蛇腹交換 ― 2023/07/18
80年以上前のイタリアDallapeのアコーディオンの蛇腹を交換しました。
以前に完全な修復をさせていただいた楽器ですが、蛇腹はオリジナルを残しました。
見た目が悪くなった事と、空気漏れがあるので、蛇腹を新調する事になりました。
イタリアのメーカーに注文していた蛇腹が届きました。(手前の物)
奥にあるのはオリジナルの物です。
蛇腹の殆どは、紙、革、布でできています。
角の部分は金属が使われています。
また、山折りになっている所には塩ビのテープが貼ってあります。
とても古い楽器では塩ビではなく、布テープです。
経年で外観が悪くなるのは、山折りになっている部分のテープが
擦れる事でボロボロになる為です。
ですが、これは外観の問題だけで、空気漏れの原因にはなりません。
50年を超えた楽器は蛇腹の谷折りの角部分にある、
薄い革製の部品が劣化して、空気漏れを生じます。
この楽器では黒くなっているところですが、
ここは蛇腹の開閉で伸縮するので、とても薄い革が張られています。
その部分を広げてみても、何も問題は無さそうに見えます。
内側から光を当てると、革に穴が空いている事が分かります。
小さな穴なので空気漏れも僅かですが、この部品は4隅にあるので
蛇腹の谷の数の4倍あります。
一つずつからは少しの空気漏れですが、全て合わせると、それなりの漏れになります。
全て張り替えれば改善しますが、その頃には
他の部分も悪くなってきているので、蛇腹ごと交換する方がメリットが多いです。
蛇腹の両面には木枠があり、楽器と結合しますが、
木枠は新しく作る事が困難なので、古い蛇腹から木枠を外す必要があります。
これは蛇腹とガッチリと接着されているので、外すのが大変です。
この楽器は古い物なので、ニカワで接着されています。
オリジナルの木枠に新しい蛇腹を取り付けました。
新しい蛇腹には寸法と私の名前が手書きされていますね。
製造時に誰の物か分かるようにしているのでしょう。
でも、何でmonte accordionじゃなくて、kunioなのか?
古い蛇腹と並べてみました。
楽器が新しかった時の蛇腹は本来、真っ白な物だったと思いますが、
経年で楽器本体が変色しているので、蛇腹だけ真っ白に作ると目立ってしまいます。
なので、少しアイボリーにして楽器の色と馴染むようにしました。
見た目も違和感なく交換できました。
空気漏れは劇的に改善しました。
勿論、それ以前に楽器全体の完全な修復作業を行っているからです。
古い楽器の空気漏れは、一部だけ直してもスッキリ直りません。
やるなら全部です。
これで50年は問題なく使って行けるでしょう。
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