両鍵盤 修復開始 ― 2014/11/05
ビンテージの珍しいアコーディオンの修復を承りました。
少し前にブログでも話題にしました。

斜め上から見ると普通の古いアコーディオンという感じです。

ですが、ベースの方を見ると、鍵盤になっています。
鍵盤の長さが変化しており、鍵盤幅はかなり狭いです。
幅が狭いので少なく見えますが29音あります。

手彫りした MADE IN ITALY という文字が入っています。

これは、依頼主さまから頂いた、この楽器の部品です。
鍵盤やリードバルブはまだ良いのですが、バルブが落ちているのは重症です。
実際、音が出たままになっており空気漏れが激しいので、
現状、この楽器がどのように鳴るのかは全く分かりません。

右手の鍵盤の先端が割れている箇所があります。
ハッキリと分かりませんが、恐らく鍵盤はセルロイド製です。

鍵盤の高さはバラバラで、かなり深くなっています。
鍵盤を離した際の音はカツカツと、かなり大きくなっています。

左側の鍵盤です。
白鍵の一つが剥がれています。
鍵盤下部のセルロイドは割れています。
鍵盤の上の金属はスイッチになっており、押すたびに交互に切り替わるようです。

蛇腹留めはオリジナルでしょうか。
ベルトの金具は緑色の錆が堆積しています。

グリルカバーは真鍮にメッキがしてある物のようです。
メッキは少し傷んでいて、一部に錆があります。
張ってある布は剥がれかけています。

グリルカバーの内側です。
衣類に穴を空ける虫の抜け殻があります。

右手の鍵盤のバルブです。
こちらのバルブは取れている箇所は無いので、落ちているのはベースの
バルブという事です。
バルブ材は皮のみで、フェルトは入っていません。
離鍵時の音が大きいのはこの為でしょう。
皮は古くなっていますので交換時期です。

分割しました。
分割するとバランスが悪くなり、このような状態になります。
通常のアコーディオンよりベースの操作部の傾斜がきつい為です。

ベースのベルトですが、内側に貼ってあるフェルトは虫食いです。
内側にはベルトがもう一つあり、ループになっています。
恐らく、ここに手を入れて操作する物のようです。
鍵盤操作を安定させる為でしょうか。

右手のリードです。
思ったより沢山のリードが入っていました。
MMMLでMMMとMMMLの交互切り替えスイッチが付いています。

古い楽器ですので当然と言えば当然ですが、リードバルブは全滅です。
それでも見た目に酷く古くないので過去に一度、交換しているかも知れません。

ベースのリードも思った以上に数があります。
6列に分かれていて、一番高音のリードは直付けです。

右手側と同様、リードバルブは全交換が必要です。
リードを固定しているロウもダメになっています。

ベースリードの木枠を外すと、本体と木枠の隙間を埋める為の厚紙が挟んであり、
CHESTERFIELD という表示があります。
イギリスの地名のようですが、組み立て時に適当に使った紙に
偶然書かれていただけでしょうか?
途中で修復された時の場所がイギリスだったのかも知れません。
アコーディオン製造で有名な CASTELFIDARDO にちょっと似ているのは偶然でしょうか?

ベースリードですが、リードを固定するロウが劣化してるのを
上から修復した跡があります。
しかし、上塗りしたロウも既にダメになっています。
こうなるとリードを全て取り外した後に古いロウを全て取り去り、
再度、ロウで取り付けるという時間の掛かる作業が必要になります。
ビンテージのアコーディオンの修復には時間と費用が多く掛かります。

ベースバルブの修復の為、ベースリードを取り外しました。
直付けのリードは取れません。
偶にこういう構造の楽器がありますが、色々と大変になるので、
できればこの構造は止めて欲しいところです。
作る時や、演奏時にも何もメリットが無いと思いますし..

通常、一番左の穴のようにバルブで塞がれている筈ですが、
バルブの一部が取れてしまっているので、金属の部品が見えてます。
当然、この部分から空気が盛大に漏れますので、音は出たままになります。

ベースメカニックです。
通常のベースボタンの物よりシンプルに見えますが、未知のシステムです。

バルブを見てみると、外れて無い箇所や、位置がずれている箇所が分かります。

鍵盤の左右には開口部があり、ネジ留めされています。
フリーベースの楽器ではこのような開口部がよくありますが、
この楽器もフリーベースの一種ですので同じという事でしょうか。

開口部の透かしに貼ってある金色の布は剥がれていて、もう使えそうにありません。

メカニックの分解を始めました。
鍵盤の下部にある部品を外すと鍵盤の高さはバラバラになりました。

鍵盤を外す為、軸を抜きます。
これが一般的な楽器と比べて大変細く、材料も真鍮の様な合金で、
抜くのが大変恐ろしいです。
古いので固着していますし、途中で切れたら万事休す、
鍵盤を戻す事も分解する事もできなくなります。

なんとか鍵盤を分解できました。
外すと結構な数である事を実感します。
これでベースのバルブにアクセスできます。
外れたり、ずれている箇所が丸見えになりました。

空気ボタンのバルブです。
位置がずれていて穴がちょっと見えています。
これも空気漏れの一因です。
今は他の漏れが大きいので目立ちませんが、他を修理すると
こういう部分の不具合が目立ってきます。

二列に分かれているバルブの片側を全て外しました。
低音部と高音部でバルブが分かれています。
鍵盤の音域の途中で分岐点があり、
ある所から低音が出る様になっているようです。
つまり、鍵盤の下部はベース用、上部はメロディー、和音用という事みたいです。

バルブと金属の部品の接着がダメになっていますが、
過去に、その症状は出ていたようで、上からロウで補強してある箇所があります。

メカニックを分解せずにロウで修復したのか、修復が雑で、
この箇所はロウがバルブの横に落ちています。

元々の接着は完全にダメになっており、
上に貼った皮一枚で繋がっている感じです。

バルブを取り外しました。
手前の2つは皮のある面です。

古い皮を取り外しました。
これから新しい皮に貼り直して、バルブを元の位置に戻して行きます。
今日はここまで。
両鍵盤 修復1 ― 2014/11/06
ベース側も鍵盤になっている古いアコーディオンの修復をしています。

昨日、取り外して古い皮を取り去ったバルブに新しい皮を貼り、
元の位置へ戻しました。
これで半分終了ですが、この後、二階建てのようになっている機構を取り付け、
残りのバルブも付け直します。

二階建て部分のメカニックからバルブを取り外しました。

そして、古い皮を剥ぎ取ります。

バルブを外したところは古い接着剤が残っていますので、
これを綺麗に取り除きます。
バルブの方も同じ様に綺麗にします。
一つ一つは簡単な作業ですが、数が多いのでとても時間を使います。

バルブを押さえつけている金属のバネですが、場所によって形状がバラバラです。
今までに、その場しのぎの修理を受けてきたという事でしょう。
両鍵盤 修復2 ― 2014/11/07
左手側も鍵盤になっている古いアコーディオンの修復をしています。
前回までに、左手側のバルブの半分を取り付けました。

左手鍵盤部の残りのバルブを取り付けて行きます。
空気ボタンのバルブもこの並びにあります。

全てのバルブの取り付けが終了しました。
全部で29個です。
一般的なアコーディオンでは24個なので、それより少し多いです。
メカニック部分は未知のものですが、通常のボタンのベースよりシンプルです。
シンプルな物ほど調整が難しい時もあるので油断はできませんが..

左手鍵盤の周囲にある大きな部品です。
装飾のセルロイドが割れて半分ありません。

円弧状の金属パーツを外しました。
セルロイドは接着剤が劣化しているので簡単に取れました。

古い接着剤を取り去り、綺麗に磨きました。

裏側には皮が細く貼ってあり、鍵盤の端が当たる際のクッションになっていました。

皮はバブルと同様、古くなっているので交換しました。

金属部品に合わせて白い樹脂を加工して取り付けました。
真っ白なのでちょっと浮きますが、欠けているより良いでしょう。

鍵盤の部品です。
一部、部品が壊れていますので修理します。

壊れているのが接着剤の劣化によるものなので、壊れていない鍵盤も怪しいです。
木のパーツの上に乗っている樹脂の鍵盤表面部は持ち上げると剥がれそうです。
全ての鍵盤に補修が必要と思います。
ふいご祭り ― 2014/11/08
通勤途中でこんな張り紙を見ました。

monte accordionの最寄駅は金山ですが、神社なんてあったかな?
「ふいご」は、ご存知の通り、空気を送って火を大きくする道具ですが、
アコーディオンの蛇腹は、イタリア語のmantice、英語のbellows、共に、
ふいごの事を指す言葉でもあります。

と言う訳で、ちょっと気になったので午前中に店を抜け出して覗きに行ってみました。
神社の手前の歩道にお祭りの、のぼりが出ています。

角を曲がると神社ですが、露店が出ていてお祭りらしくなっています。
ですが、何故「サメつり」?

駅からそんなに離れていませんが、ちゃんとした境内のある立派な神社です。
今まで、全く知りませんでした。

厄払い?みたいな感じの神事が行われているようです。

中を見ると、巫女さんが舞っていました。

境内には樹齢700年という立派なイチョウの木がありました。

刀の製作順が展示してあり、恐らく、この神社で行ったと思われる
刀の鍛造作業をビデオで流していました。

この近辺では鍛冶屋が多くあったとの事で、地名の金山も
金属という意味からきているようです。
私は勝手にGOLDの方だと思っていましたが..
鍛冶屋が火を強める為に使う、ふいごのお祭りという事です。
そう言えば、monte accordionの周辺や以前勤めていた会社(熱田)から金山駅への
道中は、今も金属関係の町工場が沢山あります。

夕方から行われる和太鼓演奏の準備がしてありました。

おでんの振る舞いや、抽選会を行っています。
参加券は町内だけに配られているようです。
残念ながらmonte accordionは熱田区なので金山ではありません。

金属関係の会社からの寄付が多数あります。

お祭りの案内表示と、ふいご繋がりで、金山神社の存在や、
金山の由来を知る事ができました。
両鍵盤 修復3 ― 2014/11/09
両手側ともに鍵盤になっている古いアコーディオンの修復をしています。
前回まではベース側のバルブ材を全て交換し、バルブを元の位置に戻し、
左鍵盤周辺の部品を戻しました。

鍵盤からの動きをバルブの開閉へ伝える箇所です。
鍵盤の数と同じ29個箇所あります。
曲がっている所もあります。(画像の右から3番目)
一つずつ、曲がりの修正や隙間を調整します。

これは同じく、鍵盤の動きをバルブに伝える機構ですが、
この楽器はメカニックが2階建てになっています。
一段目が終了し、2段目でも同じ作業をします。

メカニックの調整を終えて鍵盤を組み込む前の段階になりました。
見た目にも、だいぶ戻ってきた感じです。

分解する時には気づきませんでしたが、鍵盤を受ける大きな部品に
漢字の「上」らしき鉛筆書きを発見。

反対側を見ると「下」がありました。
以前に日本で分解された事があるという事でしょうか?

鍵盤が入る部分の脇ですが、黒いセルロイドが剥がれて浮いています。
修理しないと鍵盤と干渉しそうです。

一つ目の鍵盤を入れました。
うまくバルブの動作ができているようです。

鍵盤の後端は少し飛び出ていて、金属の部品に引っ掛かり、
鍵盤の高さを保っていますが、どういう訳か、場所によって引っ掛かりがギリギリです。
外れると鍵盤が浮きますので確実にしたいところです。

仕方がないので、鍵盤の後端を延長しました。
何箇所か、この処置を必要としました。

半分終了。

全ての鍵盤が入りました。
動作も問題ないので取り敢えず、ベースメカニックの修理は終わりです。
リード周辺の未整備や空気漏れの関係で、修理の成果を試せないのが残念。

ベースの蓋部分の布が傷んでいます。

左鍵盤、両脇の窓の布も剥がれています。

布を新しい物に交換しました。
古い布地には黒い水玉模様が..

窓の部分張替え完了です。

ベース鍵盤部、修復完了!
後は通常の古いアコーディオンの修復と同じ工程ですが、
リードの再接着、リードバルブの交換、右手バルブの交換、調律など、
まだかなりの時間が掛かります。
他の短い期間の作業が停滞しますので、この楽器はこれで一時中断です。
合間を見て修復を進めて行く予定です。
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