中国製アコーディオン32016/02/07

このところ、中国製アコーディオンの話題が多いですが、
新たに中国製アコーディオンの修理を承りました。




修理の内容はベースの修復です。
購入したアコーディオンのベースボタンに問題が出て
自分で分解したところ元に戻せず..という状況です。
という事で、この状態で届きました。



安価なアコーディオンですのでベースメカニックは簡単に
全て取り出せるタイプです。
この方式はメンテナンスが楽になる場合が多いですが、
メカニック自体に問題があると分解するしかなく、
通常のイタリア方式より面倒になります。
この楽器も結局、分解してボタンを外してから
戻す作業を行うしかありませんでした。



無事に元通りに戻ったところです。
まだ楽器の中には納めていません。



ベースメカニックを楽器に戻して、楽器と繋がって
ロックされる箇所ですが、うまく合いません。
分解する時に捻ったようです。



分解された状態の楽器は元の状態を知らずに直す事になるので
難しい場合があります。
経験と想像と、内部に落ちていた部品から考え、
これが元の状態と思います。



ベースの底板の穴には塞いであります。
恐らく、左右の音量バランスを補正する為に
ユーザーで貼ったものと思います。



蛇腹の内部に何か付いています。
リードに挟まれば音が出なくなりますので除去しました。



接着剤?か何かのようです。



ボディーには装飾がありますが塗っただけの仕上げです。



イタリア製などでのきちんとした装飾は
溝を彫った上で塗装しているので仕上げと耐久性が違います。



鍵盤先端の成型にバリが出ています。



右手のリード部分ですが、リードバルブが最初から浮いています。
また、対向するリードの距離が近すぎて干渉しそうです。
設計と材料選択に問題があります。



付属ベルトの縫製がかなり粗いです。
中国製のアコーディオンの中でも上下があります。
安い物は楽器というより玩具です。
楽器として使って行きたい方は選択を誤ると
時間とお金を損失します。


再会2016/02/06

アコーディオンの左手を通すベース部分の
バンドの交換依頼がありました。
これはベースストラップという名称の物です。



ご依頼の楽器はHOHNERのConcert IIITという機種です。
この機種ですが、私が初めて購入した物と同じです。
21年前に普通の楽器店で取り寄せて購入した懐かしい楽器です。
1年後に41鍵盤のイタリア製の楽器を購入したので
その楽器は手放してしまい、今は持っていません。



これがベースストラップですが合成皮革の物で
表面がボロボロに剥がれてきています。
この部分は切れる事は滅多にありません。
その為、交換せずに長く使っている楽器を頻繁に見ます。
ですが、表面が硬くなっていたり、ひび割れが出ていて
演奏すると左手の手の甲が痛くなってきます。
ベースストラップは消耗品なので5年を目途に交換をお勧めします。
古い物を交換すると驚く程、操作が楽になる事が多いです。



併せてに各部の清掃を行いました。
長く使われていて、かなりの埃が溜まっています。
この機種は既に生産されておらず、現在は
Bravoという機種が代わりのクラスになります。
Bravoと各部の作りがそっくりで、かつてのHOHNERの
詳細までコピーされている事が分かります。



楽器の裏面ですが、MADE IN GERMANY と明記されています。
残念ながら現在の機種にこの文字はありません。

ところでこの楽器、驚いた事に私が最初に買った楽器そのものです。
日付は私が購入した時に貼り付けた物です。
胸当ても当時、私が付けたバックスキンの手製の物です。
まさか修理依頼品としてこの楽器に再会できるとは..
これを買った頃には今の自分を全く想像していませんでした。
1995年11月、この楽器を手にした事で新しい事が沢山あり
そして今に至っています。
私の人生を変えてしまった1台のアコーディオンです。
再会があまりにも嬉しくてちょっと演奏させていただきました。

これをお持ちの方にも20年近くぶりに再会しました。
私が経営している事を知らずにご来店されてお互いにビックリです。
嬉しい事にこれを機会に親子でレッスンに
来ていただける事になりました。
これからもこの楽器が活躍し沢山の事を運んで
来てくれることと思います。


中国製アコーディオン22016/01/29

先日、新品の中国製のアコーディオンの修理について書きましたが..

再び、新品の中国製アコーディオンです。



ミニ17鍵盤、8ベースの超小型アコーディオンです。
箱にある写真の通り、子供向けの玩具的な物です。
買ったのは私です..
ネットで5000円でした。
プレゼント用にと、気遣いのない価格という事で購入しました。

他にも類似の物でセルロイド外装の物もありましたが
子供が使う物なので安全性を重視して樹脂ケースの物にしました。
安いおもちゃで、ちょっとしたプレゼント用という目的ですが、
やはりこのまま渡すには気が引ける製品です。
安いので粗悪品という訳ではなくて仕様でしょう。



早速、試奏してみると、鍵盤が戻らず音が出たままに..
この時点で玩具としても不良品ですね。
鍵盤の操作は普通ですがベースボタンは子供が使うには
重すぎるバネ設定です。

その他、異様に空気漏れをする事、音にノイズが混ざる、
発音が悪いなど幾つかの問題があり、楽器として使うには無理な物です。
やはりこの金額では限界でしょう。



中を開けてみました。
右手側のリードです。
木枠ではなくて樹脂枠にロウ留めされたリードは真鍮です。
ノイズの原因はリードバルブの変形によるものでした。
かなり酷い箇所もあります。



ベースのリードです。
蛇腹の左手側は接着されていて分離不能です。
なので蛇腹を付けたまま上から撮影しています。

リードは平面状に12個並べてあります。
楽器が小さい為、一般のアコーディオンのように
両手側共にリードを立てて配置すると蛇腹を閉じた時に
ぶつかってしまうのでこのような配置なのでしょう。



ネジ留めされているベース側の樹脂枠を外してみました。
やはりこちらもリードバルブが波打ってます。



ベースリードの枠を外した状態のベース側の本体です。
空気の出入りする穴と間に入っているスポンジのパッキンの穴が
ずれていて有効面積が減っています。
また、スポンジ状のパッキンは硬いので
きちんと空気を止めていないと思います。



ベースリードの拡大です。
リードバルブが短すぎて先端の穴が出ている箇所があります。
リード自体が短くて(穴が長い?)無駄な空気の消費と
発音レスポンスの悪さを招いています。



右手のリードも同じようにリードバルブが短くて穴を覆いきれていない箇所や
リードの先端に隙間がある箇所があります。



蛇腹と本体の合わせ目に入っているパッキンですが、
ゴムというより柔軟性のある樹脂という感じで
硬くてシール性が非常に乏しい感じです。
空気漏れが多いことの一因になっていると思われます。



右手の鍵盤が戻らない箇所のバルブです。
開いたままになっていて音が出ています。
バルブ材は発泡ゴムのような物です。
鍵盤が戻らない原因はシーソーのようになっている軸部分の
加工精度が悪い為のようです。



グリルカバーのネットは医療用のガーゼみたいな感じです。



右手のバルブが隣のバルブと干渉している箇所もありました。
鍵盤の操作をするとバルブ同士がぶつかっています。
他にも、バルブがずれていて僅かに空気漏れしている箇所もありました。



ベース側を分解しました。
シンプルな4ベース、4和音構成です。
和音は1,5度の2音なのでメジャーにもマイナーにも対応しています。



ベースのカバーにあるネットはかなり適当に貼ってあります。
大きな皺があったり、接着剤の付いていない箇所があったり..



空気ボタンのバルブの台座を留めているネジは完全に入っていません。



拡大するとネジの頭と台座に隙間があるのが分かります。



ネジの反対側は本体の内側に貫通していました。
暫く眺めてネジが完全に入っていない理由が分かりました。
ネジが長過ぎて樹脂のリード枠の下部に当ってそれ以上進まないからです。
写真はリード枠を外したところですが、リード枠の留めネジの受けの高さしか
空間はありませんのでネジがリード枠の底に当ってしまいます。
それ以上進まないのでネジが不完全なところで止まっているという訳です。



ベースリードの下にあるパッキンですが、
一旦剥がして位置を合わせてみましたが、
元々ピッチがずれていて完全には一致しませんでした。



硬くてシール性が悪そうなのでこれは剥がして別の方法でシールする事に。
なので剥がしてしまいました。
接着箇所が部分的で適当ですね..

と、色々な問題がある楽器ですが価格を考えると仕方ないところです。
この中国製おもちゃアコーディオンをなんとか使える楽器に直す、
というか改造してプレゼントとして贈りたいと考えています。



中国製アコーディオン2016/01/22

ネットで新品のアコーディオンを購入したという方から修理を承りました。
音がおかしい箇所があるという事でしたので、
新品なら購入したところで修理か交換してもらったらどうですか?と、
お伝えしましたが、販売した店では対応不能という事で修理する事にしました。



届いた楽器は小さな22鍵盤の楽器です。
音符柄のかわいらしいグリルデザインですが中国製の楽器です。



症状を確認した後に中を開けてみました。
右手側のリードですが、リードバルブが反っている箇所が多数です。
30年以上使った楽器のような感じですが新品です。



中国製の低価格なアコーディオンでは常ですが、使っている材料が悪い為に
不具合が出ています。
天然革の部品は厚さや硬さが不安定で様々な不具合が出ています。
バルブを押さえている細い金属のバネも柔らかい銅なのでバネ性が乏しく
すぐに変形してしまいます。
リードの調整もかなり適当です。



本来、全て交換が望ましいのですが、費用をかけたくないという事で
最小限の修理を行う事にしました。
色が薄い皮は当店で交換した部分です。
最小限といっても半数近くの交換になります。
見えていない木枠の内側にも貼ってあるのでかなりの数です。
22鍵盤の場合、右手側のリードの数は、22×2×2=88 にもなります。



ベースリードの方はリードが大きいので皮の悪い影響が出やすく、
かなりの部分の交換をする事になりました。
この楽器の左手リードの数は、12×3×2=72 です。
アコーディオンとしてはかなり小さな物で音色も固定ですが
リードの総数は160です。
アコーディオンは小さくても高価な楽器になるのは仕方が無いところです。

本来であればこの後、全体の調律を行う必要がありますが、
やはり費用をかけられないため、大きくずれている箇所のみ調律を行いました。
実際には殆ど全ての箇所が大きくずれていますが..



補修した結果、取り敢えず演奏可能な状態になりましたが、
細かい不具合は多数残っています。
鍵盤も曲がりがあるので隣合う部分の隙間に粗密があります。
鍵盤がぶつかってしまう為、操作するたびにノイズが出てしまいます。
最小の補修では快適に楽器を楽しむ事は難しいと思います。

中国製の安い楽器はかなりの修復をしないと楽器として使う事ができません。
当店でも、気軽にアコーディオンを始められるように低価格な楽器として
中国製の物を置いていますが、修復にかける時間は1週間以上です。
利益を考えると全く採算が取れませんが、
最初の一歩を踏み出せるように、嫌にならずに続けていただけるように、
その為には必要な事と思っています。



鍵盤ハーモニカの調律2016/01/06

滅多に来ないのですが、鍵盤ハーモニカの調律を承りました。
お客様はアコーディオンの修理で以前にもお世話になっている方です。



当店では、口で吹くリード楽器のアコーディナ(Accordina)を販売しているので
同属楽器の鍵盤ハーモニカの修理、調律も承っております。
今回の楽器はオレンジメタリックカラーの高級な物です。



スズキ楽器のPRO-37という楽器です。
お客様による調律の狂いの指摘箇所は付箋が貼ってありますが
全体の調律を行います。

私もアコーディオンを始めた頃に気軽に持ち出せると思い、
同じスズキ楽器のPROモデルを購入した事があります。



外のケースを外しました。
すると昔の記憶が蘇りました。
黒い内側ボディーに長方形のゴム板が貼ってある箇所があります。
吹き口のすぐ後のあたりです。
私が以前に購入した時すぐに分解し、この謎のゴム膜を確認して
すぐに埋めた記憶があります。

このゴム膜は内部の圧力が一気に上がらないように逃がしている物と思います。
考えつく理由は2つあり、一つは低音のリードではあまりに強く吹くと
反応しなくなるのでそれを防ぐ事と、ゴムの復帰による余韻的な効果を生む為?と
思いますが本当のところは知りません。
最初にこの楽器を鳴らした時に安い楽器と比較してダイレクト感が無いな..と
思いましたが分解してこのゴム膜が息の急激な変化を吸収している事が分かり、
板で埋めてしまいました。
息の急峻な変化を表現の為に与えてもゴムがペコペコと動いて
圧力変化をなだらかにしてしまうのでダイレクト感が損なわれます

この機能は、Proと名の付くモデルより低価格なモデルに付けた方が
良いような気がします。
Proレベルの奏者は自分で息を細かくコントロールできますので、
余計な楽器任せの制御は不要と思うからです。
Proレベルの方はここを埋めて息のダイレクト感を高めてみる事をお勧めします。



内部のケースを分割しました。
鍵盤ハーモニカの大半はリードの後にバルブがありますが、この楽器もそうです。
アコーディナやクラヴィエッタではバルブの方が先にあります。
後、先、というのは空気の流れる順番の意味です。
鍵盤ハーモニカの殆どが何故、後バルブ式なのかは知りません。
アコーディナのように先にバルブがあるとリードはケースの外側に出てきますので、
分解せずに調律ができますし、音もダイレクトに外に出てきます。
アコーディナなどではバルブは息の吹き込みで閉じる方向に動くので
空気漏れの心配もありません。
エンジンのバルブと同じように内圧が上がると閉じる方に働くという事です。

後バルブの場合は息で内圧が上がると開く方に動くので
空気漏れが起きやすくなります。
それを防ぐには鍵盤のバネを強くする必要が出ます。
後バルブでも構造を工夫すれば逆向きに作れそうですが複雑になりそうです。

色々考えると、先バルブの方が良い点が多い気がしますが、
特許とかの関係でマネできないのでしょうか?
それとも、別の何か大きなメリットがあるのかも知れません。



息で吹く楽器ですので、ちょっと吹いただけでリードが結露します。
結露は吐息中の水分が楽器内の冷えた部分に触れる事で起きます。
後バルブの場合は吹き口からすぐにリードとなるので結露もしやすいです。
結露は調律のズレや発音不良の元になりますので、
できれば演奏中でも最小限にしたいところですが..
子供の時に学校でやった時のようなホースを使った演奏をすると
結露はしにくくなりますが、私はホースでの演奏は見た目が悪いので
あまり使って欲しくないアイテムです。
吹く楽器、例えば縦笛やサックスやフルート等々..
ホースで繋がっていて吹く方法でやったら..
想像するとやっぱり格好悪い。

アコーディナの古いオリジナルの物や同じ時代のクラヴィエッタ、
古いHOHNERの鍵盤ハーモニカでは吹き口からケースの外周に沿って空気を流し、
末端でUターンさせてからバルブやリードに届くようになっています。
ケースの底が2重になっているのでそんな事ができますが、
リードに届く前に息が冷却され結露が先に終了するという機構です。
大変凝っていますが最近では省略されている機構です。
結露防止の為にS字の細い金属管を吹き口にしている
鍵盤ハーモニカ的な楽器をアコーディオンメーカーが作っていた事もあります。
ホースじゃなくて金属の管だったらカッコイイですね。



リード周りの清掃とリードの調整を行なった後に調律を行いました。
鍵盤ハーモニカの調律は結構難しいところがありますので、
アコーディオンより単純ですが時間はそれなりに掛かります。