすいのが救いです。
バンドネオンなどで同じ事をする時がありますがスチールの場合は硬いので
加工が大変になります。